質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第八二号

内閣参質一八三第八二号
  平成二十五年五月七日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三   


       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員又市征治君提出一般用医薬品販売の実態と改善に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員又市征治君提出一般用医薬品販売の実態と改善に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 登録販売者試験(薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第三十六条の四第一項に規定する試験をいう。以下同じ。)の受験資格である薬局等(薬局並びに店舗販売業及び配置販売業をいう。以下同じ。)における実務経験の証明(以下「実務経験証明」という。)に関して不正が行われた、又は不正が疑われる事案を立入検査等(同法第六十九条第二項の規定による立入検査等をいう。以下同じ。)や一般の方からの情報提供等により把握した都道府県等は、厚生労働省及び関係都道府県等と連携して当該事案についての事実関係の確認を行い、当該確認の結果等を踏まえ、不正な実務経験証明を行った薬局開設者等(薬局開設者並びに店舗販売業者及び配置販売業者(新配置販売業者(薬事法の一部を改正する法律(平成十八年法律第六十九号。以下「改正法」という。)による改正後の薬事法第三十条第一項の許可を受けた者をいう。以下同じ。)及び既存配置販売業者(改正法附則第十条に規定する既存配置販売業者をいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)については必要に応じて薬事法第七十二条の四第一項の規定によりその業務の運営の改善に必要な措置を採るべきことを命じ、不正な実務経験証明により登録販売者試験を受験した者(以下「不正受験者」という。)については試験結果の取消しや販売従事登録(同法第三十六条の四第二項に規定する登録をいう。以下同じ。)の消除(同条第四項に規定する消除をいう。以下同じ。)を行っているところである。
 株式会社日本配薬に係る事案については、同省において平成二十二年九月に大阪府からの情報提供により事案を把握し、関係都道府県等と連携して事実関係の確認等を行った結果、同社の不正な実務経験証明により登録販売者試験を受験した者の数は、延べ三十八名であることが確認されている。
 合同会社西友に係る事案については、同省において平成二十四年九月に東京都からの情報提供により事案を把握し、関係都道府県等と連携して事実関係の確認等を継続しているところであり、平成二十五年三月末時点で同社の不正な実務経験証明による不正受験者及び同社の不正が疑われる実務経験証明により登録販売者試験を受験した者の数は、合計で延べ三百十名であることが確認されている。
 株式会社カメガヤに係る事案については、同省において平成二十四年十月に東京都及び神奈川県からの情報提供により事案を把握し、関係都道府県等と連携して事実関係の確認等を継続しているところであり、平成二十五年三月末時点で同社の不正な実務経験証明による不正受験者及び同社の不正が疑われる実務経験証明により登録販売者試験を受験した者の数は、合計で延べ四百八十五名であることが確認されている。
 同省としては、都道府県等に対して「登録販売者試験における実務経験の確認の強化について(依頼)」(平成二十三年十月三日付け薬食総発一〇〇三第一号・薬食監麻発一〇〇三第一号厚生労働省医薬食品局総務課長及び監視指導・麻薬対策課長連名通知)により、実務経験証明に関して不正が疑われる場合は、薬局開設者等への立入検査等の実施により、不正がないか確認するよう依頼するとともに、都道府県に対して「薬事法の一部を改正する法律の一部の施行についての一部改正について」(平成二十四年三月三十日付け薬食発〇三三〇第二号厚生労働省医薬食品局長通知)により、平成二十四年四月から、登録販売者試験の受験者が受験の申請に当たって提出しなければならない書類として、薬局開設者等の実務経験証明に関する勤務簿の写し等も求めることとし、登録販売者試験の適正な実施を要請したところである。
 さらに、同省としては、都道府県に対して「登録販売者試験に係る実務経験に関する不正の防止について(依頼)」(平成二十四年十一月三十日付け薬食総発一一三〇第一号厚生労働省医薬食品局総務課長通知)を発出し、都道府県を通じて、薬局開設者等に対して過去に行った実務経験証明について自主的な点検を求めたところ、全国で三十一の薬局開設者等の実務経験証明について、不正が行われた、又は不正が疑われる旨が報告され、関係都道府県等と連携して事実関係の確認等を継続しているところであり、平成二十年四月から平成二十五年三月末までの間に当該三十一の薬局開設者等の実務経験証明により登録販売者試験を受験した者の数は、延べ二百六十九名であることが確認されている。
 また、同省において都道府県等と連携して事実関係の確認等を行った結果、これらの事案に係る不正受験者のほか、平成二十四年四月から平成二十五年三月末までの間の不正受験者の数は、延べ二百五十九名である。
 お尋ねの「店舗販売業等の許可を持つ製薬会社等に属して、直接、消費者に対する一般用医薬品の販売に従事した経験の無い営業担当の者で、実務経験の証明を受けて、登録販売者試験を受験し合格している者」についての「過去の勤務記録等により自主的に確認し判明した不正」については、同省として報告を受けていない。

