質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第一三七号

NPO法人に対する補助事業、委託事業のあり方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年六月二十四日

加賀谷 健   


       参議院議長 平田 健二 殿



   NPO法人に対する補助事業、委託事業のあり方に関する質問主意書

 岩手県山田町で東日本大震災被災地の雇用創出事業を委託されたNPO法人が八億円近い事業費を受けながら乱脈経営で破綻し、被災者でもある従業員約百四十人が解雇されるなど大きな問題となっている。また、埼玉県では元暴力団幹部やNPO元理事らが行っていたいわゆる「生活保護ビジネス」、「貧困ビジネス」に関連し、業務上横領容疑で逮捕者が出ている。多くのNPO法人が真面目に献身的な取組を続けている中で、このようにNPO法人を悪用し税金を財源とする補助金などを不正受給するケースが後を絶たない。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 平成二十一年度地方の元気再生事業としてNPO法人「とんぼエコオフィス」(千葉県船橋市)が実施した「都市部における高齢化する団地の活力再生プロジェクト」の委託費の総額及びこのうちコミュニティカフェ「カフェカレーサ」の開業費用を示されたい。

二 とんぼエコオフィスが国土交通省に提出した報告書では当該法人が「カフェカレーサ」を開業したと受け取れる内容となっているが、これは事実か。

三 千葉地方裁判所平成二十四年(ワ)第四〇七号損害賠償請求事件判決では「カレーサは、別のNPO法人が開設した施設であり、とんぼエコオフィスは開設や運営に直接関わっていたわけではない」との判断が示されている。国からの委託費用に「カフェカレーサ」の開業費用が含まれていたのであれば、それは架空請求とはならないのか。

四 NPO法人アーモ福祉協会が情報公開制度に基づき入手したとんぼエコオフィスの「都市部における高齢化する団地の活力再生プロジェクト」に関わる領収証写しなどの経理関係資料(平成二十三年十二月十二日付 国関整総情第三六〇六号-一)等に疑義があるので、以下政府の見解を示されたい。

1 平成二十二年三月二十日付で株式会社総洋リサイクル(千葉県木更津市)から、とんぼエコオフィス宛に「二十一年度地方の元気再生事業、作業人件費として」四十七万八千八百円の領収証が提出されている。同様のケースが、他に二件計百八十九万円分あるが、株式会社総洋リサイクルの代表取締役は、とんぼエコオフィスの事務局長と同一人物であり、問題はないか。また、この支出は人件費とのことだが、一人一日当たりの人件費はいくらで計上されているのか。国の標準は一人一日いくらとなっているのか。国土交通省はこの種の人件費について「申請主義」と答えているが、NPO法人側が申請すれば委託事業費の範囲内でいくらであってもかまわないということか。
2 とんぼエコオフィスが行ったコミュニティカフェ事業に係る交通費の中に、ガソリン代が含まれているが、その資料によると、例えば二月の一か月間だけで、五回の給油がなされ、給油総量は百二十リットル余りになっている。これは走行距離にすると千キロメートルを超えるものと思われるが、とんぼエコオフィスとカフェカレーサの間は、往復したとしても十キロメートル程度しかなく、仮に一か月毎日往復したとしても、三百キロメートル程度にしかならない。一方、人件費支出報告の資料によると、二月にとんぼエコオフィスの代表者と事務局長(以下「両者」という。)が、コミュニティカフェ事業に従事した日数は、それぞれ四日と五日であり、仮に個別に行動したとしても九日にしかならない。ガソリン代はどう見ても過大に請求されていると思われるが、いかがか。
3 前記四の2の交通費の中に、とんぼエコオフィスのある船橋市近辺でのコインパーキングの領収証が多数ある。両者の実働日数から考えて明らかに過大である。両者がとんぼエコオフィスでの他の執務のために駐車していたと考えるのが適当ではないか。
4 平成二十二年三月二十日付のとんぼエコオフィス代表理事発の「仕切り書」として六十三万円が支払われているが、「仕切り書」の宛名がない。これでは誰宛に何のために金銭が支払われたか分からない。同様のケースが、平成二十一年十一月六日付で百十三万四千円ある。このような杜撰な使途に国民の税金が使われていることについて、政府の見解を明らかにされたい。
5 Suicaの利用金額の総計として二十六万三千九百七十二円が支払われているが、とんぼエコオフィスの最寄のバス停であるJR船橋駅前からバスで金杉台団地に行くと往復で五百円である。人件費支出報告の資料によると、両者はそれぞれ一か月当たりコミュニティカフェ事業のため働いた日数は二から五日である。Suicaは鉄道やバスの運賃以外にも使用可能であり、どう考えても、同事業以外の使途分もあわせて請求していると考えるのが適当であると思うが、いかがか。
6 前記四の5のSuicaの利用金額分とは別に、東京・仙台間の交通費、東京・新大阪間の交通費、京都でのホテル代等が支払われている。船橋の団地活性化のために、なぜ、これらの地域への交通費や宿泊代が必要なのか。
7 とんぼエコオフィスの協力団体の仙台事務所や東京事務所における多額のプロバイダー使用料が計上されている。船橋の団地活性化のために、なぜ、これらの地域でのプロバイダー使用料が必要なのか。
8 前記二の報告書の十九ページに、とんぼエコオフィスは、コミュニティカフェは船橋市からの補助金を得て開設されたと記している。国土交通省側はそれぞれ別の費目での支出で問題ないとしているが、事業全体として自治体の補助金と国の委託事業費という税金が二重に支払われることは、NPO法人のあるべき姿や税金の使途の面から問題はないのか。

五 とんぼエコオフィスの事務局長が代表を務める「印旛・手賀沼環境あっぷ協議会」(千葉県鎌ケ谷市)は、内閣府の平成二十二年度及び二十三年度「地域社会雇用創造事業」に関連し、別のNPO法人が受託した「企業支援・人材育成事業」のうち千葉、埼玉、茨城、栃木及び群馬の五県においてインターンシップ事業を実施したとして人件費など二千七万一千円の委託費を受けている。しかし、同協議会に対する監査法人による監査は実施されていない。同事業は多額の税金を使った事業であり、その委託費が適正に使用されたか確認するためには、再委託先に対しても監査が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

六 特定非営利活動促進法(NPO法)はその第一条で「市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする」と定めている。このため、設立やその後の運営、収支報告などに関する公の監査は抑制的に定められている。しかし、税金による補助、委託事業等の場合は、当然に相当な監査が行われるべきであり、この点について、法改正等何らかの対策が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

七 補助金、委託事業費の使途に不適切なものや不正なものがあれば、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律や刑法に抵触する場合もありうると考える。ところで、公務員には不正を知った場合、告発義務があるため、補助事業、委託事業等で職務に関して公務員が不正を知り、あるいは疑惑を持ったときには捜査機関に告発すべきと理解しているが、その理解でよいか。

  右質問する。