質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一九二号

憲法前文と武力の行使に係る憲法解釈に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月二十日

小西 洋之   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   憲法前文と武力の行使に係る憲法解釈に関する質問主意書

一 一般論として、ある内閣による憲法違反の内容の憲法解釈変更の閣議決定は法的に無効等であると解するが、政府はどのように考えているか。

二 一般論として、憲法前文の「これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」に規定されている「一切の憲法」には、内閣による憲法解釈の変更により新しい憲法規範となった解釈変更後の「憲法」も含まれると解してよいか。また、この場合に、主権者国民である「われら」が、「反するものは排除する」としている「これ」たる「かかる原理」には、国民主権及び間接民主制の原理が含まれると解してよいか。その上で、当該「かかる原理」に反するような内閣による解釈変更による「憲法」があった場合には、当該「憲法」は当然に無効等になると考えてよいか。憲法前文は、国会や内閣が関与する「法令」及び「詔勅」についても掲記しているところであり、内閣の憲法解釈の変更において現実にこうした事態が起きるか否かではなく、あくまで、法理としてどうかということを問うているのであり、絶対に答弁拒否することなく答弁されたい。

三 前文における「日本国民は、(中略)政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とは、主権者である日本国民が、国民主権という政治原理を採用した動機及び理由において、国家の行為による戦争の惨禍が国民に生じることを将来にわたり防ぐためであることを示しているものと解してよいか、政府の解釈を示されたい。

四 政府の憲法解釈においても憲法の前文は憲法の各条項の解釈の指針となるものとされているところ(平成六年十月十八日 大出内閣法制局長官答弁)、主権者である国民が国民主権原理を採用した動機及び理由は国家の行為による戦争の惨禍を国民に生じさせないためであるという前文の解釈(前記三に対する政府答弁)は、憲法第九条、第九十六条、第九十九条の解釈の指針となるものと解してよいか。

五 憲法前文において、「日本国民は、(中略)政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とあるところ、仮に、憲法第九条の解釈においては許されないとされている武力の行使を可能とする憲法規範の変更を、主権者国民の国民投票(憲法改正)によらずに、内閣の閣議決定による解釈変更によって行おうとする場合があった際には、前記四で質問している憲法前文における国民投票を行使の手段とする国民主権の趣旨の下の憲法第九条及び憲法第九十六条の解釈として、当該閣議決定は憲法第九条及び憲法第九十六条違反の行為となり法的に無効等となると解してよいか。憲法第九条違反にも、また、憲法第九十六条違反ともならない、あるいは、なんら法的問題等は生じないと考える場合は、その理由について具体的に示されたい。

六 憲法前文において、「日本国民は、(中略)政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とあるところ、自衛隊員が戦死し、かつ、その他の国民も戦死する可能性のある現在の憲法第九条においては許容されていない武力の行使を、憲法第九条において、主権者である国民の主権行使である国民投票を行わずに、解釈変更の閣議決定により可能とすることは、憲法第九十九条の下の国務大臣の憲法尊重義務及び擁護義務に反するものであり、当該閣議決定行為は憲法第九十九条違反として違憲無効となるのではないか。憲法第九十九条違反等とならない場合は、その法制的理由について具体的に示されたい。

七 前記一、二及び三並びに憲法前文の「かかる原理」たる戦争の惨禍を防ぐことをその理由等とする国民主権の原理を総合して考えると、憲法前文の解釈として、自衛隊員及び他の国民が戦死する可能性がある憲法第九条において許容されていない武力の行使を可能とする内閣の閣議決定により解釈変更された新しい憲法規範は、国民主権の行使である国民投票によらず定められた新しい憲法規範であり、「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」として主権者である国民より排除されるところの憲法であって、当該閣議決定は憲法違反の行為であり法的に無効等であり、従って、当該解釈変更された新しい憲法規範は法的に無効等であると解してよいか。もし、これと異なる見解を政府が採用する場合は、その法制的理由について詳細に示されたい。

  右質問する。