一の3について

 不正受験者については、都道府県において試験結果の取消しや販売従事登録の消除を行っているところである。
 また、お尋ねの「現行の施行通知の、一人の専門家の下に多数の一般従事者の存在を許すように解釈できる文言」が何を指すのか必ずしも明らかでないが、「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成二十一年五月八日付け薬食発第〇五〇八〇〇三号厚生労働省医薬食品局長通知。以下「施行通知」という。)においては、一般従事者は、薬剤師又は登録販売者(以下「薬剤師等」という。)の管理及び指導の下で一般用医薬品の販売又は授与(以下「販売等」という。)を行うこととしており、一般従事者による一般用医薬品の販売等については、薬剤師等による管理及び指導が可能な限度において行うことができるという趣旨であり、厚生労働省としては、引き続き、都道府県等と連携して、薬局開設者等においてこのような施行通知の趣旨が徹底されるよう、対応してまいりたい。

一の4の(1)について

 厚生労働省としては、御指摘の「不正受験が多発した背景」について具体的に把握していないため、それを前提としたお尋ねについてお答えするのは困難である。

一の4の(2)について

 不正な実務経験証明を行った薬局開設者等については、薬事法施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)第十四条の二(同規則第百四十二条及び第百四十九条において準用する場合を含む。)の規定に違反するものとして、必要に応じて薬事法第七十二条の四第一項の規定によりその業務の運営の改善に必要な措置を採るべきことを命ずることができ、これに違反した者には同法第八十六条第一項に規定する罰則の適用があり、また、法人の業務に関して違反行為がされたときは、その法人に対して同法第九十条に規定する罰則の適用があることから、厚生労働省としては、同法に御指摘の「制裁規定」を設けることは考えていない。

一の4の(3)について

 不正受験者については、一の3についてで述べたとおり、都道府県において試験結果の取消しや販売従事登録の消除を行っているところであり、厚生労働省としては、薬事法に御指摘の「一定期間、受験資格を停止するとの規定」を設けることは考えていない。

二について

 施行通知においては、一般従事者は、薬剤師等の管理及び指導の下で一般用医薬品の販売等を行うこととしており、一般従事者による一般用医薬品の販売等については、薬剤師等による管理及び指導が可能な限度において行うことができるものである。また、顧客から情報提供の求めがあった場合等に速やかに医薬品を販売する場所において薬剤師等に情報提供を行わせることができる適切な体制の下で、一般従事者が情報提供以外の業務に従事することは可能であり、厚生労働省としては、その従事した時間を登録販売者試験の受験資格である薬局等における実務経験として認めても差し支えないと考えており、御指摘の「実務経験時間の規定」の「厳格化」や「Q&A等」の作成等は考えていない。

三の1について

 一般用医薬品の販売等に関する適切な情報提供の在り方については、現在、厚生労働省が開催している「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」において、インターネット販売等(薬局又は医薬品の店舗販売業の店舗以外の場所にいる者に対するインターネット、郵便その他の方法による一般用医薬品の販売等をいう。)に関する制度の見直しとともに議論が行われているところであり、同省としては、その結果を踏まえて、適切に対応してまいりたい。

三の2及び3について

 厚生労働省が実施する「一般用医薬品販売制度定着状況調査」については、御指摘も踏まえつつ、配置販売業者の調査対象件数を増加させることや、既存配置販売業者と新配置販売業者を区別して調査することが可能であるかも含めて、今後、その在り方について検討してまいりたい。

