質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第五〇号

内閣参質一八六第五〇号
  平成二十六年四月四日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員川田龍平君提出海産物のストロンチウム九十汚染に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出海産物のストロンチウム九十汚染に関する質問に対する答弁書

一及び九から十三までについて

 水産物等中のストロンチウム九十に関する調査は、農林水産省及び環境省においてそれぞれ継続的に行っており、当該調査の結果については、農林水産省及び環境省のホームページにおいてそれぞれ公表している。
 また、水産物を始めとする食品中の放射性物質に関する検査(以下単に「検査」という。)は、「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」(平成二十三年四月四日原子力災害対策本部策定)に基づき関係地方自治体において実施されており、検査の結果については、厚生労働省及び農林水産省のホームページにおいて公表している。
 検査は、セシウム百三十四及びセシウム百三十七(以下「放射性セシウム」という。)、ストロンチウム九十、プルトニウム二百三十八、プルトニウム二百三十九、プルトニウム二百四十及びプルトニウム二百四十一並びにルテニウム百六を考慮に入れて設定した食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第十一条第一項に規定する基準として定めた値(以下「放射性物質の基準値」という。)に従い実施されているものであり、また、放射性物質の基準値は、放射性セシウム以外の核種の測定に時間を要することを踏まえ、放射性セシウム以外の核種からの線量を含め、食品を摂取することによる被ばく線量が、年間一ミリシーベルトを超えないように放射性セシウムの濃度を設定したものである。
 お尋ねの「試験操業」は、検査の結果に基づき、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第二十条第二項の規定に基づく原子力災害対策本部長による出荷制限の指示(出荷を差し控えるよう関係事業者等に要請することを内容とする指示をいう。)がなされていない水産物を対象として福島県漁業協同組合連合会によって行われていると承知しており、政府としては、当該操業の検討の場に職員を派遣し、必要な助言を行っているところである。

二及び三について

 お尋ねの東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所において、平成二十五年八月に約三百トンの汚染水が漏えいしたH4タンクエリアのナンバー五タンク(以下単に「タンク」という。)から同月二十三日に採取した水の放射能濃度については、東京電力の計測によると、セシウム百三十四は一リットル当たり四万四千ベクレル、セシウム百三十七は一リットル当たり九万二千ベクレルであったと東京電力から報告を受けている。
 また、タンク付近の観測孔E―1及びE―2(以下単に「観測孔」という。)において同年九月八日に採取した水の放射能濃度については、東京電力の計測によると、セシウム百三十四は、それぞれ、一リットル当たり二・五ベクレル及び一リットル当たり〇・六四ベクレル、セシウム百三十七は、それぞれ、一リットル当たり五・一ベクレル及び一リットル当たり〇・七四ベクレルであったと東京電力から報告を受けている。
 なお、タンク及び観測孔から採取した水のいずれに関しても、ストロンチウム九十については、放射能濃度を計測していないと東京電力から報告を受けている。

四について

 放射性物質の基準値は、食品の種類ごとに、土壌中の放射性物質の濃度、土壌から食品への移行のしやすさ等のデータを用いて放射性セシウムから受ける線量とその他の核種から受ける線量の比率を算出する等により、放射性セシウム、ストロンチウム九十、プルトニウム二百三十八、プルトニウム二百三十九、プルトニウム二百四十及びプルトニウム二百四十一並びにルテニウム百六を考慮に入れた上で、放射性セシウム以外の核種からの線量を含め、食品を摂取することによる被ばく線量が年間一ミリシーベルトを超えないように、放射性セシウムの濃度の値を設定したものである。
 なお、放射性物質の基準値の設定における当該比率の算出に当たっては、海産物についてはその算出が難しいことから、他の食品の種類に比べて厳しい前提として、放射性セシウムから受ける線量とその他の核種から受ける線量の比を一対一として設定しているものであり、御指摘のように「放射性セシウムが一キログラム当たり百ベクレル含まれるとき、海生生物の場合、ストロンチウム九十も一キログラム当たり百ベクレル含まれる仮定」を置いて設定しているものではないため、後段のお尋ねについてお答えすることは困難である。

五について

 御指摘の「見解を決定した主体」及び「同見解を審議した委員会」の意味するところが必ずしも明らかではないが、放射性物質の基準値は、平成二十四年二月二十四日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会及び薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会合同会議で意見を聴いた上で、厚生労働省が設定したものである。また、同合同会議の委員名、議事録及び会議資料は、厚生労働省のホームページで公開している。

六について

 御指摘のような事実があるということは承知しているが、お尋ねについては、ウクライナ国内法において食品中及び飲料水中に含まれていることが許容される放射性物質の濃度に係ることであり、政府として見解をお示しする立場にない。

七について

 御指摘の「内部被ばくの危険があるとの趣旨が記載されている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成十四年三月に厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課(当時)が作成した「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」については、ストロンチウム九十その他の放射性物質を含む食品を摂取することにより、内部被ばくにより健康に影響が生ずる可能性があるとの前提で、原子力施設に対するテロ、原子力施設の事故等の発生時に食品中の放射性物質の濃度を測定する場合に、当該測定が技術的に適切に行われるよう、放射能の分析方法について取りまとめたものである。

八について

 御指摘の「このマニュアルに基づいて分析や食品摂取の規制を行っていない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、検査については、ストロンチウム九十も考慮に入れて設定した放射性物質の基準値に従い、当該基準値の設定に伴い策定した「食品中の放射性セシウム検査法」(平成二十四年三月十五日付け食安発〇三一五第四号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知別添)等を用いて実施されているところである。