質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一七号

内閣参質一八六第一一七号
  平成二十六年六月十三日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員山本太郎君提出いわゆる「風評被害」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出いわゆる「風評被害」に関する質問に対する答弁書

一及び六について

 お尋ねの「今回、原発事故に引き続き生じているとされる、いわゆる「風評被害」」について、具体的に意味するところが必ずしも明らかでなく、一概にお答えすることは困難である。
 なお、「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(平成二十三年八月五日原子力損害賠償紛争審査会決定。以下「中間指針」という。)において、「報道等により広く知らされた事実によって、商品又はサービスに関する放射性物質による汚染の危険性を懸念した消費者又は取引先により当該商品又はサービスの買い控え、取引停止等をされたために生じた被害」に対して「風評被害」という表現を用いることとしているが、中間指針においては同時に、いわゆる風評被害については確立した定義はないとし、また、かかる被害に対して風評被害という表現自体を避けることが本来望ましいが、現時点でこれに代わる適切な表現は、裁判実務上もいまだ示されていないともされている。

二及び三について

 お尋ねの「食品中の放射性セシウムの平均値」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

四について

 お尋ねの「放射性セシウムによる土壌汚染」の意味するところが必ずしも明らかでないが、東京電力株式会社の福島第一原子力発電所の事故(以下「事故」という。)前の平成二十二年度に行われた環境放射能水準調査の結果によれば、平成二十二年六月に福島市の一地点において採取した地表から深さ約五センチメートルまでにある土壌から一キログラム当たり二十二ベクレルの放射能濃度のセシウム一三七が検出されている。

五について

 お尋ねの「放射性セシウムによる土壌汚染を上回る土壌汚染を認める地域」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

七について

 お尋ねの「何らかの輸入規制等」の意味するところが必ずしも明らかでないが、我が国の農林水産物・食品に対しては、本年五月二十三日現在、インド、インドネシア共和国、シンガポール共和国、タイ王国、大韓民国、中華人民共和国、ネパール連邦民主共和国、パキスタン・イスラム共和国、フィリピン共和国、ブルネイ・ダルサラーム国、アメリカ合衆国、アルゼンチン共和国、ブラジル連邦共和国、ボリビア多民族国、アイスランド共和国、ウクライナ、スイス連邦、ノルウェー王国、リヒテンシュタイン公国、ロシア連邦、アラブ首長国連邦、イスラエル国、イラク共和国、イラン・イスラム共和国、オマーン国、カタール国、クウェート国、サウジアラビア王国、トルコ共和国、バーレーン王国、レバノン共和国、エジプト・アラブ共和国、コンゴ民主共和国、モーリシャス共和国、モロッコ王国及び欧州連合加盟各国の六十三か国において、放射性物質による汚染に係る輸入規制が行われていると承知している。また、食品等に係る輸入規制は科学的な原則に基づくべきものであるため、政府としては、まずは、日本国内における安全確保のための取組及び安全性を証明する科学的データを丁寧に説明しつつ、このような規制の緩和・撤廃を求めているところである。その結果、これまでに、オーストラリア連邦等十三か国で規制措置が完全撤廃されたところであり、引き続き、輸入規制を行っている国及び地域に対してその緩和・撤廃を要請していくこととしている。

八について

 環太平洋パートナーシップ協定については、現在交渉中であり、お尋ねについてお示しすることは困難である。

九について

 事故による、福島県を始めとした被災地産品の買い控えや被災地への観光客の減少等については様々な要因があり、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、政府としては、こうした課題に対処するため、復興大臣の下、関係府省庁から成る「原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース」を開催し、対策の強化について検討してきたところであり、国民に対する科学的知見に基づく安全性に関する正確な情報提供や正しい理解の普及等の取組を着実に粘り強く進めることが重要と考えている。

十から十二までについて

 御指摘のような仮定に基づくお尋ねについてお答えすることは差し控えたい。いずれにせよ、政府としては、引き続き放射線による人体への影響等について、科学的知見に基づく正確な情報提供に努めてまいりたい。

十三及び十四について

 食品中の放射性物質に関する基準値(以下「基準値」という。)については、食品安全委員会の食品健康影響評価及び国際連合食糧農業機関・世界保健機関合同食品規格計画の実施機関であるコーデックス委員会(以下「コーデックス委員会」という。)における食品に関する国際規格を踏まえ、食品の摂取に伴う被ばく線量が年間一ミリシーベルトを超えないように設定しているものである。御指摘の「健康問題については全く問題ない」及び「健康問題は全く問題ない」との安倍内閣総理大臣発言については、基準値を超過した食品は、回収・廃棄されるほか、地域的な広がりが認められる場合には出荷制限を行うなど、厳格な管理体制を敷いていること及び通常の食生活における食品からの放射性物質の摂取状況を把握するための調査において、食品の摂取に伴う被ばく線量は、コーデックス委員会の指標である年間一ミリシーベルトの百分の一以下の水準であることが確認されていることを踏まえたものである。
 また、御指摘の「汚染水の影響は完全にブロックされている」との安倍内閣総理大臣発言については、福島県近海での放射性物質の影響は、東京電力株式会社の福島第一原子力発電所の港湾内の〇・三平方キロメートルに完全にブロックされていることを指しており、この発言の根拠となる同発電所の港湾外における海水の放射線データは、原子力規制委員会等による放射線モニタリングの結果によれば、放射性物質の濃度は検出できないほど低いか、基準濃度をはるかに下回っていることが確認されていることを踏まえたものである。このため、発言の撤回は不要であると考えている。