質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一八一号

日本版スチュワードシップ・コードに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月二十日

大久保 勉   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   日本版スチュワードシップ・コードに関する質問主意書

 先般、金融庁の「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」により、「「責任ある機関投資家」の諸原則 日本版スチュワードシップ・コード 投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために」(以下「日本版コード」という。)が策定・公表されたところである。これに伴い金融庁は、六月十日現在で日本版コードの受入れを表明した機関投資家のリスト(以下「リスト」という。)を発表している。この日本版コードを踏まえ、以下質問する。

一 日本版コードの受入れを表明した機関投資家は、日本版コードを遵守しない形での資産運用を行うことができるか。

二 日本版コードは、平成二十五年六月に閣議決定された「日本再興戦略」によって検討が進められたものであり、本年六月の「日本再興戦略」の改訂について(素案)でも言及されている。このような重要政策課題であるから、政府及び政府機関が日本版コードを遵守することは当然であるとの考えがあるが、政府の見解を示されたい。また、上場株式の時価千億円以上を保有する政府機関を挙げ、日本版コードの受入れ状況をそれぞれ明らかにされたい。加えて、右の政府機関が日本版コードの受入れを行わない場合は、政府自らが重要政策課題を反故にしているとの意見もあるが、これに対する政府の見解を明らかにされたい。

三 日本銀行、預金保険機構及び銀行等保有株式取得機構(以下「日本銀行等」という。)が保有する、金融機関株式の簿価と現時点の時価を明らかにされたい。

四 リストによれば、日本銀行から運用を委託されている三菱UFJ信託銀行株式会社は日本版コードの受入れを表明している。このことから、日本銀行自身も日本版コードを受け入れたことになるとの考えもあるが、政府の見解を明らかにされたい。なお、仮に日本銀行自身が日本版コードを受け入れない場合は、運用の委託について、日本版コードを受け入れない他の金融機関に変更すべきとの考えもあるが、併せて政府の見解を明らかにされたい。

五 日本銀行は、「議決権行使の指針」(以下「指針」という。)を定めており、「受託者は、(中略)議決権行使の判断基準にかかるガイドラインを定め、本行の承認を得るものとする。これを変更する場合も、同様とする。」としている。三菱UFJ信託銀行株式会社は日本版コードの受入れを表明しているため、「議決権行使の判断基準にかかるガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)の変更が必要となり、これにより同社は指針に従い、変更したガイドラインの日本銀行による承認を得ることが必要になると考える。この点について、日本銀行は、同社によるガイドライン変更を承認したのか、明らかにされたい。
 ガイドラインの変更が必要ないとされる場合あるいはガイドラインが変更されるにもかかわらず日本銀行による承認が必要ないとされる場合は、その理由を付すとともに、必要ないと判断した主体がどこかを併せて明らかにされたい。

六 預金保険機構及び銀行等保有株式取得機構から運用を委託されている金融機関がリストに含まれている場合、預金保険機構及び銀行等保有株式取得機構自身も日本版コードを受け入れたことになるとの考えもあるが、政府の見解を明らかにされたい。なお、仮に預金保険機構及び銀行等保有株式取得機構自身が日本版コードを受け入れない場合は、運用の委託について、日本版コードを受け入れない他の金融機関に変更すべきとの考えもあるが、併せて政府の見解を明らかにされたい。

七 預金保険機構については、同機構の「理事長談話(旧日本長期信用銀行及び旧日本債権信用銀行から買取った株式の当機構への一部移管について)」及び「株主議決権行使の基本的な考え方」並びに金融庁の「資本増強行に対するフォローアップに係る行政上の措置についての考え方の明確化について」に、銀行等保有株式取得機構については、「銀行等保有株式取得機構の議決権行使の基本的考え方」に、日本銀行の指針と同様に、ガイドラインに関する承認及び変更の規則がそれぞれ含まれているか。上述の規則が含まれており、かつ預金保険機構及び銀行等保有株式取得機構から運用を委託している金融機関がリストに含まれている場合、預金保険機構及び銀行等保有株式取得機構は、受託金融機関によるガイドライン変更を承認したのか、明らかにされたい。
 ガイドラインの変更が必要ないとされる場合あるいはガイドラインが変更されるにもかかわらず預金保険機構及び銀行等保有株式取得機構による承認が必要ないとされる場合は、その理由を付すとともに、必要ないと判断した主体がどこかを併せて明らかにされたい。

八 日本銀行等の保有する株式について、平成二十五年一月から平成二十六年十二月末に決算期を迎えた企業の議決権の行使において、①賛成、②反対(議題の一部反対を含む)、③白紙委任及び棄権、④不行使、のそれぞれの割合について示されたい。特に、取締役選任の議題において、社外取締役が一人以上就任している企業と社外取締役が存在しない企業との、反対(一部反対を含む)の議決権行使の比率を明らかにされたい。

九 日本銀行等が金融機関の持ち合い株式を取得し、日本版コードにのっとって議決権を行使しない場合は、金融機関と企業との株式持ち合い関係の維持に対して日本銀行等が助力することになりかねないとの考えもあるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。