質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇五号

医薬品のインターネット販売に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年五月二十二日

蓮舫   


       参議院議長 平田 健二 殿

医薬品のインターネット販売に関する質問主意書

厚生労働省では、本年一月十一日の最高裁判所の判決を受けて、「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」(以下「新検討会」という。)が行われているところである。インターネット販売を含む医薬品の販売規制に関する政府としての認識に関し、次の事項について質問する。なお、ここでの「医薬品のインターネット販売」とは、薬局としての許可又は店舗販売業の許可を取得している者が薬局又は店舗における販売に併せてインターネットという手段を用いて行う販売を指すものとし、以下「ネット販売」という。

一 テレビ電話の義務付けについて

本年五月九日の日本経済新聞(第一面・第五面)の記事に関連して、質問をする。

1 厚生労働省は、ネット販売にテレビ電話を通じたやりとりを義務付ける方針とのことであるが、店舗を拠点として薬剤師がインターネットや電話、メール等を利用して購入者との間で行うコミュニケーションでは副作用被害を防止できず、テレビ電話によって初めて副作用被害を防止できる一般用医薬品があれば、その医薬品名、その副作用の種類、発生の理由・程度・頻度を具体的に示されたい。また、そのように考える科学的根拠を示されたい。
2 メールや電話では判断できず、テレビ電話では判断できる場合があるという前提に立つのであれば、それは実質的には薬剤師が医療行為を行うことを意味しないか。また、薬剤師は、テレビ電話によって患者の画像を確認したら、病状や治療方針あるいはその心理を判断できる専門家であるのか。それはどのような教育・試験によって獲得した能力であるのか。
3 テレビ電話とはどのような機能を満たすものを想定しているか。また、かかるテレビ電話はどの程度普及し、利用されているのか。テレビ電話を利用できない国民はネット販売という有用な手段の利用が認められないのか。ネットを利用して一般用医薬品を購入している需要者はこれにより適切に病気を治療する利益を受けているが、テレビ電話による副作用防止の利益はそれに勝るものか、政府の見解如何。実証的な根拠とともに示されたい。
4 テレビ電話を義務化するのであれば、義務化の必要性と合理性を支える立法事実が不可欠であり、テレビ電話によらなければ、事後の治療では回復が困難な副作用被害を有意的に防止することができないことを厚生労働省が証明しなければならないと考えるがいかがか。
5 本年一月十一日の最高裁判所判決によれば、現行薬事法は「文理上は郵便等販売の規制並びに店舗における販売、授与及び情報提供を対面で行うことを義務付けていないことはもとより、その必要性等について明示的に触れているわけでもなく、(中略)また、新薬事法の他の規定中にも、店舗販売業者による一般用医薬品の販売又は授与やその際の情報提供の方法を原則として店舗における対面によるものに限るべきであるとか、郵便等販売を規制すべきであるとの趣旨を明確に示すものは存在しない。」としており、省令によってテレビ電話を義務付けることは、現行薬事法の授権の範囲を超えた違法無効なものとなると考えるが、政府(内閣法制局)の見解如何。
6 現行薬事法は第三十六条の六第四項において、「第一項の規定は、医薬品を購入し、又は譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があつた場合には、適用しない。」と定めており、これは現行薬事法が情報提供を受けるか否かを消費者の選択に委ねているものと考えるが、政府(内閣法制局)の見解如何。仮に何らかの明文にない要件を要求している趣旨と解釈する場合は、明確性の原則との関係でその根拠及び正当化される理由を明らかにされたい。

二 安全性確保のための方策のイコールフッティングについて

第九回新検討会(本年五月十六日開催)においては、第一類医薬品(薬事法第三十六条の三第一項第一号)は特に慎重な取扱いをする必要があるため、「⑦症状の性質、状態等のうち、専門家が目視でのみ確認できるもの、⑧症状の性質、状態等のうち、専門家が嗅いだり、接触することでのみ確認できるもの、⑨購入者の挙動」(第九回新検討会資料一)を含む使用者についての最大限の情報を取得する必要があるとの見解が示されている。

