質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第五七号

商品先物取引における「不招請勧誘」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年四月二日

前川 清成   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   商品先物取引における「不招請勧誘」に関する質問主意書

 商品先物取引においては、突然の電話で大きく儲かることのみを殊更に強調して、強引に取引に引き込み、一たび取引に引き込んだ後は、顧客に「客殺し」とも呼ばれる悪質な勧誘を用いて、甚大かつ悲惨な被害を与え続けてきたことは、既に国民生活センター等、国の機関においても再三警告、報告されてきたところである。
 それ故に、参議院財政金融委員会における平成十八年六月六日の附帯決議も、商品先物取引について「今後のトラブルが解消していかない場合には、不招請勧誘の禁止の導入について検討すること」と決議する等国会の意思も示されたので、平成二十一年の商品取引所法改正及び施行令によって、継続的な取引関係を持たない者に対しては、原則として電話勧誘、訪問勧誘を禁止する「不招請勧誘」禁止が導入され(商品先物取引法第二百十四条第九号、同法施行令第三十条)、これによって被害が大幅に減少するに至った(国民生活センターのPIO-NET情報によると、商品先物取引に関する相談件数は、不招請勧誘禁止前の平成二十二年は三千五百九十四件であったが、禁止後の平成二十三年には千五百十件と激減している)。やはり先物取引被害から国民を守るためには不招請勧誘禁止が有効であった。
 ところが、一方において証券・金融、商品先物取引を横断的に一括して取り扱う「総合取引所」構想のもと、平成二十四年、金融商品取引法が改正され、商品先物取引に関しても同法によって規制されることになり(改正法第二条第二十四項第三号の二)、他方、金融商品取引法においては「不招請勧誘」が禁止されていないため(同法第三十八条第四号、同法施行令第十六条の四)、総合取引所がスタートした後は先物取引に関して「不招請勧誘禁止」が解除されてしまうことになる。
 この点につき、昨年六月十九日、衆議院経済産業委員会における総合取引所に関する議論の中で、寺田金融担当副大臣(当時)は、「商品先物取引についても、金融と同様に、不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」と答弁している。
 しかし、商品先物取引においては、平成二十四年度でもなお二百十三件もの相談(国内取引所取引のみ)が国民生活センター等に寄せられる等、悪質な被害が多数報告されている。そもそも商品先物取引と、その他金融商品取引とは、被害の実情や規制の歴史が全く異なり、取引所が統合されるだけをもって、規制も形式的に統一してしまっては、せっかく減少した商品先物取引被害がまたぞろ復活し、かつて社会問題にまでなった、商品先物取引による一家離散や自殺等、悲惨な被害が増大する危険が極めて大きい。
 ついては、政府に対して次のとおり質問する。

一 商品先物取引の被害の実態について、どのような調査に基づいて、どのように認識しているか。

二 昨今の商品先物取引における取引量減少の原因は何か。

三 政府内部において、商品先物取引被害に関する情報は共有されていないのか。
 平成二十六年三月二十七日の参議院内閣委員会において、不招請勧誘が禁止された前後における被害件数の推移を質問したところ、岡田金融担当副大臣は「金融庁としては把握しておりません。」と答弁している。しかしながら、PIO-NET情報による相談件数の激減は前記のとおりであるから、消費者庁から金融庁及び経済産業省、農林水産省へ報告するなどして、政府として情報を共有するべきではないか。

四 平成二十五年六月十九日の寺田金融担当副大臣(当時)の前述の答弁は政府の方針か。

五 「商取ニュース」平成二十六年三月二十八日の記事によれば、日本商品先物振興協会の同月十九日の総会において、同会の岡地和道会長は、不招請勧誘に関して「この緩和に関しては当協会も様々な関係方面の方々にご理解を得るべく積極的に活動してきました。(中略)そういったことを通じて、何とか一定の理解を得て不招請勧誘の一部見直しが検討されることとなりまして、近く、何らかの方向性が示されるのではないかと思っております」と述べている。
 右、岡地氏が言うところの、
①様々な関係方面の方々とは誰か。
 政府へ働きかけがあったのか。
②「一定の理解」とは何か。
 寺田金融担当副大臣(当時)ら政府関係者は「理解」したのか。
③「近く何らかの方向性」とは何か。

六 衆議院消費者問題に関する特別委員会における平成二十一年四月十六日の附帯決議は「内閣総理大臣、関係行政機関の長等は、消費者委員会からの建議又は勧告に対して、迅速かつ誠実に対応すること。」と述べているところ、消費者委員会は、平成二十五年十一月十二日付けの商品先物取引における不招請勧誘禁止規制に関する意見において、「商品先物取引における不招請勧誘禁止規制を緩和すべきではない」と述べている。
 右消費者委員会の意見に対して、政府はどのように対処するか。

七 不招請勧誘が禁止された結果、取引量が減少して、手数料収入の減少などを被ったのは誰か。
 逆に、不招請勧誘が禁止された結果、商品先物取引による被害(損失)を免れたのは誰か。
 したがって、不招請勧誘の禁止を「解除」してしまうことは、誰の利益のために、誰を犠牲にすることになるのか。

  右質問する。