質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一六一号

内閣参質一八六第一六一号
  平成二十六年六月二十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員大久保勉君提出日本芸術院及び公益社団法人日展に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大久保勉君提出日本芸術院及び公益社団法人日展に関する質問に対する答弁書

一について

 公益社団法人日展(以下「日展」という。)が主催し、我が国を代表する美術展である日本美術展覧会の審査は適正かつ公正に行われる必要があり、平成二十五年十二月五日付けの公益社団法人日展第三者委員会報告書(以下「第一次報告書」という。)において、平成二十一年の篆刻部門の審査において、「会派別入選者数を前年度通りにするとの事前配分があったと評価しうる」とされていることについては、遺憾であると認識している。

二について

 第一次報告書においては、日本美術展覧会の第五科以外の科における審査に関する把握が十分ではないと認められたことから、日展に対し、第一科から第四科までについても速やかに更なる調査を行うよう、調査すべき内容等を示して対応を求めたところであり、平成二十六年三月二十四日に日展第二次第三者委員会報告書(以下「第二次報告書」という。)が取りまとめられ、内閣府及び文部科学省にもその写しが提出された。

三について

 衆議院議員長妻昭君提出公益社団法人日展における不正審査の疑い等に関する質問に対する答弁書(平成二十六年三月十四日内閣衆質一八六第六八号)七についてで述べたとおり、公益社団法人移行前の社団法人日展の平成四年の定款変更前においては、第二十一条第三項において、「顧問に委嘱された会員は、その資格を失う」こととされるとともに、同条第四項において、「顧問は、この法人の運営に関し、理事会の諮問に答える」こととされていたが、同年の定款変更後は、同条第三項の規定が削除され、同条第四項が同条第三項とされ、新たに、同条第四項として、「この法人の会員である顧問は、理事会に出席し、意見を述べることができる」と規定されたほか、参事等の委嘱者を会長から理事長に変更するなどの改正が行われたと承知している。

四について

 お尋ねの日展(社団法人日展を含む。)の顧問又は常務理事を務めた各個人が日本芸術院会員を務めたか否かについては、特定の個人の経歴に関する事項であり、当該個人の評価につながる可能性があるためお答えすることは差し控えたいが、日展からは、当該顧問又は常務理事を務めた者であって日本芸術院会員を務めていない者は存在すると聞いている。

五について

 お尋ねの日展(社団法人日展を含む。)の理事を務めた各個人が日本芸術院賞を受賞したか否かについては、特定の個人の経歴に関する事項であり、当該個人の評価につながる可能性があるためお答えすることは差し控えたいが、日展からは、当該理事を務めた者であって日本芸術院賞を受賞していない者は存在すると聞いている。

六について

 日本美術展覧会における審査は、日本芸術院会員であるか否かにかかわらず日展の理事長から委嘱された審査員により行われているものと承知しており、これらの審査員による審査は適正かつ公正に行われる必要があると考えている。

七の1について

 第一次報告書及び第二次報告書において日本美術展覧会の審査に関連した金品の授受に関する記載があるほかは、現時点において、お尋ねの金品の授受について具体的に承知しているものはない。

七の2及び3について

 お尋ねの金品の授受等がどのような法令に違反するかについては、個別の事案ごとに判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難であるが、例えば、一般職の非常勤の国家公務員である日本芸術院会員が金品を受領した場合に、当該行為がその官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為に該当すれば、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十九条に違反することとなり、懲戒処分を受けることが考えられる。

七の4について

 日本芸術院会員に対して御指摘のような個別の私的な売買に関する情報の開示を義務付けることは困難と考える。

七の5について

 犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断すべき事柄であるが、一般論として言えば、お尋ねの日本芸術院会員は一般職の非常勤の国家公務員であるところ、公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十七条第一項前段の収賄罪が成立し得る。また、公務員に対し、同条に規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者については、同法第百九十八条の贈賄罪が成立し得る。

八の1について

 日本芸術院会員による日展の顧問又は常務理事への就任の自粛については、日本芸術院会員により自主的に判断されるべきものと考える。

八の2について

 日本芸術院は、芸術上の功績顕著な芸術家を優遇するための栄誉機関であり、現時点で、日本芸術院令(昭和二十四年政令第二百八十一号)を改正して日本芸術院会員に定年制を設けることは考えていない。また、お尋ねの「自粛という形で事実上の定年制を設ける」ことについては、日本芸術院会員により自主的に判断されるべきものと考える。

八の3について

 文化庁においては、日本芸術院及び日展に係る課題に限らず、文化行政に関する国民からの意見等をメール等で受け付けているところである。また、日本芸術院は、同庁における御指摘の「職員の職務に係る倫理の保持のための通報制度」の対象に含まれているが、日本芸術院会員は、国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)の適用を受けない非常勤職員である。

九について

 平成二十五年度日本芸術院賞の第一部の受賞者は、日本芸術院の授賞候補者選考委員会において選考されておらず、決定されていない。