質問主意書

第187回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五八号

「トモダチ作戦」巨額賠償訴訟に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十一月五日

浜田 和幸   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   「トモダチ作戦」巨額賠償訴訟に関する質問主意書

 東日本大震災の救援活動「トモダチ作戦」に従事した元米軍兵士らが、東京電力株式会社(以下「東電」という。)に対して、福島第一原子力発電所の事故で被曝したとして損害賠償などを求めている訴訟(以下「本件訴訟」という。)で、米国カリフォルニア州サンディエゴの連邦地裁が同州での訴訟を認める判断を下した、と現地メディアが十月三十日付けで報道している。東電側は司法権の問題を理由に米国での集団訴訟ではなく日本での審理を求めていたが、連邦地裁はこれを退けた。同訴訟は、被災地の支援活動に参加した人たちが中心となって当初は二十六人の原告団で構成されたが、提訴の時点で約八十人、その後約二百人まで膨れ上がっており、弁護団は「千四百人にまで拡大する」と意気込んでいるという。損害賠償の金額は未定とされ、それとは別に健康診断や治療を行うための十億ドル以上の基金創設などを求めている。これに関して、以下質問する。

一 原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、九月三十日時点で東電株約五十四パーセントを保有する大株主であり、政府は公的資金を注入した当事者である。過去に米国の裁判所で顧客らに訴えられた昭和電工株式会社やトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)は、いずれも十億ドル以上の和解金に応じる形で訴訟を終結させており、訴訟が受理された時点で審理は不利に働く可能性が高い。また、本件訴訟は賠償金額が未定の上に基金創設だけで十億ドルを請求されており、仮に和解勧告された場合でも、莫大な国富の喪失が懸念される。個別訴訟とはいえ国庫に関わる重要な訴訟であり、政府は国民への説明責任がある。政府は本件訴訟のために、どのような対策を考えているのか示されたい。

二 トヨタのリコール訴訟においては、韓国系米国人が集団訴訟を起こし、ロビー活動を活発に行った。今回もそうした反日勢力が、健康被害と原発事故の因果関係を科学的に立証するよりも、日本の国際的な信用の毀損や、反日世論工作を扇動する目的で今後活動する可能性がある。日本としては、これまで以上に米国国内での高度な世論対策や、健康被害に関する情報提供を国内外に積極的に行う努力が必要と思われるが、本件訴訟受理を受けて新たな取組を考えているのか、具体的に示されたい。

三 本年三月十一日の参議院予算委員会で、本件訴訟の対応について質問した際、岸田外務大臣は事故当初から情報発信を積極的に行っており、今後も広報活動に取り組む旨の答弁をされた。しかし、四月に入りオバマ大統領が国賓で来日した際、本件訴訟について話し合われた記録はなく、今回の連邦地裁による訴訟受理となった。個別訴訟とはいえ、米国が日本の「トモダチ」として救援してくれた善意の作戦が、結果的に両国の外交問題に発展する可能性が生じており、政府としては大統領来日に当たって何らかの対策をする余地があったと思われるが、外交交渉の議題として取り上げた記録はあるのか。なければ、将来の外交問題となり得る事案をなぜ事前に摘み取る努力を怠ったのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。