質問主意書

第185回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五八号

内閣参質一八五第五八号
  平成二十五年十一月二十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員山本太郎君提出特定秘密の保護に関する法律案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出特定秘密の保護に関する法律案に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの特定秘密の保護に関する法律案(以下「本法案」という。)における行政機関の長は、内閣総理大臣、内閣法制局長官、原子力防災会議、安全保障会議、中心市街地活性化本部長、地球温暖化対策推進本部長、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部長、都市再生本部長、知的財産戦略本部長、構造改革特別区域推進本部長、地域再生本部長、郵政民営化推進本部長、道州制特別区域推進本部長、総合海洋政策本部長、宇宙開発戦略本部長、総合特別区域推進本部長、人事院、宮内庁長官、公正取引委員会、国家公安委員会、金融庁長官、消費者庁長官、総務大臣、公害等調整委員会、消防庁長官、法務大臣、公安審査委員会、公安調査庁長官、外務大臣、財務大臣、国税庁長官、文部科学大臣、文化庁長官、厚生労働大臣、中央労働委員会、農林水産大臣、林野庁長官、水産庁長官、経済産業大臣、資源エネルギー庁長官、特許庁長官、中小企業庁長官、国土交通大臣、運輸安全委員会、観光庁長官、気象庁長官、海上保安庁長官、環境大臣、原子力規制委員会、防衛大臣、警察庁長官及び会計検査院のほか、本法案第二条第四号及び第五号の政令で定める機関について、その機関ごとに政令で定める者(合議制の機関にあっては、当該機関)である。

二及び三について

 特定秘密である情報が記録された文書等については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号。以下「情報公開法」という。)第二条第二項の行政文書として情報公開法が適用される。また、本法案の適用に当たっては、本法案第二十一条第一項の規定により、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならないこととされている。
 したがって、本法案は、御指摘の「情報公開制度を根本において否定するもの」でも、「国民の知る権利が一方的に制限・縮小される恐れがある」ものでもないと考えている。
 なお、情報公開法第十八条の規定に基づき、開示決定等について行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てがあったときは、当該不服申立てに対する裁決又は決定をすべき行政機関の長は、原則として情報公開・個人情報保護審査会に諮問した上で裁決又は決定をすることとなるが、開示決定等の取消しを求める訴訟がその後に提起された場合にも、情報公開・個人情報保護審査会の答申は、裁判所の判断を拘束するものではなく、また、不服申立てを経ない当該訴訟の提起も、もとより可能である。

四について

 お尋ねの「報道による取材活動」や「市民運動の活動家による行動」が、具体的に何を指すのかが必ずしも明らかではないが、これらが外国の利益を図る目的で行われるものでなく、又は我が国及び国民の安全を著しく害し、若しくは害するおそれのあるものでなければ、特定有害活動に該当しない。特定有害活動の具体的な事例としては、外国の工作機関が日本人の拉致を行う活動が挙げられる。

五について

 お尋ねの「報道の自由に対し」、「十分に配慮しなければならない」とは、本法案の適用に当たって、報道の自由が不当に制約されることのないように配慮することをいう。
 また、お尋ねの「法律を拡張して解釈」するとは、一般に、法律の規定を、その通常意味するところを超えて広く解釈することをいい、例えば、本法案の別表のある文言をその通常意味するところよりも広く解釈して特定秘密の指定を行うことである。
 さらに、お尋ねの「政党や宗教団体の機関紙」が、具体的に何を指すのかが必ずしも明らかではないが、これらが本法案に規定する報道に該当する場合には、配慮の対象となるものと考えている。

六について

 本法案第十六条においては、行政機関の長等は、特定秘密の保護以外の目的のために、適性評価の実施に同意しなかったこと等の個人情報を自ら利用し、又は提供してはならないこととされており、適性評価制度の導入により、御指摘の「組織運営や人事取扱い上の不都合、差別・不利益をもたらす」ことはないと考えている。

七について

 評価対象者の家族等の氏名等の情報は、主として、評価対象者から入手することが想定されるが、いずれにせよ、適性評価は、あらかじめ、調査を行う旨を評価対象者に対し告知した上で、その同意を得て実施するものである。

八について

 公益通報者保護法(平成十六年法律第百二十二号)第二条第三項の通報対象事実は、それ自体が特定秘密であることが想定し難く、本法案について、御指摘の「内部告発を行うことを抑制することになる」ものとは考えていない。

九について

 特定秘密に該当し得る情報が漏えいした重大な事案としては、例えば、平成十七年に発生した中国潜水艦の動向に関する情報の漏えい事件がある。

十について

 特定秘密を保有する行政機関の長等は、本法案第五条第一項等の規定により、特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める措置を講ずるものとされるが、こうした措置には、特定秘密を電磁的記録で保存し、又は伝達する際に暗号化すること等が含まれると考えられる。これにより、不正アクセス等による情報漏えいの危険性が低減し、お尋ねの「セキュリティが向上する」ものと考えている。