第186回国会(常会)
答弁書第六七号 内閣参質一八六第六七号 平成二十六年四月十八日 内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 山崎 正昭 殿 参議院議員福島みずほ君提出集団的自衛権並びにその行使に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員福島みずほ君提出集団的自衛権並びにその行使に関する質問に対する答弁書 一について 政府としては、従来から、憲法第九条の文言は、我が国として国際関係において武力の行使を行うことを一切禁じているように見えるが、憲法前文で確認している日本国民の平和的生存権や憲法第十三条が生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を国政上尊重すべきこととしている趣旨を踏まえて考えると、憲法第九条は、外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされるような場合にこれを排除するために必要最小限度の範囲で武力を行使することまで禁じているものではなく、同条の下において例外的に認められる武力の行使については、いわゆる自衛権発動の三要件に該当する場合に限られると解してきている。 二について 憲法の基本原則の一つである平和主義については、憲法前文第一段における「日本国民は、・・・政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」の部分並びに憲法前文第二段における「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」及び「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」の部分がその立場に立つことを宣明したものであり、憲法第九条がその理念を具体化した規定であると解している。 三及び四について お尋ねの「数量的な差異」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国際連合憲章(昭和三十一年条約第二十六号)第五十一条は、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」と規定しており、ここにいう個別的自衛権とは、一般に、自国に対する武力攻撃を実力をもって阻止することが正当化される権利をいい、集団的自衛権とは、一般に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利をいうと解されている。 五、九及び十について 現時点で、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈は従来どおりである。 他方、集団的自衛権の問題については、現在、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「懇談会」という。)において、前回の報告書が出されて以降、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることを踏まえ、我が国の平和と安全を維持するためどのように考えるべきかについて検討が行われているところであり、政府としては、懇談会から報告書が提出された後に、対応を改めて検討していく考えである。 六及び七について 外務省として把握している国際連合憲章第五十一条に従い集団的自衛権の行使に当たって加盟国がとった措置として国際連合安全保障理事会に報告されたもの(以下「報告事例」という。)は、次のとおりである(括弧内の年は報告事例が報告された年である。)。御指摘の「四類型」は、必ずしも集団的自衛権の行使に関する類型として平成十九年に開催された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」において検討されたものではないと承知する。報告事例において、御指摘の「四類型」に該当する事態が生じたか否かについては、政府としてその詳細な事実関係を把握する立場にないため、お答えすることは困難である。 ソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「ソ連邦」という。)によるハンガリーに対する支援(昭和三十一年) 米国によるレバノンに対する支援(昭和三十三年) 英国によるヨルダンに対する支援(昭和三十三年) 英国による南アラビア連邦に対する支援(昭和三十九年) 米国、オーストラリア及びニュージーランドによるヴィエトナム共和国に対する支援(昭和四十年) ソ連邦によるチェッコ・スロヴァキアに対する支援(昭和四十三年) ソ連邦によるアフガニスタンに対する支援(昭和五十五年) キューバによるアンゴラに対する支援(昭和五十八年) フランスによるチャドに対する支援(昭和六十一年) 米国によるホンジュラスに対する支援(昭和六十三年) 米国及び英国によるペルシャ湾地域への兵力の展開(平成二年) ロシアによるタジキスタンに対する支援(平成五年) ジンバブエ、アンゴラ及びナミビアによるコンゴ民主共和国に対する支援(平成十年) 英国、フランス、オーストラリア等による米国に対する支援(平成十三年) 八について イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成十五年法律第百三十七号)は、国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取組に関し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与するため、国際連合安全保障理事会決議第千四百八十三号を踏まえ、人道復興支援活動及び安全確保支援活動を行うこととし、もってイラクの国家の再建を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とするものであるが、お尋ねについては、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい。 |