質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一九号

内閣参質一八三第一一九号
  平成二十五年六月十八日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 麻 生 太 郎   


       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員山下芳生君提出平城宮跡の保全と継承に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山下芳生君提出平城宮跡の保全と継承に関する質問に対する答弁書

一について

 平城宮跡の保存及び整備に当たっては、文化庁では、学識経験者等で構成される「平城宮跡及び藤原宮跡等の保存整備に関する検討委員会」(以下「検討委員会」という。)において検討を行っており、また、国土交通省では、学識経験者等で構成される「国営飛鳥・平城宮跡歴史公園平城宮跡区域(仮称)基本計画検討委員会」において、「国営飛鳥・平城宮跡歴史公園平城宮跡区域基本計画」(以下「公園基本計画」という。)案の検討を行い、公園基本計画案についてのパブリックコメントを実施するなど、学識経験者及び関係地方公共団体等の意見も参考にしてきたところである。
 また、文化審議会文化財分科会における御指摘の「個々の現状変更許可」に係る審議の公開及び審議内容の公表については、同分科会における今後の中立公正な審議の遂行の支障となるおそれがあること等から、行わないこととしている。

二について

 御指摘の「保存管理計画」については、「特別史跡平城宮跡保存整備基本構想推進計画」(平成二十年五月文化庁策定。以下「推進計画」という。)に基づき、奈良県が国等と連携して策定することとされており、同県において策定するものと認識しているが、政府としては、平城宮跡の管理等については、検討委員会等における議論を踏まえ、適切に行ってまいりたい。

三について

 国土交通省としては、国営飛鳥・平城宮跡歴史公園平城宮跡区域(以下「国営平城宮跡歴史公園」という。)の整備については、「特別史跡平城宮跡保存整備基本構想」(昭和五十三年五月文化庁策定)や推進計画を踏まえて策定した公園基本計画に基づき実施しているところである。

四について

 平城宮跡の整備については、世界遺産における完全性及び真正性の観点に十分に配慮し、適切に行っているものと認識している。なお、国際連合教育科学文化機関の顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護のための政府間委員会(以下「世界遺産委員会」という。)が平成二十三年に行った「古都奈良の文化財に係る決議」(以下「決議」という。)については、世界遺産委員会の事務局に我が国の考え方を報告書として提出したところである。

五について

 国土交通省としては、国営平城宮跡歴史公園の整備については、「古都奈良の歴史的・文化的景観の中で、平城宮跡の保存と活用を通じて、奈良時代を今に感じる空間を創出する。」との公園基本計画における基本理念に沿って実施しており、「現代の建物を無秩序に増やす」ものではなく、「宮跡の歴史的・文化的景観を壊す」との御指摘は当たらないものと考えている。
 また、同省としては、第一次朝堂院付近の休憩所等については、御指摘の「史跡等整備の手引き」も踏まえ、その設置場所を選定したところである。なお、当該休憩所等の設置に当たっては、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第百六十八条第二項の規定に基づき、文化庁長官の同意を得て行うこととしている。

六について

 国土交通省としては、御指摘の「第一次朝堂院広場の舗装と調整池設置の工事」については、文化財保護法第百六十八条第二項の規定に基づき、文化庁長官の同意を得ていることから、平城宮跡の保護の観点から問題はないものと考えており、引き続き、適切に実施してまいりたい。また、文化庁としても、御指摘の「第一次朝堂院広場の舗装と調整池設置の工事」を含む平城宮跡の整備については、検討委員会において検討されており、御指摘の「今後の調査・研究」を阻害するものではないと考えている。

七について

 文化庁としては、第一次朝堂院の広場の整備による地下遺構への影響については、建設機械による局部的な荷重負担等を防止する配慮がなされるとされていたこと、また、平城宮跡の地下水は、平城宮跡の周辺部北側から流入し、南側へ流出しており、当該広場の舗装が直下の地下水位に与える影響は少ないと考えられたこと等から、問題はないと判断したところである。
 御指摘の「土系舗装の透水性」の試験については、国土交通省としては、現時点では行っていないが、今後、当該広場の舗装に実際に使用する土を用いて試験することを考えている。また、同省としては、御指摘の「地下遺構や木簡、生態系への影響」に関する調査については、土系舗装が自然素材である真砂土と少量のセメントの混合物により舗装するものであるため周辺環境と調和しやすく、史跡等の整備において多く用いられているものであることから、行っていない。

八について

 国土交通省としては、平城宮跡が市街地に囲まれた広大なオープンスペースとして歴史体験や観光のほか、地域住民の日常的な多目的利用の場として幅広く活用されているものと考えている。これを踏まえ、公園基本計画においては、国営平城宮跡歴史公園に「導入すべき機能」として、「歴史・文化体感・体験機能」、「自然的環境保全・創出機能」等を設定するとともに、「空間配置計画」として、歴史資産の活用を主とする空間等を「シンボルゾーン」等と位置付け、また、歴史資産の保全活用と併せて景観や自然的環境の保全など多様な機能との調和を図る空間等を「緑地ゾーン」等として位置付けているものである。
 また、国営平城宮跡歴史公園の整備に当たっては、継続的に自然環境調査を行うことにより動植物の生息状況を把握し、生態系に十分配慮することとしており、御指摘の「調整池」の整備に当たっても、御指摘のカヤネズミ等の生息状況を把握した上で実施しているところである。

九について

 国土交通省としては、第一次朝堂院の広場の整備に当たっては、盛土工事に着手する前の平成二十四年四月から定期的に、当該広場の二地点で地下水位の調査を行っており、これまで盛土工事の施工後において地下水位が低下している傾向は確認されていないこと、また、七についてで述べたとおり、当該広場の舗装が直下の地下水位に与える影響は少ないと考えられることから、御指摘の水位回復のための措置は考えていない。なお、今後も地下水位のモニタリングを継続していくこととしている。

十について

 御指摘の事業評価監視委員会が平成二十二年度に実施した事業評価時点における国営平城宮跡歴史公園の建物復原整備及び公園施設整備に係る施設費及び整備内容については、整備時期ごとに、それぞれ次のとおりである。
 建物復原整備の第一次整備 五百六十六億五千三百万円 第一次大極殿院東西回廊、東西楼、南門等の整備
 建物復原整備の第二次整備 九十六億三千六百万円 第一次大極殿院北面回廊等の整備
 公園施設整備の第一次整備 八十二億三百万円 拠点ゾーン施設、園路広場、管理施設、調整池等の整備
 公園施設整備の第二次整備 四十億七千二百万円 植栽、園路広場、管理施設等の整備
 また、このほか、奈良県による公園施設整備の第二次整備における用地費として百三十六億円、施設費として八十八億七千二百万円を見込んでおり、その整備内容は、交通ターミナル等の整備である。

十一について

 世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(平成四年条約第七号)や世界遺産委員会が平成二十四年七月に改訂した「世界遺産条約履行のための作業指針」においては、御指摘の「回答」等の公表を禁止する特段の規定はなく、公表するか否かの判断は同条約の締約国に委ねられている。
 なお、決議を受けて、我が国が世界遺産委員会の事務局に提出した報告書については、これまで、世界遺産委員会における結論が示されておらず、当該報告書を公表することは、今後の世界遺産委員会における審議に影響を及ぼすおそれ等があることから、公表していないところである。