質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六四号

東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故による被ばく者の健康調査に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十一月十八日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故による被ばく者の健康調査に関する質問主意書

 平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)により放出された放射性物質は、福島県外にも広く拡散していること、また、当該放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと等を考慮すれば、政府は、原発事故により放射線被ばくを受けた国民の健康影響について、取りこぼすことなく確実にその詳細を把握すべきであり、そのために行われる健康調査についても責任を持って積極的に関与すべきであることは、論をまたない。
 このことを踏まえ、原発事故により放出された放射性物質により被ばくした者(以下「被ばく者」という。)に対する健康調査に関する政府の基本的認識につき、以下質問する。

一 原発事故により放出された放射性物質は、福島県内に留まらず県境を越え、広く東北地方、関東甲信越地方、更に東海地方にまで及んでいることは周知の事実である。このような未曾有かつ甚大なる国土の放射能汚染とともに、いまだ放射性物質が健康に及ぼす影響が科学的に解明されていない現在においては、原発事故による被ばく者を原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に準じて「放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」として広くとらえるべきと考えるが、政府の見解如何。また、政府が原発事故による被ばく者として健康影響を把握すべきと考える調査対象範囲を、その根拠とともに明確に示されたい。

二 平成二十五年十一月十一日、安倍晋三首相は原発事故対策について国がしっかり前に出るとして、今までの対策を抜本的に見直すことを表明した。原発事故によって拡散された放射性物質が、福島県を越えて広く拡散されている事実を踏まえれば、各自治体単位の対策を改め、原発事故による被ばく者については、政府が責任をもって、全国の医療機関で無料検査を受ける権利を証明する「被ばく検査健康手帳(仮称)」(以下「手帳」という。)を配布し、たとえ転居しても全国で無料受診できる体制を整えることが早急に必要と考えるが、政府の認識如何。

三 現在、福島県外において放射能汚染が認められている地域においては、国や自治体が責任を負った体制による甲状腺超音波検査や血液検査、尿検査などの、いわゆる「被ばく検査」が行われていない状況であるため、被ばくによる健康影響を懸念する市民は、市中一般の医療機関において、自主的に希望して検査を申し込まざるを得ない状況である。そしてこれらの検査希望者に関しては、自費診療扱いとするか保険診療扱いとするかは、医療機関ごとにその対応が異なっており、医療現場では混乱が生じている。このような現状を鑑み、全国の医療機関に対して手帳を渡されていない段階の検査希望者の検査に関する診療報酬の取扱いについて、政府が早急に全国的に統一した対策を講じる必要があると考えるが、政府の見解如何。

四 現在の診療記録の保存義務期間は、診療録は五年、画像資料等は二年であるが、被ばく者の診療記録は、例外的に画像を含め今後五十年間の保存義務を課し、放射線被ばくによる晩発性障害に対応できる体制を構築しておくこと、また、甲状腺超音波検診によって記録された画像データ及び被ばく検査に関わる個人資料は、本人又は保護者の全ての希望者に開示、複写の提供を行うことが必要と考えるが、政府の見解如何。

五 私が平成二十五年十月二十一日に提出した「放射線被曝防護に関する質問主意書」(第百八十五回国会質問第二一号)に対する答弁書(内閣参質第二一号)によれば、ホールボディカウンターによって測定できない核種においては尿など生体試料を用いた検査が必要となるとの政府見解が示された。この政府見解をもってすれば、放射線の人体影響を科学的・医学的に解明する調査・研究体制を構築すること、ホールボディカウンターや尿検査によるガンマ線測定とともに、アルファ線やベータ線も計測できる体制を整備すること、さらに、被ばく者本人の要請があれば染色体検査ができる体制を構築することが、今後早急に必要と考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。