質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一七七号

米軍Xバンドレーダーの追加配備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月二十日

福島 みずほ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   米軍Xバンドレーダーの追加配備に関する質問主意書

 日米両政府は、昨年二月、京都府京丹後市の宇川地区に米軍のXバンドレーダーを追加配備することで合意した。このレーダー及び関連施設の設置のために、宇川地区内に航空自衛隊経ヶ岬分屯基地に隣接して、新たな在日米軍基地(米軍経ヶ岬通信所)を建設しようとしており、本年五月二十七日には建設工事が着工された。集団的自衛権の行使が政府において議論されているなか、住民の間でこの基地の運用に大きな不安が生じている。
 この米軍Xバンドレーダーの追加配備と新たな在日米軍基地の建設について、以下、質問する。

一 京都府京丹後市宇川地区への米軍Xバンドレーダーの追加配備について、防衛省は「我が国の防衛に役立つ」との説明をしてきた。しかし、本年三月四日に米国防総省が公表した「四年毎の国防計画の見直し」(QDR)は、「米本土防衛」を優先課題に挙げ、その項目の中で「日本政府の支援で、日本において北朝鮮によるいかなるミサイル発射にも早期警戒・追跡を行う二基目の監視レーダーを配備しつつある」旨述べている。

1 米軍によるXバンドレーダーの追加配備の目的は「日本の防衛」ではなく、「米本土の防衛」にあるのではないのか。
2 米側よりXバンドレーダーの追加配備の目的に「日本の防衛」も含まれると公的に説明されたことがあるのか。ある場合には、その日時及び内容を示されたい。
3 米側がレーダーで知り得た情報は常時、日本側に伝達されるのか。
4 集団的自衛権の行使を検討する「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」で検討されてきた事例の一つに、米国向けに発射されたミサイルを日本が迎撃する可能性が検討されてきたが、その際にこのXバンドレーダーによる情報が日米共同の運用に資することになるのか。

二 中国外務省の洪磊副報道局長は、昨年九月二十三日の記者会見において、京都府京丹後市宇川地区へのXバンドレーダーの追加配備に関連し、「一部の国や集団は北朝鮮の核ミサイルの脅威を隠れみのにし、一方的にミサイル防衛システムをつくったり、集団的な協力を行ったりしている」旨を表明し、警戒感を示している。このような中国政府の反応に見られるように、米軍Xバンドレーダーの追加配備は、東アジアの平和と安定に資するものではなく、逆に、同地域における軍事緊張を拡大し、軍拡競争を煽ることにつながるのではないか、政府の見解を明らかにされたい。

三 米軍経ヶ岬通信所の建設工事に関して、近畿中部防衛局は京都府や京丹後市、近隣住民に対して、着工日や工事の内容、スケジュール等については「事前に十分に周知する」と繰り返し説明してきた。政府としても「できるかぎり早期に説明」したい旨を表明してきた。しかし、実際に近畿中部防衛局より京都府や京丹後市に連絡があったのは着工日のわずか一日前の五月二十六日の午後であった。

1 防衛省は米軍より工事着工日の情報をいつ得たのか、示されたい。工事着工日の事前の十分な周知、工事の内容やスケジュール、地域住民への安全対策等について近畿中部防衛局を通してこれまで繰り返し要請してきたにもかかわらず、わずか一日前の通知で工事を着工するという事態に対して、近隣住民の米軍への不安や不信は拡大している。防衛省は右の諸点について、これまで米側にどのような働きかけを行ってきたのか、具体的に明らかにされたい。
2 「事前に十分に周知する」、「できるかぎり早期に」伝えるとしておきながら、京都府や京丹後市、近隣住民に対してわずか一日前の通知という事態となったことについて、政府としてどのように捉えているのか、見解を示されたい。
3 政府は、米軍経ヶ岬通信所の建設について、そのマスタープラン、工事の内容やスケジュール、工期中の地域住民に対する安全対策等について、米軍より知らされているのか、明らかにされたい。

四 米軍経ヶ岬通信所の建設予定地は「丹後天橋立大江山国定公園」内にあり、「山陰ジオパーク」の一角を占めるなど、豊かで貴重な自然景観を保持している。周辺には「穴文殊」(清涼山九品寺)など貴重な文化資産もあり、また、絶滅危惧種であるハヤブサなど希少生物も生息していることも指摘されている。米軍経ヶ岬通信所及びその建設工事が、かかる自然資産や文化資産、生態系に悪影響をもたらすことが懸念されている。また、近隣住民はレーダーが発する電磁波の人体や生業への悪影響を懸念している。

1 近畿中部防衛局が実施した騒音、水質、電磁波に関する「事前調査」について、その調査方法と結果はいかなるものか、具体的に示されたい。
2 Xバンドレーダーの出力数、運用方法等を明らかにしたうえで、電磁波の人体などに与える影響について、政府の見解を示されたい。
3 政府としてどのような環境対策を講じるのか明らかにされたい。

五 在日米軍が作成し、それに基づいて在日米軍施設・区域を運用しているとされる「日本環境管理基準」(以下「管理基準」という。)に関連して、以下、質問する。

1 在日米軍施設・区域の運用実態について、それが管理基準を順守した形で運用されているかどうか、日本側では把握しているのか。
2 管理基準に基づいて作成されているとされる在日米軍施設・区域における「自然資源管理計画」や「文化的遺産管理計画」について、日本側ではそれを把握しているのか。
3 環境基準に基づいて作成された「自然資源管理計画」や「文化的遺産管理計画」については、広く公表され、その妥当性が検証されるべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。
4 米軍経ヶ岬通信所の建設に関して、米軍側が事前調査を実施したのか否か、実施したとすればどのような調査を行ったのか、どのような環境保護策をとろうとしているのかについて、日本側は把握しているのか。把握している場合には、具体的に明らかにされたい。

六 地域住民は配属される米軍人・軍属による事件・事故の発生の可能性を懸念している。京都府知事や京丹後市長は米軍Xバンドレーダーの配備への協力表明に当たり、その条件として「日米地位協定の真摯・適切で絶えざる改善」を挙げている。同協定の不平等性が、在日米軍基地周辺地域等で米軍人・軍属による事件・事故が繰り返し引き起こされることの根拠の一つになっており、同協定の抜本改正が必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。また、どのような事件事故防止対策を考えているのか、政府の見解を併せて明らかにされたい。  

  右質問する。