第183回国会(常会)
答弁書第六八号 内閣参質一八三第六八号 平成二十五年四月九日 内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 平田 健二 殿 参議院議員大河原雅子君提出利根川・江戸川河川整備計画の策定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員大河原雅子君提出利根川・江戸川河川整備計画の策定に関する質問に対する答弁書 一の1及び2について 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十五年一月に国土交通省関東地方整備局(以下「関東地方整備局」という。)が公表した利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)(以下「河川整備計画(原案)」という。)の今後の検討の進め方については、現時点で未定である。 一の3について 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、関東地方整備局においては、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画の策定を進めるに当たり、平成十八年十二月から河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第十六条の二第三項の趣旨に基づき学識経験を有する者等の意見を聴く場として利根川・江戸川有識者会議(以下「有識者会議」という。)を開催するとともに、平成二十二年九月から実施した八ッ場ダム建設事業の検証(以下「八ッ場ダムの検証」という。)の過程において、平成二十三年十月に河川整備計画相当の目標流量及び整備内容の案を設定した「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)」(以下「報告書(素案)」という。)を公表し、さらに、平成二十四年五月に「利根川・江戸川において今後二十から三十年間で目指す安全の水準についての考え方」(以下「目指す安全の水準についての考え方」という。)を公表するなどしてきたところであり、これらのそれぞれの段階において、学識経験を有する者、関係住民等及び関係都県等からの意見聴取を実施してきたところである。これらを踏まえて、関東地方整備局において河川整備計画(原案)を公表し、学識経験を有する者及び関係住民等からの意見聴取を実施したところである。 一の4並びに一の5の(1)及び(3)について 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、八ッ場ダム建設事業については、国土交通省において適切に対処することとしており、同省においては、平成二十三年十二月二十二日に藤村内閣官房長官(当時)が前田国土交通大臣(当時)及び前原民主党政策調査会長(当時)に示した裁定にかかわらず、早期完成に向けた取組を進めることとしている。また、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画については、その策定を八ッ場ダム建設事業の本体工事の着工の前提とするものではないが、「河川法の一部を改正する法律の施行について」(平成十年一月二十三日付け建設省河政発第二号建設事務次官通達)に基づき、できるだけ速やかに策定することとしており、現在、その策定を進めているところである。 一の5の(2)について 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十四年一月に国土交通省水管理・国土保全局が公表した「平成二十四年度水管理・国土保全局関係予算概要」及び平成二十五年二月に同局が公表した「平成二十五年度水管理・国土保全局関係予算概要」のいずれにおいても、八ッ場ダム建設事業に係る予算については、「本体工事の準備に必要な関連工事を進めるための予算を計上。」と記載されている。 二の1について 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、河川法第十六条の二第一項に規定する河川整備計画の策定単位については、「河川法の一部を改正する法律等の運用について」(平成十年一月二十三日付け建設省河政発第五号・河計発第三号・河環発第四号・河治発第二号・河開発第五号建設省河川局水政課長、河川計画課長、河川環境課長、治水課長及び開発課長連名通達)において、「その策定単位は、一連の河川整備の効果が発現する単位として原則・・・一級河川の指定区間外は、水系ごとを基本とすること。・・・ただし、河川の状況に応じ上記単位によらないことができるものであること。」とされており、この通達に基づき、利根川水系の直轄管理区間における同項に規定する河川整備計画については、関東地方整備局において、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画、渡良瀬川河川整備計画、鬼怒川河川整備計画、小貝川河川整備計画、霞ヶ浦河川整備計画及び中川・綾瀬川河川整備計画(以下「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画等」という。)の策定を進めているところである。 二の2について 御指摘の「支川と本川に分離して本川の河川整備計画を先行して策定した」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十五年四月一日時点で、一級河川の直轄管理区間について、河川法第十六条の二第一項に規定する河川整備計画が策定されている水系の数は八十一、このうち、一の水系に係る一級河川の直轄管理区間を分割して複数の河川整備計画が策定されている水系は石狩川水系である。 二の3から5までについて 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画等については、関東地方整備局において、相互に整合を図りつつ、それぞれ策定を進めているところであり、それらの策定の予定時期についてはいずれも現時点で未定である。 