質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第九一号

犬猫殺処分に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年五月一日

福島 みずほ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   犬猫殺処分に関する質問主意書

 所有者や拾得者等から持ち込まれた犬猫は、合計で年間約二十一万匹が全国の自治体に引き取られ、そのうち約十六万匹が殺処分されていると環境省が報告している。この殺処分される犬猫を少しでも削減しようと、各自治体が取り組んでいるが、その対応策及び成果は自治体ごとに異なっているのが現状である。そこで、犬猫の殺処分問題を、自治体に任せるだけではなく、国が積極的に取り組むべきではないかという視点から、以下質問する。

一 犬猫殺処分ゼロを目指すために、その全体数の約七十五パーセントを占める猫の殺処分数ゼロを目指すことも大変重要である。平成二十五年九月に改正された動物の愛護及び管理に関する法律(以下「改正動物愛護法」という。)が施行されたが、平成二十四年八月の衆議院環境委員会及び参議院環境委員会の附帯決議(以下「衆議院及び参議院の附帯決議」という。)第十一項では、「飼い主のいない猫の不妊去勢手術の促進、(中略)を着実に実施するため、地方自治体に対する財政面での支援を拡充すること」とされている。飼い主のいない猫に対する避妊や去勢の助成を自治体や一部のボランティアに任せるのではなく、国が自治体を支援するべきと考えるが、具体的にどのような支援策を立案、または実施しているのか。

二 衆議院及び参議院の附帯決議の第八項では「地域猫対策は、猫に係る苦情件数の低減及び猫の引取り頭数の減少に効果があることに鑑み、官民挙げて一層の推進を図ること」とされている。そこで、所有者のいない猫に不妊去勢手術を施し、地域住民の理解の下に餌や糞の管理をする地域猫活動が行われているが、猫の引き取り数削減や地域の環境トラブルの解消に効果があると確認できる事例があれば、その内容を示されたい。また、地域猫活動で成果を挙げている自治体の事例を集めて成功事例集として公表するなどの啓発活動を政府は行っているのか。行っている場合には、どのような方法で公表しているか示されたい。

三 改正動物愛護法第三十五条第四項で、引き取った犬猫について「殺処分がなくなることを目指して、(中略)譲り渡すよう努めるものとする」ことが明記された。この主旨を実現する場合、各自治体の動物愛護センターをこれまでの殺処分施設から、新たな飼い主を見つけるための譲渡施設へと転換することが必要であると考えるが、政府の具体的な対応策を示されたい。

四 改正動物愛護法第三十五条第四項により各自治体で、譲渡数を増やす取組が続々と行われている。佐賀県動物管理センターでは、月に一回、日曜日に譲渡会を開催、熊本市動物愛護センターで譲渡専用施設が完成、岐阜県動物愛護センターで譲渡専用施設が開所という動きがある。このような、譲渡専用施設の建設の動きを全国各地に広めるために、国は助成金を支出しているのか。していない場合には、今後支出する予定、計画はあるのか。
 加えて、各自治体の動物愛護センターの建屋の増改築等を進めるために国は助成金を支出すべきと考えるが、いかがか。

五 「動物の殺処分方法に関する指針」(平成十九年十一月十二日環境省告示第一〇五号)では、殺処分方法は、動物に苦痛を与えない方法を用いる旨が記載されている。しかし、現在広く実施されている二酸化炭素を使用した処分方法では瞬時に意識を失うわけではなく、動物個体によっては、意識を失うまで数分から数十分かかると言われており、その間、動物は苦しむことになる。したがって、安楽死とは言えないのではないか。この二酸化炭素を使用した殺処分方法について、安楽死との認識を持っているのか、政府の見解を明らかにされたい。

六 現在、全国の動物愛護センターにおける殺処分方法には、二酸化炭素による窒息死、その他の殺処分方法も含めて、どのような方法がとられているのか、政府は処分方法の実態を把握しているのか。把握している場合には、政府の承知するところを示されたい。把握していない場合には、今後実態把握に努めるべきと考えるが、いかがか。

七 改正動物愛護法第二十二条の四で、犬猫販売業者に対して、売れ残った犬猫について、「終生飼養の確保」が義務付けられた。さらに、同法第十条第三項において、犬猫販売業者は「犬猫等健康安全計画」の提出が義務付けられ、その中で、売れ残った犬猫の取扱について記載しなければならないことになった。右規定が正しく実践されているか否か、犬猫販売業者で売れ残った犬猫がどのような状態であるのか、実態調査をする必要があると考える。政府又は自治体は、実態調査をしているのか。実態調査をしている場合には、その結果を示されたい。実態調査をしていない場合には、国が率先して行うべきと考えるが、いかがか。

八 改正動物愛護法第三十五条第一項で定められた、終生飼養の義務に反するような飼い主からの犬猫の持込みの拒絶や同条第四項の殺処分がなくなることを目指す努力義務の実践により、国立市では犬猫殺処分ゼロを実現し、滋賀県では動物管理センターの収容数が過去最少となり、神奈川県動物保護センターでは犬の殺処分ゼロを達成し、網走保健所では猫の殺処分ゼロを達成するなど各自治体で実績をあげている。このような殺処分ゼロに向け努力している自治体をモデルケースとして、広く全国の自治体へ同様の取組を広げるべきと考えるが、政府はモデルケースの紹介活動に取り組んでいるのか。

九 改正動物愛護法第四十一条の四で、「国は、(中略)地方公共団体の部局と都道府県警察の連携の強化(中略)に関し、(中略)必要な施策を講ずるよう努めるものとする」という規定が設けられた。平成二十四年度に同法で起訴されたのは全国で僅か十六件しかない。同法で起訴されたケースについて平成二十五年度の実績を示されたい。また、なぜこのように起訴件数が少ないのか、現状を適正と考えているのか、政府の見解を明らかにされたい。

十 改正動物愛護法の罰則規定が適正に適用され、さらには、動物殺傷罪、動物虐待罪、動物遺棄罪が適切に運用されるよう施策を講ずるべきであると考えるが、政府はどのような方策を実施しているのか。具体的には、現場での告発などに警察がどのように対応していくかが重要になると考えるが、いかがか。

十一 動物がその命を終えるまでしっかり飼育するという飼い主の義務があることを啓発していく活動について、政府はどのように行っているのか。また、その義務を怠った場合には罰則があるのだということを広く普及させる努力を政府は行っているのか。加えて、飼い主の義務の啓発及び当該義務を怠った場合の罰則の存在の周知に関して、今後の政府の考え方と対応策を具体的に示されたい。

十二 多くの動物を飼いすぎて、世話をしきれず、その結果、飼育放棄して多くの動物が自治体に収容されるという、多頭飼育の崩壊事件が毎年各地で起きている。最近でも、浜松市での猫九十四匹を残したまま飼い主が転居した事件や栃木県で犬六十匹を飼いきれず、県に引取りを求めた事件が起きている。こういった、多頭飼育の崩壊に対する対策について、政府の見解を明らかにされたい。改正動物愛護法第二十五条第三項で、飼育状態が動物虐待といえるような場合は、自治体が飼い主に対して改善命令を出すことができるようになったが、そのような規定が全く機能していないのではないか。
 また、こういった沢山の動物を飼う人たちは、米国では「アニマルホーダー」と言われ、心のケアが必要とされている。日本でもこのような多頭飼育をする者に対し、専門家による心のケアが必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。