質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第七号

アルツハイマー病研究の国家プロジェクトに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年一月三十一日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   アルツハイマー病研究の国家プロジェクトに関する質問主意書

 アルツハイマー病の早期発見を目指す国家プロジェクト「J-ADNI(アドニ)」(以下「本件プロジェクト」という。)で、臨床研究のデータが多数改ざんされていたとの疑惑が生じている。本件プロジェクトには、これまで経済産業省、厚生労働省、文部科学省から計二十四億円の国費が投じられたとの報道があるが、早急に調査結果に基づく国としての認識を明確にし、研究の一部又は全面的な中止、あるいは問題を解決して続行する意義がある場合にはその旨を明らかにする必要があるとの観点から、以下質問する。

一 本件プロジェクトには、これまでどこの省庁からそれぞれいくらの国費が投じられてきたのか、年度別の支出を明らかにされたい。また、年度別の機械装置費、人件費、消耗品費、旅費、外注費など項目別の経費概要を明らかにされたい。加えて、省庁ごとの項目別経費概要についても示されたい。

二 本件プロジェクトに出資している製薬会社の名称、出資形態(寄附、共同研究、委託研究の別、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施するプロジェクトへの参画形態など)の概要を明らかにされたい。

三 本件プロジェクトに関連したデータの改ざんを告発した内容を含む情報が、昨年十一月にEメールで届いた際、内部告発には当たらないと判断した理由の一つとして、公表されて査読論文になっていない段階ならば、データをいじっても改ざんや捏造ではないと考えたのか、政府の見解を明らかにされたい。

四 報道によると、「論理的記憶Ⅱ」という心理テストにおいて、実際には十分後に長文を思い出してもらう聞き取りを行ったにもかかわらず、三十分後に聞き取りを行ったことにしていたとのことだが、事実か。

五 前記四の心理テストにおいて、「記憶に障害あり」と「記憶以外に障害あり」の判定を書き換えさせるなど二百件以上の改ざんと推定される訂正を出させているとの報道があるが、事実か。

六 外傷性記憶障害や痴呆症状を伴う筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者も被験者としていたとのことだが、事実か。

七 データセンターが初診後二ヶ月以上経過して初めて、仮登録の内容をチェックしていたとのことだが、事実か。事実である場合には、本来被験者になることのない人が不必要な検査を受けていたことになり、検査費用が税金の無駄遣いとなるだけでなく、社会に何の貢献もできない検査により被曝し健康被害が出るリスクを放置していたことになるのではないかと考えるが、いかがか。

八 臨床認知症評価法(CDR)検査の監督者に医師資格を持たない者が就いているのは、不適切であると考えるが、いかがか。

九 臨床医学研究である本件プロジェクトの責任者には、当然十分な臨床経験が必要と考えるが、十分な経験がある場合には、その臨床経験について明らかにされたい。

十 本件プロジェクトの責任者である朝田隆筑波大学教授は、この分野の大規模共同研究は日本初であると発言したとのことだが、事実か。J-COSMICやSEAD-Jは同じ分野の大規模共同研究とは言えないとする理由があれば、示されたい。

十一 データを改ざんしたとの疑いを持たれている東京大学に調査を任せるのではなく、納税者への責任として厚生労働省自ら率先して速やかに調査すべきと考えるが、いかがか。

十二 本件プロジェクトは二〇〇七年に開始されたと報道されているが、「臨床研究に関する倫理指針」(以下「倫理指針」という。)の二〇〇八年改正の前後に、倫理審査が行われた本件プロジェクトの実施施設はそれぞれ何施設あるか、示されたい。

十三 倫理指針改正の前後で、施設に対する倫理審査の方法や内容は異なるのか、明らかにされたい。

十四 前記十二に関連して、倫理指針改正後に倫理審査が行われた施設については厚生労働省の調査権限があるものと解するが、いかがか。また、厚生労働省は倫理指針に基づく調査を行うべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

十五 「高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(中間とりまとめ)」においては、主な臨床研究実施機関による自主点検の結果が示されているが、今回の疑惑はこの自主点検では見つけることができなかったということか。この点につき、点検結果と照合した上で、厚生労働省の見解を明らかにされたい。

十六 安倍政権は、成長戦略の目玉として「日本版NIH」を掲げ、内閣府に独立行政法人を新設する法案を準備させていると承知しているが、ディオバン問題、本件プロジェクトでの改ざん疑惑、そして臨床試験SIGNでの不祥事等と、立て続けに起こっている臨床研究をめぐる疑惑及び不祥事の教訓を踏まえ、研究成果に対する世界からの信頼を勝ち取るために、どのような対策を講じるつもりか、内閣府の見解を明らかにされたい。

十七 科学研究で捏造、改ざんということが決定的になるのは、査読付きの論文誌に発表した論文でデータに偽りがあったことが示された場合であるとの見解が一部にあるが、文部科学省はこの見解に同意するか、明らかにされたい。

  右質問する。