質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五四号

内閣参質一八六第一五四号
  平成二十六年六月二十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員櫻井充君提出我が国の年金に係る財政検証に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出我が国の年金に係る財政検証に関する質問に対する答弁書

一について

 平成二十一年財政検証においては、人口及び経済の前提としては、複数のケースを設定しているが、基本ケースにおける出生率、平均寿命、実質賃金上昇率及び実質的な運用利回り(運用利回りから賃金上昇率を控除したものをいう。以下同じ。)の①前提及び②実績値についてはそれぞれ、出生率は、平成二十一年が①一・二二、②一・三七、平成二十二年が①一・二二、②一・三九、平成二十三年が①一・二二、②一・三九、平成二十四年が①一・二一、②一・四一、平成二十五年が①一・二一、②一・四三(概数)、男性の平均寿命は、平成二十一年が①七十九・三五年、②七十九・五九年、平成二十二年が①七十九・五一年、②七十九・五五年、平成二十三年が①七十九・六六年、②七十九・四四年、平成二十四年が①七十九・八○年、②七十九・九四年であり、女性の平均寿命は、平成二十一年が①八十六・二五年、②八十六・四四年、平成二十二年が①八十六・四一年、②八十六・三○年、平成二十三年が①八十六・五五年、②八十五・九○年、平成二十四年が①八十六・六九年、②八十六・四一年、実質賃金上昇率は、平成二十一年度が①○・五パーセント、②マイナス一・六パーセント、平成二十二年度が①三・二パーセント、②○・三パーセント、平成二十三年度が①一・三パーセント、②○・二パーセント、平成二十四年度が①一・三パーセント、②マイナス○・三パーセント、実質的な運用利回りは、平成二十一年度が①一・四パーセント、②十二・一パーセント、平成二十二年度が①マイナス一・六パーセント、②マイナス○・九パーセント、平成二十三年度が①マイナス○・七パーセント、②二・四パーセント、平成二十四年度が①マイナス○・八パーセント、②九・三パーセントである。なお、財政検証の経済前提として、経済成長率を設定する必要はない。
 また、一般的に、将来の人口や経済状況を見通すことには不確実性を伴うため、平成二十一年財政検証後、低下傾向にあった出生率が反転し上昇したり、デフレ経済が当時の想定より長引くなどの事情により、試算の前提と実績値の間に違いが生じたものと考えており、財政検証においては、複数の前提を設定するとともに、少なくとも五年ごとに財政検証を行い、直近までの実績を織り込んだ将来見通しを作成している。

二について

 平成二十六年財政検証における実質運用利回りを含む経済前提は、社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という。)における検討結果に基づいて、ケースAからケースHまでの八通り設定しており、専門委員会では、実質運用利回りについて、実質長期金利に内外の株式等による分散投資による効果を上積みして設定することとされた。
 また、平成二十六年財政検証においては、平成三十六年度以降の長期的な実質運用利回りの設定における実質長期金利に関して、ケースAからケースFまででは、過去の経済指標の実績や全要素生産性上昇率の見通し等に基づき、経済モデルを用いて将来の利潤率を推計し、過去の実質長期金利の平均値に、過去の利潤率の平均値と推計した将来の利潤率の平均値との比率を乗じることにより、平均的な実質長期金利の設定を行っている。また、ケースG及びケースHでは、平均的な実質長期金利を、金融市場における長期債のイールドカーブに基づいて設定している。このため、長期金利、短期金利及び株価指数については、それらがどう推移するか設定しているものではない。

三について

 財政検証を行うに当たっては、長期にわたって経済状況を見通すことには不確実性を伴うため、複数の経済前提を設定して試算し、経済状況に応じて年金の給付水準等がどのようになるかをお示しすることで、年金制度の持続可能性等について様々な議論の材料を提供することが重要であると考えている。このため、平成二十六年財政検証においては、経済前提について、御指摘の「慎重な数値」の場合を含めた経済成長が高い場合から低い場合まで八通り設定して試算を行った。

四について

 一般的に、高齢期の生活は現役時代の延長線上にあり、稼得活動を引退した後の生活への円滑な移行を図ることが年金制度の役割であることに鑑みれば、お尋ねの「現在の若年層にとって将来生活するに十分な水準」について、一概にお答えすることは困難であるが、年金の給付水準を考える一つの目安として、国民年金法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第百四号)附則第二条第一項において、満額の老齢基礎年金二人分の額と男子の平均的な賃金で四十年間就業した場合の老齢厚生年金の額との合計額の男子平均手取り賃金に対する比率が五十パーセントを上回ることとなるような給付水準を将来にわたり確保する旨が規定されているところである。
 また、お尋ねの「生活保護者がどれだけ増減する」かについては、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)による保護は、原則として本人等の申請に基づき開始することとされており、また、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われるものであるため、一概にお答えすることは困難である。

五について

 お尋ねについては、公的年金各制度における給付費等の支出額の違いや、保険料率の違いなどにより、結果として積立比率に差が生じているものと考えているが、公的年金各制度の積立比率の差は様々な要因により生じ得るものであり、一概にお答えすることは困難である。