質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質一八六第一一号
  平成二十六年二月十八日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員蓮舫君提出医薬品のインターネット販売に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員蓮舫君提出医薬品のインターネット販売に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 厚生労働省の職員が平成二十五年十一月に日本調剤株式会社の役員と面談し、御指摘の「医療用医薬品を郵送で患者に直接届けるサービス」を行うことについては、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第九条の二第一項及び薬事法施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)第十五条の十三第一項の規定に違反する旨を伝えたことは事実であるが、その時点において同社は当該サービスを行っていないとのことであったため、御指摘の「中止するよう指導した」との事実はない。
 また、薬事法及び薬事法施行規則の規定に照らして、薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤(以下「調剤された薬剤」という。)を購入し、又は譲り受けようとする者に対して、その薬局内の情報の提供を行う場所において、薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に対面で当該調剤された薬剤の適正な使用のために必要な情報の提供を行わせた後に、当該調剤された薬剤を郵送し、又は直接配達することは認められるが、その個別具体的な事例については、特段の必要性があるとは考えていないため把握していない。

一の3について

 薬局開設者が、調剤された薬剤を購入し、又は譲り受けようとする者に対して、その薬局内の情報の提供を行う場所において、薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に対面で当該調剤された薬剤の適正な使用のために必要な情報の提供を行わせた後に、当該調剤された薬剤を郵送し、又は直接配達することについては、薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律(平成二十五年法律第百三号。以下「平成二十五年改正法」という。)による改正前の薬事法第九条の二第一項及び薬事法施行規則等の一部を改正する省令(平成二十六年厚生労働省令第八号。以下「平成二十六年改正省令」という。)による改正前の薬事法施行規則第十五条の十三第一項の規定に違反せず、また、平成二十五年改正法による改正後の薬事法(以下「改正薬事法」という。)第九条の三第一項及び平成二十六年改正省令による改正後の薬事法施行規則第十五条の十二第一項の規定にも違反しない。

二について

 薬事法の一部を改正する法律(平成十八年法律第六十九号。以下「平成十八年改正法」という。)の施行に伴い制定した薬事法施行規則等の一部を改正する省令(平成二十一年厚生労働省令第十号。以下「平成二十一年改正省令」という。)による改正後の薬事法施行規則第十五条の十三第一項において、平成十八年改正法による改正後の薬事法第九条の二第一項の規定による情報の提供は、その薬局内の情報の提供を行う場所において、薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に対面で行わせなければならないこととしたため、平成十八年改正法及び平成二十一年改正省令が施行された平成二十一年六月一日以降、御指摘の「ファクシミリを利用した処方せん受入体制と患家での薬剤の受渡しについて」(平成十年十二月二十五日付け医薬企第九十号厚生省医薬安全局企画課長通知。以下「通知」という。)でお示しした取扱いは認められないこととなっており、このことは平成二十五年改正法の施行後においても同様である。このため、厚生労働省としては、お尋ねの通知に基づく措置として「これまで実施されてきた薬剤師以外の者による薬剤の受渡しの件数」及び「これまで実施されてきた薬剤師以外の者による薬剤の受渡しに起因して発現した副作用」についてはいずれも把握しておらず、お尋ねの「通常の処方箋医薬品販売の場合と比較して有意かつ実証的な差」の有無についてお答えすることは困難である。

三の1、2及び4について

 御指摘の「情報通信機器を用いた診療(遠隔診療)等に係る取扱いについて」(平成二十三年三月二十三日付け厚生労働省医政局医事課及び医薬食品局総務課事務連絡。以下「事務連絡」という。)に基づくファクシミリ等により送付された処方箋による調剤に関する取扱いについては、調剤された薬剤の適正な使用が確保されないことによる調剤された薬剤の使用者の安全性の確保への懸念はあるものの、東日本大震災という大規模な災害の発生時において、調剤された薬剤が提供されないことによる被災地の患者の傷病の悪化のおそれを勘案し、緊急避難的な措置として、調剤された薬剤に限り、例外的な取扱いを認めたものである。このため、薬剤師が電話等により調剤された薬剤の適正な使用のために必要な情報提供を適切に行うことを求めたこと以上の「安全性への懸念に対する対応策」は講じていない。

三の3及び5について

 お尋ねの「事務連絡に基づき電話等による情報提供にとどまったことに起因して発現した副作用」については把握しておらず、お尋ねの「通常の処方箋医薬品販売の場合と比較して有意かつ実証的な差」の有無についてお答えすることは困難である。

