質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九九号

小松一郎内閣法制局長官の資質に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十二月六日

小西 洋之   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   小松一郎内閣法制局長官の資質に関する質問主意書

一 平成二十五年十一月二十五日の参議院決算委員会の審議において、小松内閣法制局長官が、「集団的自衛権の行使は、憲法の解釈変更では不可能であり、憲法の条文改正という手段を取るほかない」という従来の政府の憲法解釈を現時点で維持していることを認めながら、私の「憲法の解釈変更と条文改正という二つの文言を使用してのより明確な答弁」を求める質問を、三度に渡り拒否し続けた理由は何か。
 内閣法制局長官として、「集団的自衛権の行使は、憲法の条文改正でなければ不可能」と具体的に発言することの政治的な影響に配慮したのではないのか。

二 過去の内閣法制局長官の国会答弁において、質疑者より、より明確かつより具体的な文言による憲法解釈に係る答弁を複数回にわたり求められて、これを故意に拒否あるいははぐらかし等し続けた例(少なくとも、小松長官は三度に渡り明示に要求され、その都度内容を変えた答弁を行っており、確信犯的に答弁拒否を行ったものと断ぜざるを得ない)はあるか。その有無並びに具体例を示されたい。

三 憲法学者や論評等において、内閣法制局が、「法の番人」と呼称される意味をどのように考えているか。

四 小松内閣法制局長官は、「集団的自衛権の行使は、憲法の条文改正を行う以外に不可能である」旨を具体的に言明する答弁を繰り返し求められて、しかし、聞かれてもいない事項を答弁するなどの事実上の答弁拒否を確信犯的に三度にわたり繰り返した。
 小松内閣法制局長官は、「法の番人」たる内閣法制局の長なのか、それとも、異例の政治任用を受けた「安倍総理の番犬」なのか。

五 内閣法制局の行う法令審査業務(全ての国内法令及び条約の条文審査を行うこと)と法令意見業務(憲法問題を含めたあらゆる法律問題についての解釈を内閣総理大臣等に意見すること)について、小松内閣法制局長官以前の三代の長官がこれをどのように「統括」(内閣法制局設置法第二条第二項)していたのか、その業務の実態について、具体的に示されたい(質問者の霞ヶ関官僚としてのかつての具体的経験からも、内閣法制局長官は、その「統括」の在り方として、法律案の一言一句の逐条的な審査と、個別の法令意見についてその解釈の妥当性についての確認を行い得るものと承知している)。

六 小松内閣法制局長官の外務省入省以降の主な職歴を具体的かつ網羅的に示されたい。また、小松内閣法制局長官以前の三人の内閣法制局長官の内閣法制局参事官着任以降、長官退任までの職歴を具体的かつ網羅的に示されたい。
 この上で、小松内閣法制局長官が、いつどこでどのように、歴代の内閣法制局長官が、内閣法制局の二十年余りに渡る各ポストとそこでの業務を通じて培った、法令審査業務、法令意見業務についてこれらを「統括」するだけの能力、資質を形成・体得できたと判断し、内閣法制局長官に任命したのか、その理由を具体的に示されたい。

七 小松内閣法制局長官の専門であるとされている国際法分野における法令である条約を法令審査している内閣法制局の担当部長、担当参事官が、条約の法令審査業務とは別に業務として担当している各省庁等の法令分野を具体的かつ網羅的に示されたい。
 これを踏まえた上で、「国際法の専門家であるから、内閣法制局長官の職責が全うできるだけの資質があるはず」との見解の妥当性について、どのように考えるか、明確に示されたい。

八 小松内閣法制局長官の着任以前の歴代の内閣法制局長官が、法制局第一部長を経験することとしていた人事慣行の理由について第一部の業務内容を踏まえつつ、具体的に説明されたい。
 また、法制局第一部長の職務経験がない小松内閣法制局長官が、内閣法制局の二大業務の一つである法令意見業務をどのように「統括」できるのか、また、しているのか、明確に示されたい。

九 質問者が確認した限りにおいて、数十人の現役の霞ヶ関官僚から、「内閣法制局長官は、小松内閣法制局長官のような職歴の人物が務まるような職責のポストでは到底あり得ない。非常識極まりない言語道断の馬鹿げた人事である。」との見解が示されているが、これについてどのように考えるか。

十 小松内閣法制局長官の給与、賞与等の全収入(年間)を内訳とともに示されたい。

十一 小松内閣法制局長官がフランス大使の職を辞する際に、憲法第二十二条に定める職業選択の自由は小松長官に保障されていたか。

十二 小松内閣法制局長官は、内閣法制局長官としての資質を欠く立場であるにも関わらず、長官に就任し、「解釈変更では不可能であり、憲法の条文改正でなければできない」との憲法解釈が確立している集団的自衛権の行使について、憲法解釈によりこれを可能とするべく企図している安倍内閣の一員として務めている。
 本来あるべき霞ヶ関の官僚は、我が国の立憲主義と法の支配を、国家公務員として法制度の専門家として守り抜く使命感と責任感を背負う者であると承知している。
 「小松内閣法制局長官には、元霞ヶ関官僚としての矜持があるのか。後輩の霞ヶ関官僚達に対して、職業人として恥ずかしくないのか」、これらについて、政府として小松長官に具体的に確認の上、答弁されたい。

十三 日夜、内閣法制局設置法に定める内閣法制局の目的を全うするために厳しい職務環境の中、職責の全うとそれを通じた研鑽に励んでいる内閣法制局職員は、本来なるべき資質を欠く小松内閣法制局長官の就任に、内閣法制局職員としての誇りを傷付けられ、法の番人としての政治権力に屈しない内閣法制局の中立・公正性の在り方について危惧を抱いていないか(質問者にあっては、現にそうした声があるものと承知している)。

  右質問する。