質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一五七号

電力小売全面自由化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月十九日

福山 哲郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   電力小売全面自由化に関する質問主意書

 先日、電気事業法等の一部を改正する法律が成立したが、電力の小売自由化は消費者の生活に直結する重要な問題であり、電力システム改革は事業者のみの改革ではなく、エネルギー消費の主体である消費者を保護する観点を取り入れた改革であるべきと考える。今回の電気事業法の改正により、今後どのように発電事業の新規参入が促進され、小売自由化で消費者が真に選択しやすい環境が整えられるのかという観点から、以下質問する。

一 電力の小売全面自由化を、真に国民の利益となる制度改革とするためには、今後の詳細な制度設計において、幅広く国民、消費者の声を取り入れる必要があると考える。今回の電気事業法の改正のみならず、付随する政省令や施行規則の制定において、経済産業省、資源エネルギー庁のみで議論、決定することは、幅広い国民の声を取り入れることにならず、本来、制度改革によって目指している効果が著しく損なわれるおそれがある。制度改革の細部の検討において、公開の場で議論すること、あらかじめ国民、消費者の意見を反映する制度的担保を行うことについて、政府の見解を明らかにされたい。

二 今回の電気事業法改正において、衆議院経済産業委員会の附帯決議の第三項では、「送配電部門の中立性の確保」と「電気料金の全面自由化」を同時に実施することを原則とすることとされている。また、同附帯決議の第四項では、「規制料金の撤廃は需要家保護の観点からその時期を十分に見極めて行う」とされており、規制料金の撤廃すなわち電気料金の全面自由化に当たっては、国民、消費者の利益が最優先されると解される。また、送配電部門の中立性の確保は電気事業者間の競争を促進し、国民の利益を増進する制度改革である。電気料金自由化が実現しない限り、送配電部門の中立性の確保が進まない、という本末転倒は避けるべきものであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 電気通信事業の過去の制度改革においては、日本電信電話株式会社(NTT)と新規事業者の競争環境を整備するため、両者の関係は対等とせず非対称規制を行い、新規事業者を優遇することによって、電気通信事業の成長、国民利益の増進を実現してきた。電気事業においても、新規事業者と一般電気事業者が少なくとも公平に競争できる環境を整備し、決して両者の関係を対等にとどめないという手法も考えられるが、現時点での政府の見解を明らかにされたい。

四 電力の小売自由化後、小売電気事業者による創意工夫や事業者間の適切な競争を促進するためには、消費者が小売電気事業者を適切に選択し得る環境整備が不可欠である。家庭など一般消費者が小売電気事業者を選択する判断材料として、小売電気事業者は積極的に十分な情報開示と事後的な需要家保護を併せて行う必要があると考える。例えば、託送料金をはじめとする料金の内訳明細や、事業者の電源構成、二酸化炭素や放射性廃棄物の排出量の情報開示及び過度の勧誘等による需要家の被害防止策等が挙げられる。このような情報開示すべき内容やその様式については、事業者だけに任せず、最低限の開示項目や様式等に関する一定のガイドラインを政府が定めるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 一般送配電事業者は託送供給等約款により託送料金等を定め、経済産業大臣の認可を受けなければならないとされている。家庭を対象とする低圧需要家向けの託送料金は、資源エネルギー庁の試算によれば九円毎キロワットアワー程度と想定されており、これは小売料金全体に大きな比率を占めることとなる。経済産業大臣は一般送配電事業者に認可を与えるに当たり、少なくとも現在の料金規制と同様に、公聴会の開催、消費者庁との協議、託送料金の妥当性を公開の場で審議することを実施すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

六 現在、家庭用の規制料金には三段階料金制度が適用され、節電のインセンティブを高めることに役立っている。これは電力需給逼迫の緩和に役立つものであり、電力の安定供給を確保する重要な施策の一つである。また、化石燃料の多くを輸入に頼る我が国にとっては、節電を促進することはエネルギーの安全保障を高めるともに、国富の流出を最小限にとどめることにも役立つ施策である。同時に、電力を少量しか消費しない低所得者層に対する、福祉政策の一部を事実上担っているとも言える。電力の小売自由化により、仮に本制度が廃止された場合、右記の機能は著しく損なわれることとなる。本制度を規制料金である託送料金において制度化することなどにより、本制度を維持することも検討の余地があると考えるが、現時点における政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。