三の6について

 東日本大震災の発生時において緊急避難的な措置として例外的な取扱いを認めたことをもって、事務連絡でお示ししたファクシミリ等により送付された処方箋による調剤に関する取扱いを一般的に認めることは適切でない。

四の1について

 御指摘の「座長コメント」は、御指摘の「スイッチ直後品目等の検討・検証に関する専門家会合」(以下「専門家会合」という。)において検討が行われた全ての「スイッチ直後品目」及び「劇薬指定品目」(以下「スイッチ直後品目等」という。)について、五感を用いて判断する必要があるとの意味であると承知している。

四の2について

 お尋ねの「五感を用いた判断の必要性の有無」については、専門家会合において議論されており、このことは、専門家会合が平成二十五年十月八日に取りまとめた「スイッチ直後品目等の特性及び販売時の留意点について」(以下「専門家会合報告書」という。)において、「使用者は自らの症状の程度や状態について、正しく判断・申告できないおそれがあるため、薬剤師が知識・経験を持って直接判断することが必要である。」とされたことからも明らかである。

四の3及び4について

 専門家会合は、スイッチ直後品目等の特性及び販売時の留意点について、医学・薬学的観点から検討を行うことを目的として開催したものであるため、医学・薬学の専門家のみを構成員としたものである。

四の5について

 御指摘の「座長コメント」においては、「スイッチ検討会の報告書を作成するに当たっては、この件が政治的に問題になっていたこともあり、また、純粋に医学・薬学の見地から検討を行ったということをはっきりさせるためにも、敢えてネットとか対面という用語を使わずに作成した。」とあり、このことから、専門家会合報告書においては、お尋ねの「五感を用いて判断する必要がある」との文言が記載されなかったものと承知している。
 また、御指摘の「座長コメント」は、座長が、専門家会合報告書の内容を明確化するために作成したものと承知しており、専門家会合での議論はし尽くされたものと考えている。

四の6について

 四の3及び4についてで述べたとおり、専門家会合は、スイッチ直後品目等の特性及び販売時の留意点について、医学・薬学的観点から検討を行うことを目的として開催したものであり、その検討の結果、専門家会合報告書において、スイッチ直後品目等の販売時の留意点として、「使用者は自らの症状の程度や状態について、正しく判断・申告できないおそれがあるため、薬剤師が知識・経験を持って直接判断することが必要である。」とされたものである。

四の7について

 御指摘の「座長コメント」については、専門家会合報告書が公表された後、専門家会合の座長が、専門家会合報告書の内容を明確化するために作成したものと承知しており、平成二十五年十月二十九日午後三時から開催された産業競争力会議医療・介護等分科会の第二回会合において、厚生労働省医薬食品局長が読み上げる形で発表されたものである。
 また、同会合での発表後、専門家会合の全構成員が当該コメントを改めて確認し、その内容について同意していると承知している。

四の8について

 専門家会合において検討が行われた全てのスイッチ直後品目等について「薬剤師が患者さんの状態を五感を用いて判断し、販売する必要がある」ということが、医学・薬学の専門家の見解である。この見解を踏まえ、政府として、当該スイッチ直後品目等の不適正な使用による健康被害の発生を防止するためには、薬剤師が、その薬学的知見に基づき、使用できる全ての感覚を用いて、直接のやり取りや会話の中で相手の状態を的確に把握し、相手の理解を確認しながら、柔軟かつ適切に情報の提供及び指導を行う必要があると判断したものである。

五の1及び2について

 要指導医薬品とは、その適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品である。このため、改正薬事法第三十六条の六第一項において、薬局開設者又は店舗販売業者に対し、要指導医薬品を販売し、又は授与する場合には、薬剤師の対面による情報の提供及び指導を行わせることを義務付けている。
 また、お尋ねの「必要な情報を提供」とは、薬剤師が、要指導医薬品の購入者に対し、当該要指導医薬品の名称、有効成分の名称及び分量、用法、用量、効能、効果等の要指導医薬品の適正な使用のために必要な情報を伝達することをいい、お尋ねの「必要な薬学的知見に基づく指導」とは、薬剤師が、要指導医薬品の購入者に対し、その薬学的知見に基づき、当該要指導医薬品の使用を止めるべきタイミングを個別具体的に指示すること、購入者の状態や他の薬剤又は医薬品の使用状況を踏まえ、他の医薬品への変更を促すこと等の要指導医薬品の適正な使用のために必要な指導を行うことをいう。

