質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第一二七号

地方衛生研究所の地方独立行政法人化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年六月十七日

江崎 孝   


       参議院議長 平田 健二 殿



   地方衛生研究所の地方独立行政法人化に関する質問主意書

 地方衛生研究所は、地域保健対策の効果的な推進、公衆衛生の増進を図るための科学的、技術的中核であり、保健所と一体となって健康危機管理を担っている。現在、大阪府及び大阪市において、地方衛生研究所の統合、地方独立行政法人化が進められているが、地方衛生研究所の地方独立行政法人化については、健康危機管理等の観点から疑問の声がある。こうした観点から、以下質問する。

一 地方独立行政法人法は、地方独立行政法人の対象業務について「地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないもの」と定めているが、地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要性の有無については誰が判断するのか。また、その判断基準を具体的に示されたい。

二 平成九年十二月の行政改革会議最終報告では、独立行政法人の対象業務外となる「国が自ら主体となって直接実施しなければならない事務・事業」として、「公権力の行使に当たる事務・事業」及び「重大な危機管理に直結し、直接国の責任において実施することが必要な事務・事業」を掲げるとともに、試験研究業務のうち「直接行政活動に携わるなど特別な業務に当たるもの及び政策研究機関」を独立行政法人の対象業務から除いている。地方独立行政法人の対象業務についても、同様に解すべきと考えるがどうか。

三 国立感染症研究所が独立行政法人化されず、国立で運営されている理由は何か。国立感染症研究所の業務は、前記二に掲げた事由に該当し、国が自ら主体となって直接に実施する必要があるからではないのか。そうであれば、地方衛生研究所の業務も、同様に、地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要がある業務と解すべきではないか。

四 感染症や食中毒などの健康危機事例が発生した場合、地方公共団体は、地方衛生研究所が行った試験検査等に基づき、公衆衛生上必要な公権力を行使する。すなわち、地方衛生研究所の業務は、危機管理に直結し、かつ公権力行使の基盤として地方公共団体の公権力行使と不可分のものであることから、独立行政法人の業務にはなじまないと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 平成二十四年七月三十一日厚生労働省告示第四六四号により、「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」に地方衛生研究所の機能強化が盛り込まれ、地方衛生研究所を設置する地方公共団体は、地域における科学的かつ技術的に中核となる機関として地方衛生研究所の機能の一層の充実強化を図ることとされた。地方衛生研究所の独立行政法人化は、この趣旨に反するのではないか。

六 平成十八年度厚生労働科学研究「地方衛生研究所のあり方および機能強化に関する研究」の研究成果である「健康危機管理のための地方衛生研究所のあり方(提言)」において、地方衛生研究所の業務は、住民の重大な「健康危機管理」に関わる業務であるので、直接行政の責任において実施すべき業務であり、独立行政法人化にはなじまない旨の提言がなされているが、政府はこれをどう評価しているか。

七 地方衛生研究所は、保健所と一体となって、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」という。)」の積極的疫学調査を行っており、これは法定受託事務とされている。国が本来果たすべき役割に係る事務であって、国においてその適正な処理を特に確保する必要がある法定受託事務を地方独立行政法人が行うことを妥当と考えるか。また、仮に独立行政法人が法定受託事務を行う場合、国として事務の適正な処理をどのように確保するのか。

八 現在、地方のサーベイランス事業を実質的に担っているのは地方衛生研究所であるが、地方衛生研究所が独立行政法人化された場合、公務員から民間に職員の身分が移行することにより、感染症法の積極的疫学調査に直接関与することができなくなるなど、健康危機管理対策に支障が生じる懸念はないか。また、特定地方独立行政法人(いわゆる公務員型)と地方独立行政法人(いわゆる一般型)とで、疫学調査等への関与の度合いはどのように異なるのか。

九 食品衛生法第二十九条は、都道府県及び保健所設置市等に食品衛生検査施設の設置を義務付けている。地方衛生研究所以外に食品衛生検査施設がない場合、地方衛生研究所を独立行政法人化することは同条違反になるのではないか。厚生労働省は、平成二十四年八月二十二日、大阪府及び大阪市からの疑義照会に対し、独立行政法人を食品衛生法第二十九条に規定する食品衛生検査施設と解して差し支えない旨回答しているが、その根拠は何か。また、平成十八年一月二十日付け通知で、「地方独立行政法人は、地方公共団体とは独立した法人格を有するもの」であり、地方独立行政法人は、法第二十九条において設置が義務付けられている食品衛生検査施設になることはできないとしていたこととの整合性をどう考えるのか。

  右質問する。