質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四六号

内閣参質一八三第一四六号
  平成二十五年七月二日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三   


       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員紙智子君提出電磁波対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出電磁波対策に関する質問に対する答弁書

一の1について

 携帯電話用基地局の周辺住民から要望が寄せられ、総務省がその内容を関係の携帯電話事業者に連絡した件数は、平成二十一年度に四十二件、平成二十二年度に三十五件、平成二十三年度に六十四件、平成二十四年度に四十八件である。

一の2について

 携帯電話事業者が携帯電話用基地局を建設するに当たり、周辺地域の住民から説明を要求されるなどの理由により、当初の設置予定を変更したものの件数は、参議院議員紙智子君提出電磁波対策に関する質問に対する答弁書(平成二十一年十二月十一日内閣参質一七三第九九号)の閣議決定の日から平成二十四年度末までにおいて一件であり、撤去又は移転したものはないと承知している。

一の3について

 携帯電話用基地局の設置に関し、携帯電話事業者と当該基地局の周辺地域の住民との間で訴訟により係争中となっているものの件数は、平成二十五年三月末現在において、高等裁判所に控訴中のものが一件と承知している。

二について

 携帯電話用基地局の建設に係る条例等については、網羅的に把握しているわけではないが、神奈川県鎌倉市において「鎌倉市携帯電話等中継基地局の設置等に関する条例」(平成二十二年鎌倉市条例第二十号)が制定されていることは承知している。

三の1について

 お尋ねの訴訟において、携帯電話用基地局周辺の住民が健康被害を訴えていることは、報道等により承知している。
 携帯電話用基地局等からの電磁波による健康への影響に関しては、世界保健機関(以下「WHO」という。)が「基地局および無線技術」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー三百四(以下「ファクトシート三〇四」という。)において、国際非電離放射線防護委員会により平成十年四月に発表された「時間変化する電界、磁界及び電磁界による曝露を制限するためのガイドライン(三百ギガヘルツまで)」(以下「ICNIRPガイドライン」という。)に定められている基準値以下の弱いRF(無線周波)信号による健康への影響について説得力のある科学的証拠はない旨の見解が示されていることから、政府としては、現行の基準により人体への危害の防止が図られているものと考えているところではあるが、御指摘の「予防的対策」については、WHOの国際電磁界プロジェクトの動向や今後の国内外の調査研究の進展を踏まえつつ、その必要性も含め検討してまいりたい。

三の2について

 御指摘の「電磁波施設」の意味するところが明らかではないが、総務省としては、携帯電話用基地局の詳細な設置場所については、設置主体である法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることや、犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあること等により、明らかにしないこととしているが、携帯電話用基地局の開設に際しての周辺地域の住民への説明について、携帯電話事業者に対し、引き続き要請してまいりたい。

三の3について

 平成十九年にWHOが「超低周波の電界及び磁界への曝露」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー三百二十二において、超低周波電磁界と健康影響との因果関係があるといえるほどの証拠は見当たらないとの見解が示されたことを受け、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会電力安全小委員会電力設備電磁界対策ワーキンググループが、電力設備から発生する低周波電磁界と健康影響との因果関係について検討した結果、その報告書において同様の見解が示された。これらのことから、政府としては、送電設備等の近くに居住する住民の健康被害についての実態調査を行う必要性は低いと考えているが、電磁界と健康影響との関係については、経済産業省において実施している「電力設備電磁界情報調査提供事業」において国内外の情報収集や調査を行っており、今後も情報収集等に努めてまいりたい。
 携帯電話用基地局からの電磁波による健康への影響に関しては、ファクトシート三〇四において、ICNIRPガイドラインに定められている基準値以下の弱いRF(無線周波)信号による健康への影響について説得力のある科学的証拠はない旨の見解が示されており、現時点では健康被害は科学的に確認されていないものと認識しているが、御指摘の「携帯電話中継基地局周辺に居住する住民の健康被害についての実態調査」については、WHOの国際電磁界プロジェクトの動向や今後の国内外の調査研究の進展を踏まえつつ、その必要性も含め検討してまいりたい。
 電磁波の労働者へのばく露の実態については、厚生労働省において、平成二十年度に、「職場における電磁場環境および人体ばく露の実態と労働衛生管理の在り方に関する調査研究」を実施したところであり、今後も情報収集に努めてまいりたい。

四について

 御指摘のバイオイニシアティブ報告書増補版については、政府として詳細は承知していないが、携帯電話用基地局等から発射される電磁波については、我が国においては、電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)等で、WHOが遵守することを推奨しているICNIRPガイドラインに定められている基準と同等の基準を定めており、ファクトシート三〇四において、携帯電話用基地局等からのICNIRPガイドラインに定められている基準値以下の弱いRF(無線周波)信号による健康への影響について説得力のある科学的証拠はない旨の見解が示されていることから、政府としては、現行の基準により人体への危害の防止が図られているものと考えている。

五の1について

 スマートメーターが電波を用いて通信を行う場合については、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)の規制を受けることとなるが、我が国においては、電波法施行規則等で、WHOが遵守することを推奨しているICNIRPガイドラインに定められている基準と同等の基準を定めており、当該電波による人体への危害の防止が図られているものと考えていることから、電力会社が、電波を用いて通信を行うスマートメーターを各家庭に設置することについては問題ないと考えている。

五の2について

 お尋ねについては、北海道電力株式会社によれば、モデル地域においてスマートメーターを設置するに当たり、対象需要家に対し、通信機能付きの新しい電力量計を設置すること、遠隔検針等の実証試験を行うことなどをお知らせし、協力を依頼しているとのことである。

五の3について

 御指摘の「スマートメーターの周波数、出力、予測される被ばく量(スマートメーターからの距離ごとの電力密度)」などの情報の取扱いについては、各電力会社において判断されるものであると考えている。

五の4について

 経済産業省としては、電気の効率的な使用や多様な電気の小売に係る料金の設定等を促進する観点から、スマートメーターの導入は重要であると考えているが、その導入に当たっては、対象需要家に対し、電力会社において適切な説明を行いながら進められるべきものと考える。

五の5について

 スマートメーター本体及び設置に要する費用並びに通信を行う際の送信用電力に要する費用(以下「スマートメーターに係る費用」という。)については、一般に電気料金の原価に算入可能であり、これまでに電気料金の値上げに係る認可申請を行い、その認可を受けた東京電力株式会社、関西電力株式会社及び九州電力株式会社については、スマートメーターに係る費用が電気料金の原価に算入され、消費者が電気料金の支払を通じて費用を負担している。