質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一一号

医薬品のインターネット販売に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年二月七日

蓮舫   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   医薬品のインターネット販売に関する質問主意書

 平成二十五年十二月五日に薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)が成立した。右の点を踏まえ、以下、要指導医薬品(改正法施行後の薬事法(以下「改正薬事法」という。)第四条第五項第四号)のインターネット販売のほか、処方箋医薬品のインターネット調剤について質問するが、処方箋医薬品のインターネット調剤及び配送とは、薬局としての許可を取得している者が、患者から処方箋原本を郵送、持参又はFAXにより受領し、薬剤師がインターネット、メール、電話、FAX等を用いて情報提供及び服薬指導を行ったうえで、薬剤師が薬剤を調剤し、患者に配送し当該処方箋医薬品と処方箋とを交換する方法(以下「ネット調剤」という。)を指すものとする。

一 処方箋医薬品の郵送について

 昨年十一月十八日のRISFAXの記事に関連して、質問をする。
1 日本調剤が、①コールセンターに電話して利用申込書を入手、②受診し医師から処方箋を受け取る、③処方箋原本と問診票医薬品送付依頼書に必要事項を記入したものを郵送、④日本郵便のレターパックやゆうパックで医薬品が届くという手順で、医療用医薬品を郵送で患者に直接届けるサービスの準備を整えていたところ、厚生労働省がこれを中止するよう指導したとの報道があるが、それは事実か。事実である場合、そのように指導した理由及びその根拠法令を示されたい。根拠法令が省令である場合には、授権した法律の規定を示されたい。中止をさせる根拠法令がない場合には、根拠法令がないにもかかわらず中止の指導をすることができる理由につき、政府の見解を示されたい。
 現在多くの調剤薬局で、患者からの要望があれば、処方箋を確認したうえで調剤された薬剤を郵送又は直接配達しているケースがあると聴いているが、厚生労働省はそのようなケースを把握しているか。把握している場合には、当該郵送に起因して副作用が発生した事例の有無及び事例がある場合には、どの程度の副作用が発生しているのか、示されたい。また、副作用発生割合は、薬剤を郵送又は直接配達しているケース全体のうち、どの程度か明らかにされたい。
2 前記一の1のケースを把握していない場合には、その理由を示されたい。
3 前記一の1に関連して、政府の把握の有無にかかわらず、薬剤を郵送又は直接配達するケースは改正法施行前の薬事法に違反することになるのか、政府の見解を明らかにされたい。違反に当たる場合には、根拠規定を示されたい。また、改正法が施行された後は、当該ケースは違法になるのか。違法にならない場合には、その根拠は何か示されたい。

二 対面原則と抵触する通知に基づく措置について

 平成十年十二月二十五日付け各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医薬安全局企画課長通知「ファクシミリを利用した処方せん受入体制と患家での薬剤の受渡しについて」(医薬企第九〇号)によれば、寝たきり患者等の利便の向上を図る観点から、患者等が薬局を来訪することが困難な場合等において、従前対面で情報提供を行った同一の薬剤を調剤する場合等、一定の条件を満たした場合には、看護者から薬局に対してファクシミリで電送された処方内容に基づき薬剤師以外の者が患家を訪問し薬剤の受渡し等を行うことが認められている。なおこの際、薬剤師は患者等に対し電話等により必要な情報提供を適切に行い、患者の質問等に応じることが求められる。
1 現行法においては法律上の特例がないはずであるが、例外を認めるとすれば、その根拠は何か。
2 これまで実施されてきた薬剤師以外の者による薬剤の受渡しの件数はどれほどか、明らかにされたい。
3 前記二の2の件数を調査していないとすれば、その理由を明らかにされたい。
4 改正法が施行された後は、このような運用も許されなくなると理解してよいか。許される場合には、その根拠規定を明らかにされたい。
5 これまで実施されてきた薬剤師以外の者による薬剤の受渡しに起因して発現した副作用は報告されているか。
6 このような取扱いによる安全性への懸念はないと理解してよいか。理解してよい場合はその根拠如何。安全性への懸念がある場合には、具体的な懸念の内容及び根拠、安全性への懸念に対する対応策について、政府の見解を具体的に明らかにされたい。
7 厚生労働省は対面でなければ安全性を確保できないとの主張をしていたにもかかわらず、対面ではない例外を認めることができたのか。従前の主張との整合性について、政府の見解を明らかにされたい。
8 前記二の5で発現した副作用は、通常の処方箋医薬品販売の場合と比較して有意かつ実証的な差があるか、示されたい。
9 前記二の8において有意かつ実証的な差がない場合、このような特例に副作用の問題はないと考えられるが、一般的に認めずにこれを全て否定する薬事法改正を行った理由は何か。