五の3及び4について

 五の1及び2についてで述べたとおり、要指導医薬品とは、その適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要な医薬品であり、情報の提供及び指導を行うに当たっては、薬剤師が、その薬学的知見に基づき、使用できる全ての感覚を用いて、直接のやり取りや会話の中で相手の状態を的確に把握し、相手の理解を確認しながら行うことが必要である。
 また、薬剤師が、使用できる全ての感覚を用いて相手の状態の把握等を行うことは、医行為に該当しない範囲において認められるものである。

五の5について

 要指導医薬品を購入しようとする者が当該医薬品を使用しようとする者かどうかについては、薬剤師が、当該医薬品を購入しようとする者の申告に基づき確認するものであるが、当該医薬品の販売の可否の判断については、薬剤師が、当該申告の内容とともに、その者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用状況等や、当該医薬品の効能、効果等に照らしてその者が当該医薬品を使用することが適切であるかどうかを踏まえて行うこととなるものである。

六の1について

 お尋ねの検討会等を行ったことはない。

六の2について

 お尋ねの「専門家会合の検討範囲」には、医療用医薬品の取扱いは含まれていなかったが、専門家会合における検討の過程で医療用医薬品についても議論が及んだ結果、専門家会合報告書において、医療用医薬品について「現行通り、医療従事者の直接的な関与の下で、スイッチ直後品目や劇薬指定品目以上に慎重に取り扱うことが求められるとの見解で、各構成員が一致した」とされたものである。

七の1、2及び4について

 お尋ねの「処方箋医薬品のネット調剤」の意味するところが必ずしも明らかではないが、調剤された薬剤については、人体への作用が著しく、重篤な副作用が生ずるおそれのあるものや、作用は著しくなくとも、使用者自らの選択ではなく、医師又は歯科医師の指示の下で使用されることが目的とされたものであること、医師又は歯科医師の処方箋により、特定の人の特定の傷病にのみ用いられるものであること等から、医薬品に関する専門的知識を有していない者が使用した場合には、要指導医薬品以上に健康被害が発生するおそれがあるため、改正薬事法第九条の三第一項において、薬局開設者に対し、調剤された薬剤を販売し、又は授与する場合には、薬剤師が、直接のやり取りや会話の中で相手の状態を的確に把握し、相手の理解を確認しながら、より柔軟かつ適切に情報の提供及び指導を行うことができる対面による情報の提供及び指導を義務付けている。
 また、お尋ねの「必要な情報提供」とは、薬剤師が、調剤された薬剤の購入者に対し、当該調剤された薬剤の名称、有効成分の名称及び分量、用法、用量、効能、効果等の調剤された薬剤の適正な使用のために必要な情報を伝達することをいい、お尋ねの「必要な薬学的知見に基づく指導」とは、薬剤師が、調剤された薬剤の購入者に対し、その薬学的知見に基づき、当該調剤された薬剤の使用を止めるべきタイミングを個別具体的に指示すること等の調剤された薬剤の適正な使用のために必要な指導を行うことをいう。

七の3について

 調剤された薬剤の不適正な使用による健康被害を防止するためには、医師又は歯科医師と薬剤師がそれぞれの専門性に基づき、処方の内容を確認することが重要であり、医師又は歯科医師とは別に、薬剤師が、調剤された薬剤の適正な使用のために必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を行うことが必要である。
 薬剤師が、その薬学的知見に基づき、使用できる全ての感覚を用いて、直接のやり取りや会話の中で相手の状態を的確に把握し、相手の理解を確認しながら、より柔軟かつ適切に情報の提供及び指導を行うためには、これを対面で行う必要があることから、七の1、2及び4についてで述べたとおり、改正薬事法第九条の三第一項においては、調剤された薬剤について、対面による情報の提供及び指導を義務付けている。

八について

 厚生労働省としては、薬事法第七十七条の四の二の規定に基づく副作用の報告制度(以下「副作用報告制度」という。)により、医薬品の製造販売業者若しくは外国特例承認取得者又は薬局開設者、病院若しくは診療所の開設者若しくは医師、歯科医師、薬剤師、登録販売者その他の医薬関係者からの報告により、医薬品の副作用その他の事由によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生状況等を把握しており、同法第七十七条の四の五の規定に基づき、必要があると認めるときは、当該医薬品の副作用の発生原因を含め、当該報告に関する調査を独立行政法人医薬品医療機器総合機構に行わせている。
 医薬品の副作用の発生原因としては、当該医薬品が本来持つ性質によるものや、当該医薬品の不適正な使用によるものなどがあるが、副作用報告制度においては、個別の事例における薬剤師が行った服薬指導や情報の提供の内容は把握しておらず、お尋ねの「薬剤師による服薬指導・情報提供が十分又は適切ではなかったことに起因して発生した副作用」の有無についてお答えすることは困難である。