質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一七八号

使用済み核燃料の保管・管理・最終処分場の選定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月二十日

福島 みずほ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   使用済み核燃料の保管・管理・最終処分場の選定に関する質問主意書

 原子力発電所は「トイレのないマンション」と言われ、発電終了後の使用済み核燃料をはじめとする高レベル放射性廃棄物の処理について二十年以上にわたり、研究はされてきたものの、これまで処分方法が未確定なまま、最終処分の実現にはほど遠い。また、使用済み核燃料の保管場所である各原子力発電所サイトは満杯まで残り三・一年から十六・五年程となり、青森県六ヶ所村の再処理施設は満杯になりつつある。
 自発的に受入れを表明する自治体がなかったため、二〇一三年十二月十七日に開かれた高レベル放射性廃棄物に関する「最終処分関係閣僚会議」で、政府による候補地の選定と申入れに方針変更した。
 この中で政府は既に、約一万七千トンの使用済み核燃料が保管されており、最終処分しなければならないガラス固化体約二万五千本相当の高レベル放射性廃棄物が存在するとしている。また、既に存在しているガラス固化体四万本の保管のために約六平方キロメートルの地下施設が必要としている。
 右の点を踏まえ、以下質問する。

一 二〇一二年九月に日本学術会議は原子力委員会からの審議依頼に対し、「高レベル放射性廃棄物の処分について」(以下「回答」という。)をまとめた。
 回答では、原子力委員会が「地層処分施設建設地の選定に向け、その設置可能性を調査する地域を全国公募する際、及び応募の検討を開始した地域ないし国が調査の申し入れを行った地域に対する説明や情報提供のあり方」をあえて要求したにも関わらず、地層処分を前提にした政策を見直すよう求めた。
 また、「「暫定保管」というモラトリアム期間の設定」や「高レベル放射性廃棄物の「総量管理」」、「科学・技術的能力の限界の自覚と科学的自律性の確保」、「合意形成のための討論の場の設置」を求めている。
 つまり、より安定的・確実な技術を獲得するまで、最終処分せずに数十年から数百年程度のモラトリアム期間を設定すること、総量管理を前提にバックエンド問題を国民に示すこと、施設建設のために、巨大噴火、噴出物の広域的影響、未認定活断層、巨大地滑りなど想定外の危険性の認識をゆがめないこと、社会的信頼と合意形成を得るための事業者や利害関係者ではない人物による「公論形成の場」の設置を求めている。
1 回答も踏まえ、最終処分関係閣僚会議で使用済み核燃料の処分について、地層処分が最適だとした論拠は何か。
 地層処分が国際的共通認識であるとしても、日本の地質や地殻変動の影響、また、大量の地下水の影響を考慮した結果、最終処分の方法として最適だと考えるのか、政府の見解を明らかにされたい。
2 現時点で高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地として「有望な」地域の選定はされているのか。また、現時点で何か所程度選定すると想定しているのか。
3 政府は、国内の高レベル放射性廃棄物の最終処分場では、どの位の期間にわたって管理すると想定しているのか。
 フィンランドにあるオンカロでは、少なくとも十万年以上管理すると考えられていると言われているが、日本における管理のための設備について、政府の見解を明らかにされたい。
 また、当該管理に国と事業主体はどのような役割分担を行うのか。
4 現段階で、ガラス固化体にすることも含めて、最終処分にはどの位の費用がかかると見込んでいるのか。また、毎年管理する維持費をどの位見込んでいるのか。そして、維持管理は何年続くと試算しているのか。
5 政府は総量管理に関して検討しているのか。

二 北海道の幌延町にある「幌延深地層研究センター」(以下「センター」という。)では現在まで、百四十メートル、二百五十メートル、三百五十メートルの坑道が掘り進められている。
 二〇〇〇年、幌延町と北海道と核燃料サイクル開発機構(当時)の三者が協議し、「幌延町における深地層の研究に関する協定書」(以下「協定」という。)を締結している。
 協定では、「(機構が)研究実施区域に、研究期間中はもとより研究終了後においても放射性廃棄物を持ち込むことや使用することはしない」、また、「(機構は)深地層の研究終了後は、地上の研究施設を閉鎖し、地下施設を埋め戻すものとする」としている。
1 二〇一四年三月五日に徳永エリ参議院議員が提出した「高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定及び処分研究に関する質問主意書」(第百八十六回質問第三六号)に対する三月十四日付け答弁書(内閣参質一八六第三六号)の三及び四についてで「変更等は行われておらず、お尋ねのいずれについても、これらに沿った対応が行われるものと承知している」とは、政府がセンターを使用済み核燃料の最終処分場にしないという認識だということでよいか。
2 日本原子力研究開発機構の野村理事が本年四月二十四日に、地下施設の埋め戻しについて「埋め戻すのはもったいない」と発言をしたが、これは機構全体の共通認識なのか、個人的な見解なのか。
 また、これは最終処分場にする可能性があるという意味が含まれているのか。
3 センターでは、二〇〇〇年から二十年程度調査をするとしている。
 私が、現地を視察した際に、これから坑道を五百メートルまで掘ると説明を受けたが、何メートルまで掘り進め、何年まで研究するつもりか。
 二十年程度調査をするという当初の協定に反するのではないか。
4 センター及び東濃地科学センターで、これまで要した研究費・事業費はそれぞれ総額いくらか。

三 二〇一四年五月、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会地層処分技術ワーキンググループは、「最新の科学的知見に基づく地層処分技術の再評価 地質環境特性および地質環境の長期安定性について」(以下「再評価」という。)を報告した。この中では、「放射性物質を長期に隔離し閉じ込めておくために好ましい地質環境特性について特性ごと(熱環境、力学場、水理場、化学場)に整理した。その後、それらに影響を与える天然現象について(地質環境の長期安定性)の議論を行った。次にこれに基づき、地層処分のサイト選定で回避が必要な事象を抽出する」としている。

1 地層処分に好ましい地質環境特性について、「人工バリア設置環境として好ましい主な地質環境特性」と「天然バリアとして好ましい主な地質環境特性」に分けて列挙し、「これらの個別の条件を満たす好ましい地質環境特性は、わが国にも広く存在すると考えられる」としているが、その「好ましい地質環境特性」のある地域の中に、独立行政法人日本原子力研究開発機構の施設であるセンターと岐阜県の東濃地科学センターが設置された地域は含まれると考えるか。
2 センターで毎日流出している水量と、東濃地科学センターで毎日流出している水量はどの位なのか。
3 水が大量流出する場所は、使用済み核燃料の最終処分場として不適格ではないかと考えるが、いかがか、また、日本のように地下水が豊かなところで、水が流出しない場所が発見できると考えているのか、政府の見解を明らかにされたい。
4 ヨーロッパ、とりわけ北欧と違い、まだ新しい土地である日本において、十万年以上も安定した場所が発見できると考えているのか。
5 再評価のまとめでは「段階的なサイト調査を適切に行うことにより、全ての天然現象の長期的変動の影響を踏まえても尚、おのおのの好ましい地質環境とその地質環境の長期安定性を確保できる場所をわが国において選定できる見通しが得られたと判断できる」としている。
 どのような調査を行うことにより、我が国において選定できる見通しが出来たと判断出来たのか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。