質問主意書

第187回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八五号

日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案及びJESCOによるPCB廃棄物処理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十一月十八日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案及びJESCOによるPCB廃棄物処理に関する質問主意書

 東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」という。)に伴う除染で発生した福島県内の汚染土壌及び汚染廃棄物等を政府の責任の下で管理する中間貯蔵施設の整備と安全確保を行うため、この事業を日本環境安全事業株式会社(以下「JESCO」という。)に委託するための日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案(以下「本法律案」という。)が本年十月三日、国会に提出された。
 しかし、本来であれば、放射性物質によって汚染された汚染土壌及び汚染廃棄物等の処理について、国の責任の下でその管理から最終処分に至るまでの全工程における施策に関する専管的な法律を新たに整備するべきところ、放射性物質に関する技術、知識及び経験を全く有しないJESCOに事業を丸投げ的に委託するための法律改正は、余りにも安直すぎると言わざるを得ない。しかも、JESCOは、その設立の当初から、環境省の天下りのための機関ではないかとの疑問が持たれてきた会社であり、かつ、その専管的な事業目的であるポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)廃棄物の処理に係る事業等に関して、JESCOが所管する全国五箇所の事業所において、開業当初から様々な事故等が発生している極めてずさんな管理運営が行われてきた会社であることを鑑みるならば、本法律案は看過し得ない問題点を有すると言わざるを得ない。
 そこで、以下質問する。

一 JESCOが所管している全国のPCB廃棄物処理事業所における設備の運転管理上の不具合や事故及び作業者の労働安全衛生上のトラブル並びにそれらへの対策に関する情報を全て明らかにされたい。

二 JESCOの職員数(正規雇用・非正規雇用含む)、専門職(正規雇用・非正規雇用含む)の有無、出身履歴(学歴及び職歴)、雇用形態について明らかにされたい。また、JESCOの役員を含め、国及び地方自治体の行政官庁からの天下り、及び派遣者の実態を明らかにされたい。

三 JESCOに対する事業監査及び外部監査の実施状況とその結果について、明らかにされたい。

四 JESCOの過去五年間の予算及び決算の執行状況並びに財務監査及び会計検査院による検査執行状況とその結果について、明らかにされたい。

五 JESCOが行っているPCB廃棄物処理事業は、平成十三年五月に採択された「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」に基づいて、国内にストックされている全てのPCB廃棄物の処理を当初、平成二十八年三月までに完了する予定であったが、今年六月の環境大臣告示によって、平成三十七年度まで延長されることが公表された。その告示の「1.変更の背景」の中に「処理開始後に明らかとなった課題への対応等により、当初予定していた平成二十八年三月までの事業の完了が困難な状況。」とあるがこの「課題」とは何か、具体的に明らかにされたい。

六 中間貯蔵施設の建設について、検討を始めた官庁及び担当部局、また、その時期を明らかにされたい。国は平成二十三年十月に中間貯蔵施設の基本的な考え方(ロードマップ)を策定し公表を行っているが、県内関係市町村等に対する説明の経過及びその内容について明らかにされたい。

七 政府が中間貯蔵施設の建設及び運営等について、JESCOに委託することを検討し始めた時期を示されたい。また、どのような検討を行ってきたのか、その経緯について明らかにされたい。

八 JESCOが行っているPCB廃棄物の処理事業については、現行の日本環境安全事業株式会社法(以下「JESCO法」という。)の第七条及び第八条において、JESCOによる事業基本計画の策定及び環境大臣の認可に関する規定が設けられているが、本法律案には、中間貯蔵事業に関する基本計画の策定及び環境大臣の認可に関する規定が設けられていない。その理由を明らかにされたい。

九 JESCO法にも本法律案にも情報公開及び外部監査に関する規定が設けられていないが、その理由を明らかにされたい。

十 JESCOが実施しているPCB廃棄物処理事業については、平成十三年七月に制定された「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」の規定を受けて現行の事業が実施されているが、今般、新たに付加される中間貯蔵事業については、いかなる法律の規定を受けて実施されることになるのか、明確にされたい。冒頭に述べたように、本来であれば、中間貯蔵から最終処分に至る全工程に関する施策等を定めた法律の制定が必要であると考えるが、これまで検討を行ったことはないのか。検討を行ったことがなければ、その理由を明らかにされたい。

