第185回国会(臨時会)
質問第二六号 外国資本による土地取得に対する規制の必要性に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十五年十月二十四日 藤末 健三
参議院議長 山崎 正昭 殿 外国資本による土地取得に対する規制の必要性に関する質問主意書 海岸線や国境線を含む土地、安全保障関連施設の近傍土地など、諸外国では外国資本によって取得されることが規制されているような土地であっても、我が国ではほとんど規制の対象となっていないことについて、国民も不安を感じつつあり、その在り方について政府として検討していかなければならないと考える。 平成二十五年三月二十七日の参議院財政金融委員会(以下「財政金融委員会」という。)において、中山恭子議員が我が国では外国資本による土地取得について規制がほとんど設けられていない問題について質問した際の、安倍総理の答弁において、外国資本による土地取得に対する規制の必要性に係る安倍総理の基本的な考えが示されているが、これらを踏まえ、以下質問する。 一 財政金融委員会において、安倍総理は、「外国人土地法に代わる新たな法を整備することを含めて、安全保障上の必要性や個人の財産権の保護の観点等の諸事情を総合的に勘案した上でしっかりと研究をしていきたい」と答弁しているが、その後の政府の研究の進捗状況を明らかにされたい。 二 政府は、外国資本による土地取得の状況について、実態調査を行っているのか。特に、外国資本による土地取得の目的について調査を行っているのか。 三 近年、外国資本による森林取得に対する不安などから一部の地方公共団体で水源地を保全するための条例を制定しつつある。こうした動きも受けて、森林法の改正が行われ、平成二十四年四月から森林取得の事後届出制度が開始されている。 1 森林取得の事後届出制度による情報などに基づいて、農林水産省が「外国資本による森林買収に関する調査」を実施しており、平成二十五年四月に公表された調査結果では、平成二十四年に確認された森林の買収事例を見ると、利用目的が「不明」や「資産保有」といったものが見受けられる。取得目的が不明の土地取引や外国資本等が関わる投機的な森林・水源地売買により、持続的な水源林・水源地機能が損なわれることが懸念される。森林取得の事後届出制度を導入し、その調査結果を公表しただけでは、不十分ではないかと思われるが、政府の見解を明らかにされたい。 2 水源のかん養という公益的機能を達成するため、森林法第二十五条では、水源かん養保安林を指定することができ、立木の伐採や土地の形質の変更などの開発行為について許可制となっている。地下水の採取についても許可制とするとともに、その取得に当たっては事前届出制に変更し、更に許可制とするなど規制を強化し、水源地の保全に対する地方公共団体の不安の払拭に一層努めるべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 四 前記三の2に関し、水源かん養保安林だけでなく、安全保障的観点から、海岸線や国境線を含む土地、安全保障関連施設の近傍土地などについても同様に、その取得については許可制を導入していくべきであると考える。 国土利用計画法では、土地の投機的取引や地価の急激な上昇を抑制するため規制区域を指定し、当該土地取引に関する契約について許可制を導入しているが、同法において、海岸線や国境線を含む土地、安全保障関連施設の近傍土地などについても、安全保障的観点から規制区域を設定し、同様に当該土地取引に関する契約について許可制を導入するような改正を行うべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 五 財政金融委員会において、安倍総理は、「外国人の国境離島等に対する取得、あるいは自衛隊の施設の近傍に対する土地の取得について制限を掛けるべきではないかという議論があったのでございますが、WTO上、外国人に対して、外国人であるという、あるいは法人であるということによって制限は掛けることはできないということでございまして、一方、中国は、この適用の、WTOに加盟する段階でこれは留保しているということになっております」と答弁している。 1 「WTO上、外国人に対して、外国人であるという、あるいは法人であるということによって制限は掛けることはできない」とする答弁の根拠は何か。 2 安全保障上の観点から、外国資本による土地取得に対して規制をかけることも、WTO協定や二国間の投資協定などの国際条約に照らして、不可能なのか、政府の見解を示されたい。 3 外国資本による土地取得に対して態度を留保せずにWTOに加盟した国のうち、安全保障上の観点から、外国人や外国資本による土地取得に対して規制をかけている国が存在しているか明らかにされたい。また、二国間協定における外国資本による我が国の土地取引に対する規制の取扱いにつき明らかにされたい。 六 政府は、国家安全保障会議(いわゆる日本版NSC)を設置するための法案を提出しているが、同会議では、防衛力による領土保全といった大きな安全保障だけでなく、外国人や外国資本による土地取得状況の把握や規制制度の導入の検討など静かな領土保全を行う「足元の安全保障」についての議論も併せて行っていくべきではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 右質問する。 |