質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一八三第二号
  平成二十五年二月五日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三   


       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員川田龍平君提出生活保護基準の見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出生活保護基準の見直しに関する質問に対する答弁書

一及び二について

 お尋ねの「生活保護基準を考慮して支給額が定められている他の制度」の意味するところが必ずしも明らかではないことから、網羅的かつ確定的にお答えすることは困難であるが、例えば、個人の道府県民税(個人の都民税を含む。)及び個人の市町村民税(個人の特別区民税を含む。)(以下「個人住民税」という。)の均等割及び所得割については、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第二十四条の五第一項第一号及び第二百九十五条第一項第一号(これらの規定を同法第一条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定により、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)の規定による生活扶助(以下「生活扶助」という。)を受けている者に対しては非課税とされている。また、個人住民税の均等割については、地方税法第二十四条の五第三項及び第二百九十五条第三項(これらの規定を同法第一条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定により、前年の合計所得金額が一定の金額以下である者に対しても非課税とされており、当該金額は、前年の生活扶助基準を勘案して定めることとしている。個人住民税の所得割については、同法附則第三条の三第一項及び第四項(これらの規定を同法第一条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定により、その者の前年の所得について同法第三十二条及び第三百十三条の規定により算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が一定の金額以下である者に対しても非課税とされており、当該金額は、前年の生活保護法第八条第一項の基準(以下「生活保護基準」という。)を勘案して定めることとしている。平成二十三年度の市町村税課税状況等の調の結果等に基づき推計すると、個人住民税の均等割の納税義務を有しない者の数は、同年度において約六千七百八十九万人、個人住民税の所得割の納税義務を有しない者の数は、同年度において約七千二百二十四万人であるが、生活扶助基準の見直しに伴い影響を受ける可能性があるのは、これらの者の一部であることに留意する必要がある。国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第七十六条の規定による給料等の差押禁止については、生活扶助の基準となる金額で給料等の支給の基礎となった期間に応ずるものを勘案して定める金額等により差し押さえることができない金額が定められている。この制度については、特定の者を対象とするものではないことから、対象者の数をお示しすることは困難である。経済的理由により就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒(以下「児童生徒」という。)の保護者に対する必要な援助(以下「就学援助」という。)については、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号。以下「学教法」という。)第十九条の規定により、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が行わなければならないこととされているほか、就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律(昭和三十一年法律第四十号。以下「就学援助法」という。)第二条の規定により、国は、市町村がその区域内に住所を有する児童生徒の保護者で生活保護法第六条第二項に規定する要保護者であるものに対して学用品費等を支給する場合には、予算の範囲内において、これに要する経費を補助することとされている。文部科学省が実施した調査によると、学教法第十九条の規定による援助の対象となった児童生徒の数は、同年度において約百五十七万人、就学援助法第二条の規定による補助の対象となった児童生徒の数は、同年度において約十五万人であるが、生活扶助基準の見直しに伴い影響を受ける可能性があるのは、これらの者の一部であることに留意する必要がある。保育所の保育料については、保育の実施義務を有する市町村長(特別区の区長を含む。)が、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第五十六条第三項の規定に基づき扶養義務者等の所得に応じて徴収しているが、同法第五十三条の規定に基づく私立保育所の保育費用に係る保育所運営費国庫負担金については、生活保護法による保護を受けている世帯等に属する入所児童に係る保育料は無料として算定することとしている。当該負担金の算定に当たって保育料を無料としている生活保護法による保護を受けている世帯等に属する私立保育所の入所児童の数は、平成二十三年十月一日において二万二千六百九十六人であるが、生活扶助基準の見直しに伴い影響を受ける可能性があるのは、これらの者の一部であることに留意する必要がある。また、児童福祉法による児童入所施設措置費等の一部については、生活保護基準の改定に準じて、その額を改定している。当該措置費等については、特定の者を対象とするものではないことから、対象者の数をお示しすることは困難である。国民健康保険制度においては、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第六条第九号の規定により、生活保護法による保護を受けている世帯(その保護を停止されている世帯を除く。以下同じ。)に属する者は、国民健康保険の被保険者としないこととされている。同号の規定により国民健康保険の被保険者とならない者の数は、把握していない。地域別最低賃金については、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第九条第二項の「地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」との規定及び同条第三項の「前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。」