質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一六一号

日本芸術院及び公益社団法人日展に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月十九日

大久保 勉   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   日本芸術院及び公益社団法人日展に関する質問主意書

 平成二十六年三月十四日の「衆議院議員長妻昭君提出公益社団法人日展における不正審査の疑い等に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一八六第六八号。以下「答弁書」という。)を踏まえ、以下質問する。

一 昨年十二月五日に公表された「公益社団法人日展第三者委員会報告書」(以下「報告書」という。)において、平成二十一年の篆刻部門において、「会派別入選者数を前年度通りにするとの事前配分があったと評価しうる」ことなどが記載されていることについて、文化行政及び公益法人の在り方の観点から、政府の見解を示されたい。

二 答弁書の一から三まで並びに五及び十についてで、「政府としては、まずは、日展自らが、国民から信頼される組織となるよう、更なる調査、その報告及び公表並びに同報告書を踏まえた再発防止策の実施などの対応を行う必要があると考えており、引き続き、日展に対し、これらの対応を求めているところである。」とある。報告書が出たにもかかわらず、政府として報告書について何らかの不十分な点があると判断したからこそ、日展が更なる調査を行うことを求めたということになる。政府として、報告書のいかなる点が不十分と認識したのか。また、「対応を求めている」とあるが、どのような方法をもって対応を求めているのか、加えて、対応の期限はあるのか。

三 答弁書の七についてに関し、日展の定款について、平成四年の変更前、変更後でどのように変わったのか示されたい。

四 歴代の公益社団法人(移行前については社団法人)日展の顧問、常務理事のうち、日本芸術院会員を務めなかった者はいるか。日展常務理事就任時は日本芸術院会員ではなかったものの、その後、日本芸術院会員となったケースも含めて、明らかにされたい。正確を期すため、過去の日展の顧問、常務理事の各人が、日本芸術院会員を務めたか否かを明らかにされたい。

五 公益社団法人(移行前については社団法人)日展の歴代理事のうち、日本芸術院賞を授与されていない者はいるか。日展理事就任時は日本芸術院賞を受賞してしなかったものの、その後、日本芸術院賞を受賞したケースも含めて、明らかにされたい。正確を期すため、過去の日展の理事各人が、日本芸術院賞を受賞したか否かを明らかにされたい。

六 かつて、日展は日本芸術院が開催していたが、昭和三十二年の衆議院文教委員会における高津正道衆議院議員の質問をきっかけとして、社会問題となり、最終的に社団法人化されたと理解している。しかしながら、実質的には日本芸術院会員が日展の顧問、常務理事を務めており、しかも、平成四年以降は顧問が日展理事会に出席し、意見を述べることが出来ることになっている。事実上、日展の審査は、対応する部所属の日本芸術院会員の極めて強い影響を受けており、日本芸術院会員の了承なしには行えない、との意見があるが、政府の見解を示されたい。

七 答弁書の六についてで、「構造的な問題」の意味するところが必ずしも明らかでないとの答弁があった。昭和五十年五月八日の参議院文教委員会で、政府委員(安達健二君)は、「芸術院会員の選考につきましてお話がございましたが、日本芸術院会員、定員が百二十名でございまして、この会員の補充をどういう形で行うかということはいろいろ御見解もあるかと思いますけれども、現在はフランスのアカデミー・フランセーズあるいはアカデミー・デ・ボザールというようなところと同じように選挙の方法をとっておるわけでございます。会員の選挙による方法をとっておるわけでございますが、その会員による選挙ということ以外になかなか適切な手続が見出しがたいということでそういう手続がとられておると思うのでございます。その場合に選挙でございますれば、当然自分の業績を知らしめたいというお気持ちが動くのは当然でございまして、そのためにたとえば展覧会をおやりになるとか、そういうようなことが行われることも十分あり得るわけでございます。そのほかにその金品等によってそういう事項を知らしめるというようなことがあるということは、これは非常によくないことでございまして、こういうことは選挙があってもそういうことがないようにできるだけの努力をしなければならない、こういうことは当然でございまして、したがいまして、そういう選考につきまして十分適正に行われますように文部省なり文化庁からもたびたび要請をいたしておるわけでございまして、私自身も芸術院の総会等にお伺いいたしまして、そういうことについてのお願いをいたしておるわけでございます。また、その芸術院等におかれましてもその選挙に際して事前運動というものが、いわゆる運動と思われるようなものが行われることがないように、そしてまた、仮にも金品の授受が行われることがないようにということは再三申し合わせをいたしておられまして、その点につきましては委員自体としても慎重に、しかもそういうことのないよう極力努力をされておるというように伺っておるわけでございます。そういうことでございますので、われわれといたしましては、この芸術院会員の選考についても不明朗な点がないように極力努力し、また、芸術院内部におきましての自粛を要望し続けてまいりたい、かように考えておるところでございます。」と答弁(以下「本答弁」という。)しており、現在でも日本芸術院及び日展において同様の慣行が続いていると言われている。

