質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉過程に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十月十七日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉過程に関する質問主意書

 現在交渉中の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、国民生活と日本の国益に重大な影響を与えることが想定される。ついては、TPPの交渉過程について、以下の通り質問する。

一 政府は七月二十三日、マレーシアでの交渉参加に際して、秘密保持契約にサインしたと報じられている。安全保障上の交渉ではなく、国民生活に密接な影響を有するこの種の協定に、これほど厳重な機密保持契約の締結はそもそも適切ではなかったと考えるが、この点に関する政府の認識を明らかにされたい。

二 TPP交渉に関しては、現在、政府による情報統制により、検討の材料さえも国民に提供されず、国民的議論が成立しない状況である。TPP参加表明に関する記者会見において、安倍晋三総理大臣は国民への丁寧な情報提供を約束しているが、現在の状況は、明らかにそれに反しているのではないか。少しでもTPPに関する国民的議論を提起し、真の民意に沿った交渉を行うためにも、TPPに関し、交渉妥結までの間に、形式的な業界団体への説明等にとどまらず、市民参加の説明会や、国民から広く意見を募るパブリック・コメント等を実施すべきと考えるが、この提案に対する政府の方針を示されたい。

三 交渉妥結後、交渉の成果物(合意内容)に関しては、公表されると承知している。しかし、協定発効から四年間、交渉過程の開示も禁じられるとの報道もあるが、それは事実か。
 百歩譲って、円滑な交渉のために、交渉中の機密保持はやむを得ないとしても、交渉妥結後四年の長きにわたり、交渉過程を秘密とする理由(根拠)を明らかにされたい。

四 また、交渉妥結後に、開示される情報は、成果物以外、何が対象となっているのか。例えば、現在のように、守秘義務の内容自体も、守秘であり続けるとすれば、TPPに関する国会審議に際しても、不十分にしか情報提供がなされない状況で、議論を行わなければならないことが想定される。国会審議に必要十分な情報が開示されることを確約するべきと考えるが、いかがか。

五 現在に至るTPPの交渉に際して、政権与党の公約であった「TPP交渉参加の判断基準」にある六項目(六つの判断基準)、特に「国民皆保険制度を守る。」、「食の安全安心の基準を守る。」という原則を、日本政府の方針として、交渉相手国それぞれに説明を行ったのか、詳細を明らかにされたい。

六 与党は二〇一二年の衆議院選挙で公約集である「重点政策二〇一二」に「「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する」と明記し、先に行われた参議院選挙に際しても、選挙公約である「J-ファイル」において重ねて「農林水産分野の重要五品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)等の聖域を確保する」としている。しかしながら、政府・与党は、自らが「聖域」と位置付けた農業の重要五項目の一部品目について関税撤廃を検討する意向を示している。これは、明らかに公約違反と考えるが、その点について政府の認識を示されたい。
 また、政府・与党が、聖域としていた農業の重要五項目についてこのような妥協がなされるとすれば、「国民皆保険制度を守る。」、「食の安全安心の基準を守る。」等の聖域とされていた、六つの判断基準の他の項目についても、このような妥協が行われる可能性があるのか、明らかにされたい。

  右質問する。