三 平成二十三年三月二十三日付け事務連絡「情報通信機器を用いた診療(遠隔診療)等に係る取扱いについて」(厚生労働省医政局医事課、厚生労働省医薬食品局総務課)によると、東日本大震災により患者が被災地外の薬局における調剤を希望する場合には、ファクシミリ等で送付された処方内容に基づき調剤すること及び客観的にやむを得ない状況であると認められる場合に、調剤した薬剤を郵送することが認められ、薬剤師が電話等により必要な情報提供を適切に行うものとされた。

1 このような例外的取扱いをする法的根拠を示されたい。
2 緊急事態だからとの理由で例外的取扱いをする場合には、一般用医薬品でも、少なくとも被災地では郵便等による販売を認めるべきであったと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
3 本事務連絡に基づき電話等による情報提供にとどまったことに起因して発現した副作用は報告されているか。また、当該郵送に起因して発現した副作用は報告されているか。
4 本取扱いにより安全性への懸念はないと理解してよいか。理解してよい場合はその根拠如何。安全性への懸念がある場合には、具体的な懸念の内容及び根拠、安全性への懸念に対する対応策について、政府の見解を具体的に明らかにされたい。
5 前記三の3で発現した副作用は、通常の処方箋医薬品販売の場合と比較して有意かつ実証的な差があるか、示されたい。
6 前記三の5において有意かつ実証的な差がない場合、例外的取扱いで問題がないと考えられるが、改正法において、一般的に認めずこれを否定している理由を明らかにされたい。

四 要指導医薬品のネット販売を禁止する改正法の立案過程について

 厚生労働省に設置された「スイッチ直後品目等の検討・検証に関する専門家会合」(以下「専門家会合」という。)の議事録及び報告書において、スイッチ直後品目等は「丁寧かつ慎重な販売が求められる」とされているにとどまる。
1 平成二十五年十一月二十日の衆議院内閣委員会において玉木委員が提出した資料によれば、前述の報告書のほかに、非公式に「五感を用いて判断する必要がある」との座長のコメント(以下「座長コメント」という。)が発表されたとのことであるが、これは要指導医薬品全てに対して五感を用いて判断する必要があるとの意味か、それとも一部の品目に対して必要であるという意味か、政府の見解を明らかにされたい。
2 前記四の1に関して、五感を用いた判断の必要性の有無は公開の専門家会合の中で議論されたか。議論されていない場合には、このように重要なことが議論されずにコメントされた理由を明らかにされたい。
3 専門家会合の目的に、対面とネットの比較及び対面義務付けの是非は含まれていたのか。かかる目的が当初から含まれていたか、又は検討中に追加される可能性があったのであれば、なぜネット販売の実情を理解したリスクコミュニケーションの専門家を委員に加えなかったのか。
4 専門家会合に、憲法学者は含まれていたか。含まれていない場合には、ネット販売を主たる事業として行ってきた事業者の憲法上の権利である営業の自由を制限する可能性があったにもかかわらず、なぜ憲法学者を委員に加えなかったのか。
5 「五感を用いて判断する必要がある」との見解は報告書には記載されていないが、なぜ報告書には記載しなかったのか。報告書を提出した後に、このようなコメントを発表するとは、専門家会合で十分に議論しきれていないからか、あるいは専門家会合では反対されることが予想されたからではないか。
 また、このような状況で議論をし尽くしたといえるのか、政府の見解を明らかにされたい。
6 座長コメントに記載されていたとされる、二十八品目に関する対面の義務付けについての提言は専門家会合の検討範囲に含まれていたか、明らかにされたい。
7 座長コメントが発表されるまでの経緯について、時系列を追って示されたい。特に座長コメントの発案者、発案した日時及び理由、座長コメントの作成された日時、作成者、発表日時を示されたい。また、専門家全員の同意の有無、同意があるとすれば、それを確認した方法及び日時を示されたい。
8 五感を用いて判断する必要があるというのは政府の公式見解か。公式見解である場合には、具体的にどのような科学的根拠によって五感を用いて判断する必要があると判断したのか。また、通常の薬剤師が五感によって感知できるのはどのような状態であるのか。加えて、どの感覚によって何を把握するのか示されたい。