1 政府は、本答弁で指摘のあるような金品の授受(「金品等によってそういう事項を知らしめるというようなこと」等、指摘のある全ての金銭の授受を含む。以下同じ。)について、日本芸術院賞授賞、日本芸術院会員選考のみならず、日展の審査プロセスを含め、現在一切存在していないと理解しているか。
2 本答弁で指摘のあるような金品の授受が行われている場合、どのような法令に違反することとなるか。日展の審査員の選考、大臣賞、会員賞の選考及び公募の審査プロセスで行われている場合、日本芸術院賞選考で行われる場合、日本芸術院会員選考で行われる場合に分けて明らかにされたい。
3 本答弁で指摘のあるような金品の授受について、選考者の作品を実勢価格より著しく高額で被選考者が購入する行為や、選考者の展覧会のチケットを被選考者が大量に購入する行為は該当するか。日展の審査員の選考、大臣賞、会員賞の選考及び公募の審査プロセスで行われている場合、日本芸術院賞選考で行われる場合、日本芸術院会員選考で行われる場合に分けて明らかにされたい。
4 日本芸術院の会員は公務員であることから、会員の作品の売買については一般に開示すべきではないか。特に、日本芸術院賞及び日本芸術院恩賜賞の被選考者が日本芸術院会員の作品を購入する場合は売買相手と売買額を開示すべきではないか。さらに、日本芸術院の会員が日展等の各賞の選考者となっている場合も同様と考えるが、いかがか。開示が必要ないと考える場合は、その理由を示されたい。
5 一般論として、一般職の国家公務員(非常勤)である日本芸術院会員には、刑法第百九十七条、第百九十八条にある賄賂罪の適用はあるか。

八 日本芸術院賞選考、日本芸術院会員選考及び公益社団法人日展の審査等の在り方については、①一部の例外を除き、日本芸術院会員が日展の顧問(日展の役員は八十歳定年であるが、その後日本芸術院会員のみが顧問となる)及び常務理事を、また、日本芸術院賞受賞者が日展理事を務めていることから、事実上両組織が一体化しており、日本芸術院会員を頂点とするヒエラルキーが存在すること、②日本芸術院会員が終身制となっており、一旦着任してしまえば、当該分野においてはその権威が絶対化してしまうこと、③独立した内部通報制度が存在しないため、本来、是正されるべきと関係者が考えていることが表に出て来ないこと、といった点が問題となり、不透明かつ違法性が疑われる事例が生じているものと考える。

1 日本芸術院会員は、日展の顧問、常務理事になることを自粛するよう、日本芸術院に求めるべきではないか。
2 日本芸術院会員に、日本芸術院令改正による定年制を設けるべきと考えるが、いかがか。政令改正に至らなくとも、自粛という形で事実上の定年制を設けるよう、日本芸術院に求めるべきと考えるが、いかがか。
3 日本芸術院事務局や日展とは独立した内部通報制度、例えば、文化庁内にそのような窓口を設けるべきと考えるが、いかがか。なお、日本芸術院については、国家公務員倫理法及び職員の職務に係る倫理の保持のための通報制度の整備についての対象となると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

九 第七十回日本芸術院賞の美術部門の受賞者は誰か。決定されていないとすれば、その理由を明らかにされたい。

  右質問する。