質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一三三号

自衛隊の海外出動を禁ずる参議院本会議決議と集団的自衛権行使の解釈変更に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月十三日

小西 洋之   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   自衛隊の海外出動を禁ずる参議院本会議決議と集団的自衛権行使の解釈変更に関する質問主意書

一 第二次安倍内閣において、非核三原則を見直す考えはあるか。また、二〇一四年六月十三日現在で外務省ホームページに掲載されている「非核三原則の経緯」との文書の中で、昭和四十六年十一月の衆議院決議、昭和五十一年四月及び五月の衆参両院外務委員会決議を指摘しつつ、「歴代内閣は、これら決議を尊重し、非核三原則を堅持している」との記述があるが、第二次安倍内閣においても、これら過去の国会における決議を尊重し、非核三原則を堅持する立場であると解してよいか。

二 一九五四年六月二日に参議院本会議において全会一致で可決された「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」とする「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」(以下「本決議」という。)について、これが、自衛隊の海外派兵たる海外における武力行使を禁止した趣旨であるとの理解を答弁した、あるいは、そうした理解の上に行われた政府答弁例を可能な限り示されたい。なお、その中に、安倍晋三官房長官による平成十七年十二月十二日に行われた答弁も含まれると解するか。

三 本決議はその決議以降も平成二十年代に至るまで数十回にわたり自衛隊法改正などの際に「自衛隊の海外における武力行使を禁止する」というその趣旨が参議院の国会審議の中で確認されてきたと理解するが、こうした国会と内閣の間で積み上げられた議論を有する本決議について、第二次安倍内閣として、議院内閣制の趣旨に基づき、どのような程度の尊重の認識でいるか。法規範にも匹敵するものとの認識があって当然と考えるが、そのような認識を有しない場合はその理由について具体的に示されたい。

四 本決議の発議者である鶴見祐輔議員による趣旨説明においては、「何ものが自衛戦争であり、何ものが侵略戦争であつたかということは、結局水掛論であつて、歴史上判明いたしません。故に我が国のごとき憲法を有する国におきましては、これを厳格に具体的に一定しておく必要が痛切であると思うのであります。自衛とは、我が国が不当に侵略された場合に行う正当防衛行為であつて、それは我が国土を守るという具体的な場合に限るべきものであります。幸い我が国は島国でありますから、国土の意味は、誠に明瞭であります。故に我が国の場合には、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮窟であつても、不便であつても、憲法第九条の存する限り、この制限は破つてはならないのであります。外国においては、(中略)今日の日本の戦闘力を(中略)利用せんとする向きも絶無であるとは申せないと思うのであります。さような場合に、(中略)憲法の明文が拡張解釈されることは、誠に危険なことであります。故にその危険を一掃する上からいつても、海外に出動せずということを、国民の総意として表明しておくことは、日本国民を守り、日本の民主主義を守るゆえんであると思うのであります。」とされているところ、「憲法の明文の拡張解釈の危険を一掃する」とする本決議を前にして、さらに、決議以降も参議院において政府との間で積み上げられた本決議の趣旨の確認等の議論があるにもかかわらず、第二次安倍内閣として、参議院において憲法第九条の解釈の変更案とその政策的必要性及び妥当性等に係る十分な国会審議を受けることなく、本決議が意味するところの自衛隊の海外出動たる集団的自衛権の行使に係る閣議決定を行うことが議院内閣制の趣旨において許されると考えているのか。

五 前記四に対する答弁の前提として、本趣旨説明の内容を踏まえたときに、集団的自衛権の行使について本決議が禁止するところの「海外への出動」とはならないものがあるか否か、ある場合はどのようなものが考えられるか示されたい。その際、文理として、決議は領土・領海・領空以外を公海も含め「海外」と理解していると解されるが、異論ある場合にはその根拠を示されたい。

六 仮に、本決議があるにもかかわらず、閣議決定のみで集団的自衛権の行使に係る憲法第九条の解釈変更を強行する場合は、第二次安倍内閣において参議院の意思及び存在を否定し、ひいては、主権者である国民の意思及び存在を否定するものであると解してよいか。

七 仮に、本決議があるにもかかわらず、閣議決定のみで集団的自衛権の行使に係る憲法第九条の解釈変更を強行する場合は、第二次安倍内閣においては、非核三原則について、仮にこれをある内閣が見直そうとする際には、国会において事前に唯一の被爆国としての我が国の恒久平和主義の在り方等を含め十分な審議を行うことなく内閣の判断のみでその見直しができるものと考えているのか。

八 前記三から七については、太田国土交通大臣に別途それぞれに関する見解を問い、その上で、第二次安倍内閣における集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の変更に係る閣議決定への署名拒否の意思の有無及び署名拒否の意思を有さない場合はその具体的理由を明らかにされたい。

  右質問する。