五 要指導医薬品のネット販売を禁止する理由について

 改正薬事法第三十六条の四第一項は、要指導医薬品について、「対面により」、「書面を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導」をしなければならないと規定している。
1 要指導医薬品の販売について、対面に限定する理由はどこにあるのか。対面では危険ではないがネット調剤では危険であるとするならば、その実証的理由を明らかにされたい。
2 「必要な情報を提供」及び「必要な薬学的知見に基づく指導」とあるが、薬剤師が具体的にどのような業務を行うのか、個別具体的かつ網羅的に示されたい。また、それらの実施に当たり、対面で行うことに限定し、インターネットの方法では認めない科学的根拠を明らかにされたい。
3 要指導医薬品について、五感を用いて判断する必要がある理由は具体的に何か。例えば、膣カンジダ用薬についてはどのような理由でどのような五感を用いて判断する必要があるのか。また、解熱鎮痛剤ではどのような理由でどのような五感を用いて判断する必要があるのか。要指導医薬品の対象候補とされていた二十八品目について個別かつ網羅的に示されたい。
4 「五感」の使用について、視覚、触覚、味覚、嗅覚、触覚ごとに、どのように使用するのか個別具体的かつ網羅的に示されたい。医薬品ごとに違うので示せないという場合には、要指導医薬品の対象候補とされていた二十八品目個々に照らして示されたい。また、そのような五感の使用は、触覚であれば患部に触れるといったことも発生するが、薬剤師に認められていない医療行為に該当することはないのか。
5 座長コメントにおいて「五感を用いて判断」とされているのは、使用者の状態であると推認するが、購入する人が使用者かどうかは実際にどのように確認するのか。自己申告か、それ以外の方法であれば、それはどのような確認方法か。自己申告で足りるとする場合には、使用者の状態の確認が確実にでき、安全性を確保できるとする科学的根拠を明らかにされたい。例えば、鼻水が出ておらず、くしゃみもしていない者が店頭でアレルギー用薬の購入を希望する場合に、その者が使用者本人かどうかをどのように確実に確認するのか。鼻水が出るなどの症状が現れていない限り本当に使用者かどうか確認ができないので、購入できないのか。

六 処方箋医薬品のネット調剤を禁止する改正法の立案過程について

1 これまで厚生労働省において、処方箋医薬品のネット調剤に起因して副作用リスクが高まるかどうかに関して検討会等を行ったことがあるか。行ったことがある場合、いつ、どのような参加者によって、どの程度の時間をかけ、どのような観点で検討したのか。また、その議事録を示されたい。
 その検討会等において、ネット調剤に起因して副作用リスクが高まるという検討結果が示されていた場合、かかる副作用リスクを低減するために、ネット調剤の一律禁止以外の方法がないか検討したか。検討した場合には、その具体的内容を明らかにされたい。
2 専門家会合の議事録等において、当該会合の目的ではなかった医療用医薬品について、「医療従事者の直接的な関与の下で、スイッチ直後品目や劇薬指定品目以上に慎重に取り扱うことが求められる」と申し添えられているにとどまる。議事録等においても、また座長コメントにおいてすら記載されていない処方箋医薬品に関する対面の義務付けは、この専門家会合の検討範囲に含まれていたか。

七 処方箋医薬品のネット調剤を禁止する理由について

 改正薬事法第九条の二第一項は、処方箋医薬品について、「対面により」、「書面を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導」をしなければならないと規定する。
1 処方箋医薬品の調剤について、対面に限定する理由はどこにあるのか。対面では危険ではないがネット調剤では危険であるとするならば、その実証的理由を明らかにされたい。
2 「必要な情報提供」及び「必要な薬学的知見に基づく指導」とあるが、薬剤師が具体的にどのような業務を行うのか、個別具体的かつ網羅的に示されたい。また、それらの実施に当たり、対面で行うことに限定し、インターネットの方法では認めない科学的根拠を明らかにされたい。
3 処方箋医薬品は、医師又は歯科医師の診断に基づき交付される処方箋により調剤するものであるが、医師又は歯科医師が五感を活用して診療した上で、さらに薬剤師が五感を活用しないと防ぐことができないリスクはあるか。ある場合には、具体的に示されたい。
 また、そのリスクは五感を活用する以外の方法では防ぐことができないのか、できない場合にはその理由と併せて示されたい。どの感覚をどのように使うのか、全て(視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚)について個別具体的かつ網羅的に示されたい。
4 五感の活用の有無以外に、処方箋医薬品の情報提供及び薬学的知見に基づく指導を対面に限定する根拠はあるか。ある場合には、その根拠はどのように導き出されたか、示されたい。

八 政府は、処方箋医薬品の副作用の発生原因を調査しているか。調査している場合、発生原因にはどのようなものがあるか示されたい。
 また、処方箋医薬品を交付する際に行われる薬剤師による服薬指導・情報提供が十分又は適切ではなかったことに起因して発生した副作用は報告されているか。報告されている場合、具体的にはどのような点に問題があったのか示されたい。それらの問題はインターネットによる情報提供では防げないのか。防げないとすればその理由を示されたい。

  右質問する。