十一 改正法案第三条第二項で、国は、「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする」ことが規定されているが、なぜ三十年以内なのかその根拠及び実現の見通し並びに具体的な可能性について明らかにされたい。また、この措置が達成されない場合の責任の所在と罰則の適用について検討を行っているのか、明らかにされたい。

十二 改正法案第九条第一項で、「政府は、この法律の施行後七年を経過した場合において、新法の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされているが、法律の施行後三年を経過した後において、法律の見直しを行うことを明記し、中間貯蔵事業の進捗状況並びに最終処分の確保の見通しの進捗状況について、政府は毎年国会に報告するとともに公表及び関係者に対する説明を行うことを義務付けるべきではないかと思うが、いかがか。

十三 中間貯蔵施設(焼却処理施設を含む。)での処理及び、中間貯蔵施設への搬入搬出に伴う運搬等の過程で万が一に事故(火災・爆発事故)が発生した場合の対処等の方策を定めた防災計画及び近隣住民への安全対策の策定計画はあるのか。あるとしたらどのような計画を立てているのか明らかにされたい。

十四 本法律案は、暫定法である「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)に基づき定義された、一キログラム当たり八千ベクレル以上の放射性物質の中間貯蔵及び最終処分について、特殊法人に丸投げ的に委託するものであるが、元来、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下「原子炉等規正法」という。)では、百ベクレル以上をもって、放射性物質として取り扱うように規定されてきている。
 放射性物質汚染対処特措法は、東日本大震災の直後の暫定法であったため、八千ベクレル以下ならば、市町村の管理型の処分場への埋立てを可としてきたが、その場合でも今後の本格的な法整備を考え、その埋設箇所が分かる手立てを取ってきた(つまり埋設自体暫定的な措置としてきた)。
 ところが、放射性物質汚染対処特措法という暫定法での規定を基礎にして、今後三十年も中間貯蔵や最終処分するとする本法律案は、法の整合性から問題がないのか、政府の見解を明らかにされたい。

十五 廃棄物の処理に当たって、放射性物質汚染対処特措法と原子炉等規正法による八千ベクレルと百ベクレルの規定は、ダブルスタンダードとして、実際に運用や規制に関わる地方自治体において、すでに大きな混乱をもたらしている。廃棄物や汚染土壌に関する取扱いを規制する官庁はどこになるのか。また、実際の規制の上で、自治体の責任や関与はどのようになっているか、示されたい。
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律上は、一般廃棄物ならば市町村、産業廃棄物ならば都道府県が管理監督する仕組みになっているが、廃棄物には、一般廃棄物と産業廃棄物が混在すると考えられる。前記六にも関連するが、本法律案作成時のみならず原案作成後、提出に当たって、地方自治体との協議を行ったか示されたい。行っていたときには、いつどこでどの自治体と行ったかを具体的に示されたい。

十六 前記十三に関連して、本法律案による特殊法人が、汚染土壌及び、汚染廃棄物の取扱いに際し、同法人から委託を受けた業者も含め、周辺環境、人命及び健康に影響する事故並びに取扱いの不具合を発生させた場合の責任と罰則について、明らかにされたい。
 また、そもそも現行の環境に関する法制度の中では、基本的に放射性物質及びこれによって汚染された廃棄物は、各種規制から除外され、法律上取り扱うことができない。昨年ごく一部の改定が行われ始めたが、その改定がどのように進んでいるのか、示されたい。
 現行法の仕組みは、「原発安全神話」の下に、放射性物質を取り扱う原子力発電施設等の事業所から環境中に放射性物質が放出されることがないという前提で作られた法律であった。しかし、福島第一原発事故により環境中に放射性物質が大量放出された。今回は中間貯蔵と最終処分に関する法律案であるが、周辺環境、人命及び健康への影響に関する基本的な法律案は、いつ提出するのか、時期を示されたい。それらの整備を行わず、本法律案を提出する理由を明らかにされたい。

  右質問する。