三の4について

 お尋ねの「薬事監視率」の意味するところが必ずしも明らかではないが、厚生労働省が取りまとめた「薬事監視状況結果表」によると、平成二十三年度において、店舗販売業に係る立入検査率(店舗販売業者のうち、立入検査(薬事法第六十九条第二項の規定による立入検査をいう。以下同じ。)を受けたものの割合をいう。)は六十四・二パーセントであり、配置販売業に係る立入検査率(配置販売業者のうち、立入検査を受けたものの割合をいう。)は一・二パーセントである。

四の1について

 厚生労働省としては、お尋ねの「厚生労働省係官が、配置販売のルールに反する「不特定多数への販売」にあたることを確認し、録画を保管している」との事実は把握していない。
 また、新配置販売業者においては、薬事法第三十一条の二の規定により、配置しようとする区域を薬剤師等に管理させ、既存配置販売業者においては、改正法附則第十一条第一項の規定により読み替えて適用する薬事法第三十一条の二の規定により、配置しようとする区域を薬剤師又は既存配置販売業者の配置員に管理させる必要があり、同省としては、引き続き、都道府県と連携して、配置販売業者においてこのことが徹底されるよう、対応してまいりたい。

四の2について

 お尋ねの「配置業界の申し合わせ(自主ルール)」については、厚生労働省としては、これにより保健衛生上支障を生ずるものではないと認識しており、御指摘の「両団体発表の内容の真偽を確認」することは考えていない。

四の3について

 既存配置販売業者の配置員の資質の向上については、「薬事法の一部を改正する法律附則第十二条に規定する既存配置販売業者の配置員の資質の向上について」(平成二十一年三月三十一日付け薬食総発第〇三三一〇〇一号厚生労働省医薬食品局総務課長通知。以下「既存配置研修通知」という。)を発出し、都道府県を通じて、既存配置販売業者に対して講習等の標準的な方法を示すとともに、講習等の概要の都道府県への届出を求めているところであり、厚生労働省としては、引き続き、都道府県と連携して、既存配置販売業者においてその配置員に対する講習等が既存配置研修通知に基づき適切に行われ、既存配置販売業者の配置員の資質の向上が図られるよう、対応してまいりたい。

四の4の(1)について

 富山県が都道府県に協力を依頼して取りまとめた「平成二十三年医薬品配置販売業者数及び配置従事者数について」(以下「配置販売業調査」という。)によれば、平成二十三年十二月末時点で、全国の新配置販売業者の配置従事者数は五千四百十三人、うち薬剤師の数は二十五人、登録販売者の数は三千三十八人である。また、既存配置販売業者の配置従事者数は一万六千六百四十八人である。なお、配置販売業調査においては、既存配置販売業者の薬剤師及び登録販売者の数は、いずれも集計されていない。

四の4の(2)について

 既存配置販売業者は、改正法附則第十二条の規定により、薬剤師等又は一般従事者の別にかかわらず、配置員の資質の向上に努めなければならないとされており、厚生労働省としては、既存配置販売業者の配置員である登録販売者について、薬事法に御指摘の「登録販売者研修受講の義務化」を明記することは考えていない。
 なお、既存配置販売業者の配置員である登録販売者が、「登録販売者に対する研修の実施について」(平成二十四年三月二十六日付け薬食総発〇三二六第一号厚生労働省医薬食品局総務課長通知)に基づく研修を受講することは、その資質向上に資するものと考えている。

四の4の(3)について

 新配置販売業者については、配置販売の業務を行う体制の基準として、薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(昭和三十九年厚生省令第三号)第三条第一項第五号の規定により、当該新配置販売業者の配置員である登録販売者を含めた従事者に対する研修の実施を求めており、厚生労働省としては、新配置販売業の配置員である登録販売者について、薬事法に御指摘の「登録販売者研修受講の義務化」を明記することは考えていない。

五について

 一般用医薬品に関して税制上の措置を講ずることについては、租税負担の公平性、経済活動に対する課税の中立性、租税制度の簡素性といった租税原則や財政状況等も踏まえつつ、検討する必要があると考えている。
 なお、治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価は、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第七十三条の規定による医療費控除並びに地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三十四条及び第三百十四条の二の規定による所得控除の対象とされているところである。