質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一六五号

福島第一原発事故に伴う地下水対策等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月二十日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   福島第一原発事故に伴う地下水対策等に関する質問主意書

 六月二日、東京電力株式会社福島第一原子力発電所で、地下水が流入するのを防ぐ凍土遮水壁の建設が始まった。研究開発の名目で三百二十億円もの国費が投入される。そこで、以下質問する。

一 本当に凍土遮水壁で地下水の流入は止めることができると政府は考えているのか。凍土遮水壁が完成すると、むしろ囲った敷地内に地下水があふれ、建屋も浮いて傾いてしまうのではないかとの懸念もあるようだが、そのようなことは起こらないと断言できるのか。

二 技術的に確立していない凍土遮水壁よりも高尾山のトンネル工事などでも使用しているセメントミルクによる地下水の流入防止の方が確実ではないかと考えるが、なぜ検討しなかったのか。

三 凍土遮水壁の建設は見切り発車でまだ全面的には原子力規制委員会の許可は下りていない。解凍後に汚染水が流出することを心配する向きもある中、多額の国費を投入することが本当に妥当なのか。

四 凍土遮水壁の建設が暗礁に乗り上げることも想定して、今からでもセメントミルクによる方法を検討すべきではないか。

五 地下水バイパス計画について、一時貯水タンクから海に流す前にセシウム、全ベータ、トリチウムの測定をしてから流しているとのことだが、その水源となっている十二本の井戸のうち一本は基準値を超えていると承知している。ほかの十一本分をまとめて一時貯水タンクの段階で測定しているというのは、汚染された地下水を混ぜて薄めていると批判されても仕方がないのではないか、政府の見解を明らかにされたい。

六 地下水は全て山側から海側へ流れているわけではない。この地域の地下水の流れを政府は完全に把握しているのか。地下水の流れを完全には把握していない場合には、敷地の下を流れる地下水が、他の土地を流れることで、将来的に土地を汚染し、飲料水や農業用水を汚染する可能性を否定できないのではないか。

七 結局、地下水対策を含む汚染水対策についてはいまだ目途が立っていない。技術的難易度が高いものは、国が前面に立って行うべきとの論理で、凍土遮水壁の構築及び高性能多核種除去設備などに多額の国費を投入し、今後も様々な対策を研究開発の名の下に国が負担することになっているが、このようなやり方を続けていると、モラルハザードが起きるのではないか。万一他の企業が同じような原子力発電所事故を起こした場合には、また国が多額の国費を投入することとなるのか。国有化すれば、かえって東京電力株式会社が救済されるとの意見もあるが、株主や金融機関に徹底的に責任を取らせずに、原因企業に多額の国費を投入するというのは、やはり国民として納得いかないのではないか。

八 事故から三年が経過した今になって、茨城県のひたち海浜公園で基準値を超える空間線量が観測され、ゴールデンウィークで多くの観光客が訪れた後に立入禁止となった。これは事故直後と比べ、空間線量が上がったということなのか。それとも新たな原子力発電所事故が起きない限り、関東・東北地方で現在より空間放射線量が上がる地点はないと考えてよいのか。

九 事故から三年が経過した今になって、野生の山菜の放射性セシウム濃度が基準値を超えたとして、新たに国の出荷制限を受けた。今回はいずれも検体が少なく計画的なモニタリングが困難な山菜類であったが、キノコ類など、外界から取り込んだ放射性物質を環境中におけるよりも高い濃度に生体内に蓄積する現象、いわゆる「生物濃縮」をしやすいとされている食品については、今後新たに出荷制限される可能性はないと考えてよいか。

  右質問する。