質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第五四号

「石綿による健康被害の救済に関する法律第三十七条第一項の一般拠出金率の改定案」に関する第三回質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年三月二十七日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   「石綿による健康被害の救済に関する法律第三十七条第一項の一般拠出金率の改定案」に関する第三回質問主意書

 私が二〇一四年三月十四日に提出した「「石綿による健康被害の救済に関する法律第三十七条第一項の一般拠出金率の改定案」に関する再質問主意書」(第百八十六回国会質問第四七号。以下「質問主意書」という。)に対する同月二十五日付けの答弁書(内閣参質一八六第四七号。以下「答弁書」という。)が提出された。答弁書に関連して、以下質問する。

一 質問主意書の質問一に対して、答弁書では中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会の審議の中では、「事業者の負担を引き下げることについて委員から具体的な提案等はなかった」としている。制度全体の枠組みを議論する場で、事務局からも具体的な提案がなされなかった理由を明らかにされたい。

二 質問主意書の質問二に対する答弁では、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号。以下「石綿救済法」という。)第七十九条の二第一項の趣旨が、あたかも「特別事業主の同意」が前提として定められている条文とも解釈されかねないものであったが、厚生労働省が同条項に基づいて各年度で実施している労災認定等事業場の公開に当たっては、事業場に対して公表する旨を事前に通知はするが、公表を拒む意見があっても公表がなされる。本答弁が、既に政府が実施している施策の趣旨と食い違っている理由を労災認定等事業場の公開の件と比較して具体的に示されたい。

三 質問主意書の質問三に対する答弁は、政府が以前にも示した発言部分を再び示して、その発言と同様に考えているという、答弁として成立していないものであった。繰り返すが、答弁書で示された「救済法の対象に入ってくる職業以外のばく露の方については、職業ばく露の方よりも肺がんの割合が、具体的な値は不明ながら、低いと考えられるので、現在の実績が直ちに低いと言えるかどうかというところはなかなか難しい」という当時の泉陽子石綿健康被害対策室長の発言は、「救済法の対象に入ってくる職業以外のばく露の方については、職業ばく露の方よりも肺がんの割合が、具体的な値は不明ながら、低いと考えられるので、現在の実績が直ちに低いと言えるかどうかというところはなかなか難しいと思っております。ただ一つ事実として明らかなのは、救済法の肺がんの申請数が少ないということであります」という文脈から都合よく切り取ったものである。この点については、私が二〇一四年二月十三日に提出した「「石綿による健康被害の救済に関する法律第三十七条第一項の一般拠出金率の改定案」に関する質問主意書」(第百八十六回国会質問第一七号)でも指摘し、具体的に申請数が増えていないことを数値で明らかにした。それに対する同月二十一日付けの答弁書(内閣参質一八六第一七号。以下「答弁書第一七号」という。)では何らの反論もなく、「お尋ねの理由は不明である」としていた。本答弁は同室長の発言趣旨と立法府の尊厳を愚弄していると受け止めざるを得ない。以上を踏まえて、質問主意書の質問三に対して改めて誠実に答弁されたい。同様の答弁を繰り返した場合、本件については政府として問題と捉えていないという認識をせざるを得ないが、それでよいのか、政府の見解を明らかにされたい。

四 質問主意書の質問四に対する答弁でも、答弁書第一七号と同じであるとするが、同質問の際に特別遺族弔慰金及び特別葬祭料の支給の請求は年度の経過によっても微増しかしていないと、具体的な数値を用いて示した。以上を踏まえて、質問主意書の質問四に対して改めて誠実に答弁されたい。なお、同様の答弁を繰り返した場合、政府として、各年の中皮腫死亡者数に対しての認定割合が落ち込んでいることは問題ないと捉えており、「すき間のない救済」を掲げる石綿救済法の理念とも齟齬をきたしていないという認識であると受け止めざるを得ないが、それでよいのか、政府の見解を明らかにされたい。

五 質問主意書の質問五に対して、答弁書では「現時点では実施されていない」とあるが、質問主意書で示した報告書がまとめられてから一年近くが経過している。これまでに何らの実施もされていない理由を示されたい。また、今後、本件に対して迅速に対応するのか否かを併せて明らかにされたい。

六 公害健康被害補償不服審査会(以下「審査会」という。)が二〇一三年十月二十五日付けで行った石綿救済法に基づく裁決において、原処分が取り消された事案では、審査会から認定に当たっての判定で用いる「指針を逸脱、背反した極めて不適切なもので、典型的な「石綿肺」の事実を見逃した。よって、原処分の取消は免れない」、同患者の「父についても当審査会は、石綿肺を否認した原処分を、処分庁が病態の真摯な検討を怠り、明らかな「石綿肺」を看過したとして取消す裁決(同二十五年三月二十九日付け)」があったと厳しく指摘している。石綿救済法上で認定対象となっている全ての疾病において、原処分が取り消された事例を全て示して、過去の運用から繰り返しこのような事案が発生している理由を明らかにされたい。

  右質問する。