質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第一四〇号

環境関連法における放射性物質の扱いに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年六月二十四日

平山 誠   


       参議院議長 平田 健二 殿



   環境関連法における放射性物質の扱いに関する質問主意書

 環境関連法については、放射性物質をその適用対象としない旨の規定(以下「適用除外規定」という。)が設けられていた。今国会において、「放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律」が成立し、大気汚染防止法など四法律の適用除外規定が削除されることとなった。これを踏まえ、以下質問する。

一 環境基本法や循環型社会形成推進基本法(以下「環境基本法等」という。)をはじめ環境関連法の中に、適用除外規定を設けた経緯について示されたい。

二 環境基本法等をはじめ環境関連法の対象から放射性物質を除外した代替策として、これまでいかなる法律等で規制を行ってきたのか、また、その実績について示されたい。

三 今回の東京電力福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)事故に伴う放射性物質の放出事故に限らず、過去にも原子力発電所及び東海村のJCO等の原子力関連施設から放射性物質が放出され環境汚染が発生した事案があった。その時に適用除外規定の削除など環境関連法の改正整備が必要だったと思料するが、政府の見解を示されたい。また、このような原子力発電所及び原子力関連施設からの放射性物質の放出に至った事例を示した上で、それに対する対応措置及びその結果について明らかにされたい。

四 福島第一原発事故によって環境中に放射性物質が放出されたことに対応するため、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(以下「放射性物質汚染対処特別措置法」という。)が議員立法によって制定され施行されたことに伴い、従前から適用除外規定が設けられていた廃棄物の処理及び清掃に関する法律をはじめ、環境関連法の改正整備が必要だったと思料するが、政府の見解を示されたい。

五 昨年、環境基本法等について適用除外規定が削除されたが、この時に合わせて環境関連法の改正整備が必要だったと思料するが、政府の見解を示されたい。

六 「放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律」では、適用除外規定が残っている十二の環境関連法のうち、大気汚染防止法など四法律に限定して適用除外規定を削除することとしているが、その理由について、個別の法律ごとに明らかにされたい。

七 ダイオキシン類対策特別措置法においては、耐容一日摂取量を法律で定め、規制対象の特定施設並びに大気、水質、土壌の環境基準及び排出基準を政令で定めている。放射性物質に関する監視及び規制等の諸施策についても、環境関連法の中で規制対象の特定施設並びに環境基準及び排出基準等を定める必要があると思料するが、政府の見解を明らかにされたい。

八 「放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律」による大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の改正事項について、常時監視及びその結果の公表の二項目に限定しての改正とした理由について示されたい。

九 前記八の質問に関連して、従前この常時監視及びその結果の公表を義務付けてきた都道府県知事及び政令市長等(以下「都道府県知事等」という。)に対して義務付けるのではなく、環境大臣の専管事項とした理由について示されたい。この理由については、従前の都道府県知事等が権限を持つことがなぜ不都合なのかという点についても明らかにされたい。

十 これまで大気汚染防止法及び水質汚濁防止法によって規制対象としてきた特定施設及び特定事業所のうち、放射性物質を取り扱っている事業所の数がいくつあるか示されたい。また、放射性物質を取り扱っている事業所の中で、この二法律の規制対象とはなっていない事業所(施設及び設備を含む。)がいくつあるか示されたい。

十一 福島第一原発事故による放射性物質及びその汚染物の環境中への放出により、放射性物質及びその汚染物を取り扱う事業所は、廃棄物処理施設、バイオマス発電施設そして除染等を行う自治体にも及ぶことになると思科するが、政府の見解を明らかにされたい。

十二 「放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律案」を閣議決定するに際して、都道府県及び市町村等地方公共団体の担当部課への事前説明及び了解を取り付けることは行っているのか、また、行っている場合には、どのような意見や要望が出されたか、その詳細について明らかにされたい。行っていない場合には、その理由を明らかにされたい。

十三 環境省の説明資料によれば、今回の環境関連法の改正で常時監視の対象としている放射性物質の種類について、放射性セシウム134及び137とストロンチウム90の三物質に限定しているが、その理由について示されたい。

十四 福島第一原発事故によって環境中に放出された放射性物質は三十一種類とされているが、それに間違いはないか。また、その種類を示されたい。さらに、三十一種類以外に、福島第一原発から排出されている汚染水中にはトリチウムが含まれていると思うが、このトリチウムについて常時監視の対象としていないのはなぜか、その理由について示されたい。

十五 今後、福島第一原発をはじめ全国にある全ての原子力発電所及び六ヶ所村の核燃料再処理施設や今回放出事故を起こした東海村のJ-PARCのような原子力関連施設での事故が起こり得る可能性は否定できない。もしそのような事故が発生した場合には、前記の三十一種類の放射性物質に限らず、半減期の短命のものを含めて相当数の放射性物質の排出の可能性があると考える。そのような事案に備えて、未然防止策及び通常時の立入検査並びに事故が発生した場合の対処方法等について明文で規定しておく必要があると思料するが、明文化に当たって今後検討が必要となる事項及び明文化までのスケジュール等について、示されたい。

十六 医療機関等で取り扱っているラジオアイソトープの取り扱い状況と管理状況及びその回収と処理状況について、また、これまでのこれらラジオアイソトープを取り扱っている事業所等からの漏洩事故及びそれに対する処置状況等について、明らかにされたい。また、今回の環境関連法の改正及び今後に予定されている各種環境関連法の適用除外規定の削除の際に、これらラジオアイソトープを取り扱っている事業所等への規制及び常時監視等の規定を設ける考えはないか、政府の見解を示されたい。

十七 「放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律」では、放射性物質の常時監視を環境大臣の専管事項とすることと規定しているが、環境省は、東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法及び放射性物質汚染対処特別措置法の制定によって、環境問題についての規制業務と合わせて事業執行官庁としての役割も担い、これまで災害廃棄物の処理処分や除染事業なども実施してきている。そうした事業執行官庁が環境規制を行うことに問題は無いのか。原子力行政では、事業執行官庁であった経済産業省から規制部門を切り離し、環境省に原子力規制委員会や規制庁を設置したが、その点から考えて矛盾は無いのか。

十八 環境省は、放射性物質で汚染されたがれき、生活ごみ、そして除染された土壌、草木などの取り扱いに当たって、減容化のために、もっぱら焼却を選択肢として実施しているが、放射性物質やその汚染物については、「拡散」、「焼却」、「希釈」しないことが欧米各国の原則であると思料する。「焼却」処理方式を推進する理由について、示されたい。
 安全基準を設け、福島第一原発周辺に保管し、安全基準以下のものについては、森の防潮堤や震災慰霊碑公園などにするという方法について、検討を行っていないのか。検討している場合、その結果を示されたい。

  右質問する。