質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一八号

内閣参質一八三第一一八号
  平成二十五年六月十八日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 麻 生 太 郎   


       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員紙智子君提出日本軍「慰安婦」問題の強制連行を示す文書及び政府認識に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出日本軍「慰安婦」問題の強制連行を示す文書及び政府認識に関する質問に対する答弁書

一の1について

 平成五年八月四日以降に関係省庁等から内閣官房に対して提出され、現在、内閣官房において保管しているいわゆる従軍慰安婦問題に関係する文書について、提出された年度別及び関係省庁等別の件数は、現時点で把握している限りでは、平成五年度においては、厚生省(当時)から一件、平成六年度においては、防衛庁(当時。以下同じ。)から一件、平成七年度においては、防衛庁から六件、国立国会図書館から一件、平成八年度においては、警察庁から二件、防衛庁から十九件、平成九年度においては、防衛庁から三件、平成十年度においては、防衛庁から十一件、国立公文書館(当時)から二件、平成十一年度においては、防衛庁から九件である。また、内閣官房において、平成八年に外務省から提出された英国国立公文書館の文書を四件保管しているが、提出された年度は、詳細な記録が残されていないため不明である。
 また、お尋ねの「各文書の提出の経過」については、その意味するところが明らかでないため、お答えすることは困難である。

一の2について

 お尋ねについては、法務省において、「いわゆる従軍慰安婦問題に関連する資料等について(依頼)」(平成八年七月二十四日閣外審第二〇二号。以下「依頼通知」という。)への対応等に関する資料が確認されていないなど、当時の状況が明らかでないため、お答えすることは困難である。

一の3について

 独立行政法人国立公文書館によると、国立公文書館(当時)が御指摘の文書を内閣官房に提出した点については、その保有している法人文書からは確認できず、当時の状況が明らかではないとのことであり、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、依頼通知の発出の後に、国立公文書館(当時)又は独立行政法人国立公文書館に移管される特定の文書が依頼通知に基づき報告すべき資料等に該当するか否かについては、基本的には、当該文書を保有する省庁等において、当該文書を国立公文書館(当時)又は独立行政法人国立公文書館に移管する前に判断するものと考えている。
 また、いわゆる従軍慰安婦問題の調査については、先の答弁書(平成二十五年五月七日内閣参質一八三第八三号)一の2についてでお答えしたとおりである。

一の4について

 政府の認識は、衆議院議員辻元清美君提出安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問に対する答弁書(平成十九年三月十六日内閣衆質一六六第一一〇号。以下「平成十九年答弁書」という。)一の1から3までについてでお答えしたものと同じである。

二の1について

 御指摘の趣旨の勧告は、法的拘束力を持つものではなく、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(平成十一年条約第六号)の締約国に対し、当該勧告に従うことを義務付けているものではないと理解している。
 いずれにせよ、政府の基本的立場は、平成十九年答弁書三の2についてでお答えしたものと同じである。

二の2について

 政府の基本的立場は、平成十九年答弁書三の2についてでお答えしたものと同じである。また、一市長の認識について、政府としてお答えする立場にない。

二の3について

 御指摘の文書については、特定の個人を識別することができる情報を記録していること及び非公開を前提として取得し、又は非公開を前提として行った聞き取りに基づき作成したものであること等から、公開することは差し控えたい。

三の1について

 国際刑事裁判所に関するローマ規程(平成十九年条約第六号。以下「ローマ規程」という。)は、その第八条2(b)(ⅹⅹⅱ)において、ローマ規程の適用上、「戦争犯罪」の一つとして、国際的な武力紛争下において「強姦、性的な奴隷、強制売春、前条2(f)に定義する強いられた妊娠状態の継続、強制断種その他あらゆる形態の性的暴力であって、ジュネーヴ諸条約に対する重大な違反行為を構成するものを行うこと。」を規定している。このことは、ローマ規程第八条2(b)(ⅹⅹⅱ)に規定する犯罪を行った者が処罰を免れることを終わらせるとともに、当該犯罪の防止に貢献するものであると認識している。

三の2について

 ある行為が、ローマ規程の適用上、「戦争犯罪」に該当するか否かについては、国際刑事裁判所(以下「ICC」という。)が判断するものであるが、ローマ規程第十一条1は、ICCはローマ規程の発効後に行われる犯罪についてのみ管轄権を有すると規定していることから、いわゆる従軍慰安婦問題を含め、ローマ規程発効以前の行為について、ICCが、ローマ規程の適用上、「戦争犯罪」に該当するか否かについて判断することはないと考えている。

三の3について

 政府の基本的立場は、平成十九年答弁書三の2についてでお答えしたものと同じであり、また、政府としては、いわゆる従軍慰安婦問題を含め、先の大戦に係る賠償並びに財産及び請求権の問題につき、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)、二国間の平和条約その他関連する条約等に従って誠実に対応してきているところであり、これらの問題は、これら条約等の当事国及びその国民との間で既に法的に解決済みである。