質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一七一号

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書の抽象的な問題提起に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月二十日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書の抽象的な問題提起に関する質問主意書

 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書(以下「本報告書」という。)の内容を含め、最近の政府の安全保障に関する検討は、「集団的自衛権の行使」を認めるかどうかという抽象論に走り過ぎている。こうした問題意識から、以下質問する。

一 本報告書の「Ⅰ 憲法解釈の現状と問題点」の中の「(エ)平和主義」において「平和主義は日本国憲法の根本原則の一つであり、今後ともこれを堅持していかなければならない」とあるが、それは憲法第九条を維持するということか。第九条は、我が国が侵略されない限りは武力を行使しないという規定であり、第九条の理念の下で、自衛隊は国際平和活動や内外の災害の救援活動などで活躍しており、自衛隊に対する国民の理解が非常に深まっている。このような中で第九条を変えることは憲法の平和主義を変えることになると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 政府は、国民の生命・財産を守る、領土・領空・領海を守る、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約を適切に運用するといった観点から、まずは、緊急に取り組むべき課題とじっくり検討し議論すべき課題とを明確に区分し、また、憲法で認められている自衛のための必要最小限の範囲で対応できることと現在の憲法解釈の枠内ではできないこととをきちんと区分することが必要ではないか。空理空論は慎むべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 本報告書においては、「Ⅰ 憲法解釈の現状と問題点」に「我が国として採るべき具体的行動の事例」を示し、「Ⅱ あるべき憲法解釈」で事例に基づくあるべき憲法解釈を示しているが、より詳細な分析が必要である。具体的な事例といった部分的な想定でなく、現実の安全保障上の課題として、総合的・戦略的・中長期的にどのような問題があるかを分析し、より具体的な問題をシミュレーションした場合に、現行の安全保障政策ではどうしても対応できない分野があるのかどうかを検討すべきではないか。

四 具体的な安全保障上の課題への対応のシミュレーションを行い、現行の安全保障政策の問題点が明確になった場合に、自衛隊法、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律等の個別の法律のどのような点が不十分かをより現実的に検討すべきであると考えるが、いかがか。

五 昭和三十四年のいわゆる砂川事件の最高裁判所判決を根拠に「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の範囲内であれば集団的自衛権の行使も可能である」との主張がある。しかし、この判決は、集団的自衛権行使の有無ではなく、米軍の駐留が憲法違反か否かが問われた判決であり、集団的自衛権の行使を根拠付ける内容の判決ではないと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。