三について 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、関東地方整備局は、第四回有識者会議において、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画で目標とする治水安全度について、おおむね年超過確率五十分の一とする旨を示したところである。しかしながら、その後、一の3についてで述べた八ッ場ダムの検証の過程において開催した八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場第一回幹事会における「適切な治水安全度を設定するように検討」することを希望する旨の意見等を踏まえ、八斗島地点における河川整備計画相当の目標流量を毎秒一万七千立方メートルと設定した報告書(素案)を公表したところである。さらに、一の3についてで述べた目指す安全の水準についての考え方において、利根川水系以外の直轄河川の河川整備計画では、河川整備計画の目標流量の規模はおおむね年超過確率二十分の一から七十分の一までの範囲となっていること等を踏まえた上で、利根川水系の社会・経済的重要性を考慮し、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画において目指す同地点における治水安全度を年超過確率七十分の一から八十分の一とすることが妥当であること及びこの年超過確率に相当する流量を算出すると毎秒一万七千立方メートルであることを示したところである。このように、関東地方整備局は、これらのそれぞれの段階において、治水安全度や目標流量についての考え方等を示すとともに、学識経験を有する者、関係住民等及び関係都県等からの意見聴取を実施してきたところであり、これらを踏まえて、同地点の目標流量を毎秒一万七千立方メートルとする河川整備計画(原案)を公表したところである。 四の1について 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、国土交通省は、より精度の高い流出計算モデル(以下「新モデル」という。)を構築し、新モデルによる洪水の再現性の検討等を行うこととし、その結果を「利根川の基本高水の検証について」として取りまとめ、平成二十三年九月に公表したところである。 また、当該検証に関しては、同年一月十三日に日本学術会議に学術的な観点からの評価を依頼し、同年九月一日に、新モデルについて、基礎方程式及び数値計算手法に誤りがないことを確認するとともに、観測データのない場合及び計画策定へ適用する場合に必要となる新モデルの頑健性を確認し、さらに、新モデルをそのような場合に適用したときの不確定性を評価した上で、新モデルによって計算された八斗島地点における昭和二十二年の既往最大洪水流量の推定値等は妥当である旨の回答を得たところであり、同省としては新モデルは妥当なものであると考えている。 なお、新モデルの構築に当たっては、同年十一月から昭和二十三年九月の治水調査会利根川小委員会及び昭和二十四年二月の同調査会利根川委員会における議論は基にしていない。 四の2について 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、関東地方整備局は、第五回有識者会議の資料―三―三(以下「第五回有識者会議資料」という。)の八ページにおいて、カスリーン台風における八斗島地点の最大流量の推定値である毎秒一万七千立方メートルについては、カスリーン台風における同地点上流の三地点のピーク流量付近の観測流量を流下時間の時間差を考慮して重ね合わせて算出したものである旨を示したところであり、さらに、この算出方法について分かりやすく説明するため、第五回有識者会議資料の九ページにおいて、「カスリン颱風の研究 利根水系に於ける災害の実相 日本学術振興会群馬縣災害対策特別委員会報告」を引用したものである。なお、河川整備計画(原案)における八斗島地点の目標流量については、前述のカスリーン台風における同地点の最大流量の推定値ではなく、三についてで述べた考え方等により毎秒一万七千立方メートルとしたものである。 五の1、4及び5について 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、第九回有識者会議で関東地方整備局が述べた約八千六百億円については、河川整備計画(原案)の作成時点において、河川整備計画(原案)に示した治水対策における具体的な事業に要する費用を積算したものであり、適切なものと考えている。 この約八千六百億円の内訳は、首都圏氾濫区域堤防強化対策が約千四百八十億円、堤防の整備が約千五百十億円、高潮対策が約六十億円、樹木伐採を含む河道掘削等が約三千億円、浸透・侵食対策が約三百六十億円、稲戸井調節池の整備が約五十億円、田中調節池の整備が約百三十億円、烏川調節池の整備が約八百七十億円、行徳可動堰の改築が約三十億円、江戸川水閘門の改築が約二百三十億円、江戸川の流頭部における分派対策が約百億円、内水対策が約三十億円、緊急復旧活動等の拠点整備等の危機管理対策が約百十億円、既存施設の機能増強が約二十億円、八ッ場ダムの建設が約五百五十億円である。 なお、一の3についてで述べた八ッ場ダムの検証に係る検討においては、「八ッ場ダムを含む治水対策案」において首都圏氾濫区域堤防強化対策に要する費用として、同案の作成時点における残事業費を計上しており、その額は約千六百八十七億円である。また、御指摘の「二千六百九十億円」は、現時点における同対策の全体事業費であり、既に施行したものに要した費用を含んでいる。 五の2及び3について 御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、河川整備計画(原案)の作成時点において、高規格堤防整備事業の具体的な施行の場所が未定であったことから、第十一回有識者会議において、関東地方整備局は、同事業に要する費用については「八千六百億円の中には現時点では含まれていない」と述べたものである。 なお、同事業はまちづくりと一体となって行う性格のものであるため、河川整備計画(原案)において、「まちづくり構想や都市計画との調整を行うことが必要であり、関係者との調整状況を踏まえつつ順次事業を実施する。」としている。 また、御指摘の「高規格堤防の整備に要する全費用」については、具体的な施行の場所ごとのまちづくり構想等との調整状況、地盤改良の必要性等を踏まえることが必要であるため、算出することは困難である。 |