との規定に基づき決定することとされている。平成二十一年の経済センサス基礎調査の結果等に基づき推計すると、地域別最低賃金の適用労働者数は、同年七月において約五千百二十万人であるが、これらの者が生活扶助基準の見直しに伴い影響を受けるかどうかは、同法第十条第一項に規定する最低賃金審議会における調査審議において、同法第九条第二項の要素を考慮した上での最低賃金額の決定によるものであり、生活扶助基準の見直しに伴い影響を受ける可能性がある者の数をお示しすることは困難である。国民年金保険料については、国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第八十九条の規定により、国民年金の被保険者が生活扶助を受けているとき等は納付することを要しないとされている。同条の規定により国民年金保険料を納付することを要しないとされた者の数は、平成二十三年度末において約百三十一万人であるが、生活扶助基準の見直しに伴い影響を受ける可能性があるのは、これらの者の一部であることに留意する必要がある。戦傷病者特別援護法(昭和三十八年法律第百六十八号)第十八条第一項に規定する療養手当については、生活扶助基準の改定に準じて支給額を改定している。当該療養手当の支給対象者の数は、平成二十五年一月において一人である。後期高齢者医療制度においては、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第五十一条第一号の規定により、生活保護法による保護を受けている世帯に属する者は、後期高齢者医療の被保険者としないこととされている。七十五歳以上の者のうち、同号の規定により後期高齢者医療の被保険者とならない者の数は、平成二十二年七月一日において約三十三万人であるが、生活扶助基準の見直しに伴い影響を受ける可能性があるのは、これらの者の一部であることに留意する必要がある。六十五歳以上七十五歳未満の者のうち、同号の規定により後期高齢者医療の被保険者とならない者の数は、把握していない。中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(平成六年法律第三十号)による支援給付は、同法第二条第一項に規定する中国残留邦人等(明治四十四年四月二日以後、昭和二十一年十二月三十一日以前に生まれた者等であって、永住帰国した日から引き続き一年以上本邦に住所を有する六十歳以上の者に限る。)であって昭和三十六年四月一日以後に初めて永住帰国したもの等のうち、その者の属する世帯の収入の額がその者について生活保護基準により算出した額に比して不足するものに対して、その不足する範囲内において行うものとされている。福祉行政報告例(平成二十四年十月分概数)によれば、当該支援給付の対象者の数は、平成二十四年十月において七千二百三十人である。高額介護サービス費等(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第五十一条第一項に規定する高額介護サービス費及び同法第六十一条第一項に規定する高額介護予防サービス費をいう。以下同じ。)については、所得の状況等に応じた段階的な支給額が定められている。平成二十二年度の介護保険事業状況報告によれば、生活保護法第六条第一項に規定する被保護者(以下「被保護者」という。)であること等を要件としている段階に該当する介護保険の第一号被保険者であって、高額介護サービス費等を受給した者の数は、平成二十三年三月において約十万人であるが、生活扶助基準の見直しに伴い影響を受ける可能性があるのは、これらの者の一部であることに留意する必要がある。また、介護保険の第一号被保険者の保険料については、所得の状況等に応じた段階的な保険料率により算定されることとされている。平成二十二年度の介護保険事業状況報告によれば、被保護者であること等を要件としている段階に該当する介護保険の第一号被保険者数は、同年度末において約七十八万人であるが、生活扶助基準の見直しに伴い影響を受ける可能性があるのは、これらの者の一部であることに留意する必要がある。障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第二十九条第一項に規定する介護給付費及び訓練等給付費に係る負担上限月額については、障害者又は障害児の保護者(以下「障害者等」という。)及び当該障害者等と同一の世帯に属する者が被保護者等である場合に零とされている。国民健康保険団体連合会の支払実績によれば、被保護者等であることにより同法第十九条第一項に規定する介護給付費等に係る負担上限月額が零の障害者等の数は、平成二十四年九月において約八万人であるが、生活扶助基準の見直しに伴い影響を受ける可能性があるのは、これらの者の一部であることに留意する必要がある。また、同法第五十八条第一項に規定する自立支援医療費に係る負担上限月額については、障害者等及び支給認定基準世帯員(障害者自立支援法施行令(平成十八年政令第十号)第二十九条第一項に規定する支給認定基準世帯員をいう。)が被保護者等である場合に零とされている。平成二十三年度の福祉行政報告例によれば、自立支援医療費に係る負担上限月額を零として自立支援医療費の支給認定を行った件数は、同年度において三十一万七千六十一件であるが、生活扶助基準の見直しに伴い影響を受ける可能性があるのは、これらのうちの一部であることに留意する必要がある。ハンセン病問題の解決の促進に関する法律(平成二十年法律第八十二号)第十五条第二項に規定するハンセン病療養所非入所者給与金の援護加算については、ハンセン病療養所非入所者給与金の要援護加算者について、生活保護基準の例により測定したその者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとされている。当該給与金の援護加算の対象者の数は、平成二十四年十二月において四人である。また、同法第十九条第一項に規定する入所者の親族に対する援護については、要援護者について、生活保護基準の例により測定したその者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとされている。当該援護の対象者の数は、平成二十三年度末において三十五人である。
 地方公共団体による独自の制度については、把握していない。

三について

 今回の生活扶助基準の適正化を図るための見直しに伴い、生活扶助基準を参考にしているその他の制度の対象者に影響が生じる可能性はあるが、例えば、就学援助については、制度の趣旨や目的、実態を十分に考慮しながら、極力影響が生じないよう適切に対応してまいりたい。