質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三一号

内閣参質一八三第一三一号
  平成二十五年七月二日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三   


       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員福島みずほ君提出原子力損害の賠償に関する法律の改正に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出原子力損害の賠償に関する法律の改正に関する質問に対する答弁書

一、三、四の後段、六の前段及び七について

 原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号。以下「原賠法」という。)の目的並びに原子力損害の賠償に係る原子力事業者による措置の内容、原子炉の製造業者等の責任の在り方及び原子力事業者の第三者に対する求償権の在り方については、原子力損害の賠償に係る紛争を迅速かつ適切に解決するための組織の整備を含め原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号。以下「機構法」という。)附則第六条第一項において検討を加えることとされている事項に関する検討結果に基づき、同項において講ずるものとされている措置に関する議論の中で検討していくこととなるが、同項において検討を加えることとされている事項に関する検討は、我が国のエネルギー政策における原子力の位置付け等の検討状況や現在進行中の平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故(以下「平成二十三年原子力事故」という。)の賠償の実情等を踏まえながら、総合的に検討を進めることとしており、現在、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)による賠償の進捗状況を含め、必要な情報の収集、整理に当たっているところであるため、なお途上にある。
 政府としては、今後とも、平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の賠償が適切かつ迅速に実施されることを最優先としつつ、できるだけ早期に同項において講ずるものとされている措置に関する議論の結論を得られるよう、必要な検討等を進めてまいりたい。
 お尋ねの「除染を含む損害賠償額を推定すること」については、政府が平成二十五年六月二十五日に機構法第四十六条に基づき変更の認定を行った東京電力の認定特別事業計画において、「除染作業やそれに伴う中間貯蔵施設等の建設等の作業は、国の予算措置に基づいて進められるが、現段階では、具体的な実施内容等を把握できる状況になく、国からの請求又は求償を踏まえるなど合理的な見積りが可能になった段階で見積もる予定である。」とされており、東京電力において、国からの請求又は求償を踏まえるなど合理的な見積りが可能になった段階で行われるものと承知している。

二について

 原子力損害賠償補償契約(以下「補償契約」という。)は、原子力損害賠償責任保険契約(以下「責任保険契約」という。)により填補されない地震又は噴火等により生じた原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を填補するものである。補償契約と責任保険契約とでは、填補される損失の発生の見込み等、それぞれ補償料と保険料の算出の根拠が異なることから、補償料と保険料は、単純に比較できるものではないと考えている。いずれにしても、現在の補償料は適切な額であると考えているが、補償料の更なる見直しについては、必要に応じて適切に対応してまいりたい。

四の前段について

 原賠法においては、原子力損害の被害者が容易に賠償請求の相手方を特定できるようにし、被害者の救済を促進する等の観点から、原賠法第四条第一項の規定により、原賠法第三条の規定により原子力損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じないこととするとともに、原賠法第四条第三項の規定により、製造物責任法(平成六年法律第八十五号)の規定は、御指摘の「原子炉その他の機器」の欠陥による原子力損害を含め、原子炉の運転等により生じた原子力損害には適用しないこととしている。

五について

 東京電力は、平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の迅速かつ適切な賠償の実施のため、平成二十三年十一月以来、機構法第四十五条の規定による認定特別事業計画を着実に履行してきているところである。東京電力は、当該認定特別事業計画に基づき、取引金融機関に対しては、貸付金について借換えによる与信を保つこと、被害者に対する賠償金の支払等のための短期の融資枠を設定すること等の要請を、株主に対しては、東京電力の財務基盤を強化するための原子力損害賠償支援機構(以下「機構」という。)による東京電力の株式の引受け等について株主総会において賛成するよう協力することや、国民負担の最小化の観点から、当面の間、無配当を継続することの要請を、それぞれ随時行っている。

六の後段について

 原賠法第五条第二項に規定する特約については、民間企業間の契約に係るものであり、政府としてお答えする立場にない。

八について

 平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の迅速かつ適切な賠償の実施のため、機構は、機構法第四十五条の規定による認定特別事業計画に基づく東京電力に対する資金援助を行っている。このうち、東京電力の株式の引受けによるものについては、機構は、当該引受けの原資とした金融機関からの借入れを、機構法第三十八条第一項、第三十九条第一項及び第五十二条第一項の規定に基づき東京電力及びその他の原子力事業者が納付する負担金(以下「負担金」という。)によることなく、当該株式の売却等により弁済することが予定されている。他方で、機構法第四十九条の規定により国債の償還を受けて行っている資金交付については、機構は、機構法第五十九条第四項の規定により、国債の償還を受けた額の合計額を国庫に納付しなければならないとされており、機構による当該国庫納付は、負担金を原資として行われているが、負担金は、原子力損害賠償に必要な資金の交付その他の業務に要する費用に充てるものであるから、国債の償還を受けた額の合計額と納付される負担金の合計額とは一致するものではなく、また、お尋ねの「完納時期」は想定していないが、負担金のうち、機構法第五十二条第一項の規定により算定される追加的に負担させることが相当な額に係るものについては、機構法第五十九条第四項の規定により機構が国庫に納付した額の合計額が機構法第四十九条第二項の規定により国債の償還を受けた額の合計額に達していることなど、機構法第四十七条第一項各号に掲げる条件が全て満たされたことにより定められる同項の特別期間内にその全部又は一部が含まれる機構の事業年度のうち最終の事業年度が納付の終期となる。なお、平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の迅速かつ適切な賠償の実施に当たり、東京電力に係る機構法第五十二条第一項の規定により算定される負担金の額は、現在までの間、零である。