1 薬剤師が使用者について目視や接触、挙動を含む最大限の情報を取得しなければ副作用被害を防止することが困難な第一類医薬品はあるか、具体名を挙げて示されたい。また、その実証データの存在如何。
2 現行制度上、家族などの使用者以外が医薬品を購入する代理購入が認められているが、第一類医薬品について、症状の性質、状態等の目視や接触、挙動を含む最大限の情報を取得しなければ副作用被害を防止できないのであれば、代理購入を禁止すべきこととなる。代理購入によっては防止可能であるにもかかわらず、ネット販売では防止することができない被害があるとする場合、その科学的根拠を示すとともに、実証データの有無を明らかにされたい。
3 現行制度上、いまだ症状が出ていないときに常備目的で医薬品を購入することが認められているが、第一類医薬品について、症状の性質、状態等の目視や接触、挙動を含む最大限の情報を取得しない限り副作用被害を防止できないのであれば、常備目的の購入を禁止すべきこととなる。常備目的の購入については防止可能であるにもかかわらず、ネット販売では防止することができない被害があるとする場合、その科学的根拠を示すとともに、実証データの有無を明らかにされたい。また、配置販売は医薬品の常備を目的とした販売方法であるが、配置販売による第一類医薬品について副作用を生じやすいという実証データはあるか。ある場合、配置販売はなぜ禁止されないのか。ない場合には、なぜ副作用が生じないのか示されたい。調査をしていないのであれば、その理由を明らかにされたい。
4 第一類医薬品について、ネット販売の禁止と同時に店舗での対面販売における代理購入や常備目的の購入を禁止すれば、一般用医薬品について需要者の選択の機会を著しく狭めることになると考えるがいかがか。また、そもそも店舗における対面販売において、身元確認や購入履歴の確認なしに代理購入や常備目的の購入の禁止の実効性を担保するのは不可能と考えるがいかがか。可能とすれば、どのような方法によるのか明らかにされたい。また、それがネット販売では不可能とするならば、その根拠も具体的に明らかにされたい。

三 いわゆるスイッチOTC等のネット販売禁止について

第九回新検討会及び本年五月十日の読売新聞の記事に関連して、質問をする。

1 厚生労働省は、第一類医薬品のうち販売開始後四年以内のもの(いわゆるスイッチOTC等)のネット販売を禁止する方針とのことであるが、いわゆるスイッチOTC等についても、厚生労働省における承認審査によって、一般用医薬品すなわち「その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないもの」(薬事法第二十五条)と評価されたものである。また、「一般用医薬品承認審査合理化等検討会」が平成十四年十一月八日にまとめた中間報告書には、医療用医薬品から一般用医薬品への転用にかかるリスク評価を策定するうえでの具体的な基準「スイッチ成分の選択の要件」として、①医療用としての使用実績があり、再審査又は再評価が終了しており、副作用の発生状況、海外での使用状況、再審査又は再評価結果等からみて一般用医薬品として適切であること、②医師の指導監督なしで使用しても、重篤な状態になるおそれのないもの、③習慣性、依存性、耽溺性がないこと、④麻薬、覚せい剤、覚せい剤原料、毒薬、劇薬でないこと、⑤薬物相互作用により重篤な副作用が発生しないこと、⑥国民の選択の幅の拡大が期待できるもの、であることが挙げられている(「医療政策における『医療用医薬品』から『一般用医薬品(第一類医薬品)』への積極的な転用に関する質問主意書」に対する答弁書(内閣参質一七四第九四号))。それにもかかわらず、薬剤師が使用者について目視や接触したり、挙動が確認できない限り、副作用被害を防止することが困難なものがあれば、具体名を挙げてその根拠を示されたい。また、その実証データの存在如何。
2 いわゆるスイッチOTC等について、薬剤師が使用者を目視・接触できないことを理由にネット販売、代理購入・常備目的の購入を禁止すれば、かかる医薬品についての需要者の選択の機会を著しく狭めることになると考えるがいかがか。

四 乱用等のおそれがある医薬品の販売規制について

第九回新検討会において、「コデインリン酸塩水和物、プソイドエフェドリン塩酸塩等を含有する製剤」については、乱用等のおそれがあるためネット販売を禁止すべきとの意見が提出された。しかし、大量購入の問題は店舗販売においても同じく起きることである。しかも、ネット販売の場合には購入履歴が残るので、店舗販売よりは問題が少ない。したがって、大量購入による乱用を防止する観点からは、店舗における対面販売であってもネット販売であっても、法律又は省令によって販売個数の制限及び住所氏名年齢確認の義務化を行ってはいかがか。

右質問する。