質問主意書

第187回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三一号

我が国の災害外交に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十月二十日

浜田 和幸   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   我が国の災害外交に関する質問主意書

 ある国で大規模な自然災害が発生した場合、他国政府による支援が欠かせない。様々な国の政府が機会あるごとに人道目的と国家戦略を関連付けて、支援の規模、迅速さを決定し、人道支援を行っている。
 我が国の国際緊急援助には、①国際緊急援助隊の派遣、②緊急援助物資の供与、③緊急無償資金協力があり、災害規模や被災国等からの要請内容に基づいて、いずれか、又は複数を組み合わせた人道支援を行っている。国際緊急援助隊の派遣や緊急援助物資の供与の対象は、自然災害(洪水、サイクロン、台風、地震、火山噴火、感染症等)及び人為的災害(石油・ガスタンクの爆発、火事等)であり、緊急無償資金援助については、自然災害や人為的災害に加え、紛争起因災害も対象としている。
 大規模な自然災害への国際的な人道支援で、支援を機に関係が改善されたものとしてギリシャとトルコの事例がある。一九九九年八月、トルコでイズミット地震が発生し、一万七千人以上が死亡したが、隣国であるギリシャは速やかに救援隊や大量の支援物資を送り、アテネでは市民らが献血運動に取り組んだ。トルコでの地震の約一か月後、今度はアテネ一帯で地震が発生したが、この際、トルコの救援隊が速やかに援助活動を行った。
 ギリシャは十五世紀から四百年近くオスマン帝国の支配下にあった。一八三〇年にギリシャがオスマン帝国から独立するが、その後も両国は戦争を繰り返した。しかし、この地震災害への互いの援助・支援を機に、二〇〇〇年にはギリシャの外相が約四十年ぶりにトルコを公式訪問し、両国の関係改善が進んだ。二〇一〇年のギリシャの財政危機においては、トルコの首相がアテネに大規模な経済使節団を率いて支援を表明した。
 また、二〇一一年の東日本大震災における米軍の「トモダチ作戦」は我が国国民の記憶に新しいものであり、このような災害外交は緊張関係にある国際関係を緩和するためのソフトパワー外交の有力な手段といえる。日本政府や救援活動を受けた被災地住民は米国政府に深く感謝していることは疑いのない事実である。
 このような観点から、以下質問する。

一 過去十年間の我が国の国際緊急援助の実例について、前文の①から③の内容を具体的に示されたい。

二 過去十年間の我が国の国際的自然災害に対する人道支援の実例について、具体的に示されたい。

三 過去三十年間に中国や韓国で発生した地震災害について、政府や政府の支援を受けたNGOが国際緊急援助隊の派遣や緊急援助物資の供与を行った事例はあるか、具体的に示されたい。

四 二〇一一年五月の第四回日中韓サミットの成果として発出された三つの付属文書のうち「防災協力」(以下「本防災協力」という。)で「三か国のうちいずれかの国で発生したものであっても、その災害は、自国で発生した災害に等しい心痛を伴うとの認識を共有すると共に、災害予防、災害対処能力の強化や災害発生時の支援体制の強化に向けて最大限協力するとの意思」が確認されているが、現在、本防災協力はどのような形で具体化されているのか、日本政府の取組を示されたい。

五 本防災協力で確認された「災害の被害を最小限にするため、我々は情報交換を通じて災害リスクの軽減を強化する」を達成するために、常設の連絡会議を設置し、今後の災害予防や災害救援において活用すべきだと思うが、政府の取組を示されたい。

六 中国と朝鮮民主主義人民共和国の国境にある白頭山で噴火の予兆とされる群発地震が頻繁に起こっている事実が研究者などにより報告されているが、政府は関係国と協議して噴火予知及び災害対策の連絡会議などを設置すべきではないか、またこのような自然災害にこそ本防災協力が活用されるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

七 トルコとギリシャの事例を引くまでもなく、災害外交により、政府は通常とは異なる手段を用いて近隣国との友好関係を深めることができる。いわゆるソフトパワー外交の一つである。このような自然災害に関わるソフトパワー外交を積極的に進めるべきだと思われるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。