質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九三号

医療及び介護の専門的知見に基づく成年後見制度の利用促進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十二月六日

秋野 公造   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   医療及び介護の専門的知見に基づく成年後見制度の利用促進に関する質問主意書

 一九九九年十二月に成年後見関連四法案が成立して、政省令の制定を経て二〇〇〇年四月一日に施行された成年後見制度は、二〇一二年末時点では約十七万人利用にまで拡大し、広く国民の間にも定着した制度となっている。また、患者調査によると国内には精神疾患(認知症を含む)と診断された者が約三百二十万人(そのうち認知症患者が約五十二万人)にも上ることを考えると、法の理念に基づいて真に必要な医療・介護を切れ目なく適切に提供していく体制を整備していくことは喫緊の課題である。
 この制度は認知症及び精神疾患により、後見・保佐・補助のそれぞれの区分相当であるとの医師の診断書を基に、裁判所の判断で、財産管理と身上監護の法律行為までを成年後見人等(以下「後見人等」という。)が行使できることとしているものであり、後見人等による身上監護の事実行為については留保がなされている。
 よって、例えば後見人等が当事者を必要とする介護サービスを導入するに当たっては、財産管理の観点から、介護サービス提供事業者等と介護サービス導入の契約を行うことになる。しかし、その後の要介護度の変化に応じて適切なサービスが供給されるよう手配されているか、そもそも契約したサービスが適正になされているか、契約したサービスの過不足及び在宅の生活に無理はないか、在宅の生活が困難となったことによる施設等への入所の必要性が正しく判断されているか、必要な医療が提供できているか、など継続的に本人を支えていくための制度設計は必ずしも十分ではない。
 今後、高齢化の進展に伴い、医療及び介護を必要とする精神障害者及び認知症患者が増加することが見込まれており、裁判所と後見人等が当事者の医療及び介護の状況変化を踏まえつつ、更に医療や福祉の関係者と連携して、医療と福祉の専門的知見に基づいて制度を運用しつつ本人の日常生活に関わることが期待される。
 これまで以上に法の精神を踏まえ適正に制度を運用することが求められている状況から、以下質問する。

一 医師による診断書を伴わないで成年後見制度の申立てを行うことは可能とされているのか。

二 医師が後見・保佐・補助のいずれかの区分に相当すると診断している診断書を、申立人が診断とは別の区分に相当することの根拠として申立てに使用することは可能とされているのか。

三 医師が後見・保佐・補助のいずれかの区分に相当すると診断している診断書に対して、裁判所が医師による文書の提出を必要とせずに診断の変更を行うことはあり得ることか。

四 医師による診断が後見・保佐・補助のいずれでもないとされ、下級審において成年後見制度開始の申立てが棄却された案件について、新たな医師による診断書の提出も無しに、上級審で下級審の判断を覆す審判が発生することを想定しているか。想定しているとすれば、どのような場合が想定されるか。

五 認知症又は精神疾患と診断されて、後見・保佐・補助が開始されたとしても、その後、後見・保佐・補助の必要性がないところまで症状が改善した場合に、当該事情を客観的に証明する手段は医師による診断書以外に存在するのか。

六 成年後見制度の開始の根拠となった、認知症や精神疾患の症状に関して、その後、改善又は増悪の診断がなされた場合に、その診断書を後見人等が裁判所に届け出る責任は法律上存在するのか。

七 虐待防止又は人権保護の観点から成年後見制度利用者の状況の変化により、例えば後見人の事務が医療、福祉の観点から必ずしも適切でない場合には、後見・保佐・補助の変更又は取消しを医師の判断により裁判所に情報提供することの必要性について政府の見解如何。

八 成年後見制度の利用がそもそも本人の意向に沿うものではないにもかかわらず、後見・保佐・補助の開始又は取消しが裁判所において行われることは可能とされているのか。

  右質問する。