質問主意書

第184回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九号

内閣参質一八四第九号
  平成二十五年八月十三日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員福島みずほ君提出集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の見解についての質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の見解についての質問に対する答弁書

一、二及び四について

 現時点で、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈は従来どおりである。
 御指摘の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書において述べられている見解に対しては、内閣法制局として意見を述べる立場にない。

三について

 我が国が現在導入している弾道ミサイル防衛システムは、スタンダード・ミサイルSM―三搭載イージス艦とペトリオット・ミサイルPAC―三により、我が国に飛来する射程約千キロメートル級の弾道ミサイルに対処し得るよう設計されている。イージス艦による迎撃については、我が国の発射による迎撃試験において、四回中三回命中しているほか、米国の発射による迎撃試験において、二十四回中十九回命中しているものと承知している。ペトリオット・ミサイルPAC―三については、我が国の発射による迎撃試験において、二回中二回命中しているほか、平成十五年の米国等によるイラクに対する武力行使の際に現地に展開し、迎撃範囲内の全ての弾道ミサイルの迎撃に成功したとの発表が米国政府によりなされたと承知している。さらに、弾道ミサイル防衛システムについては、我が国としても独自に分析を行っており、これら過去の試験等の結果に鑑みれば、当該システムの技術的信頼性は高く、我が国の領域に飛来する弾道ミサイルの迎撃に成功する確率は相当に高いものと考えている。
 他方、米国などの我が国から遠距離にある地域へ向かうような弾道ミサイルは、高々度を高速度で飛翔するため、我が国が現在導入している弾道ミサイル防衛システムで、このような弾道ミサイルを迎撃することは技術的に極めて困難である。

五、六及び八について

 現時点で、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈は従来どおりであり、お尋ねについては、仮定の質問であることから、お答えすることは差し控えたい。

七について

 お尋ねの「内閣法制局の見解が変更された事案」の意味するところが必ずしも明らかでないが、政府として憲法第六十六条第二項に規定する「文民」と自衛官との関係に関する見解を改めたことがある。すなわち、同項は、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」と定めているが、ここにいう「文民」については、その言葉の意味からすれば「武人」に対する語であって、「国の武力組織に職業上の地位を有しない者」を指すものと解されるところ、自衛隊が警察予備隊の後身である保安隊を改めて設けられたものであり、それまで、警察予備隊及び保安隊は警察機能を担う組織であって国の武力組織には当たらず、その隊員は文民に当たると解してきていたこと、現行憲法の下において認められる自衛隊は旧陸海軍の組織とは性格を異にすることなどから、政府としては、当初は、自衛官は文民に当たると解していた。その後、自衛隊制度がある程度定着した状況の下で、憲法で認められる範囲内にあるものとはいえ、自衛隊も国の武力組織である以上、自衛官がその地位を有したままで国務大臣になるというのは、国政がいわゆる武断政治に陥ることを防ぐという憲法の精神からみて、好ましくないのではないかとの考え方に立って、昭和四十年に、自衛官は文民に当たらないという見解を政府として示したものである。