質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇四号

十一か国とのTPP事前交渉に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年五月二十一日

又市 征治   


       参議院議長 平田 健二 殿



   十一か国とのTPP事前交渉に関する質問主意書

 TPP(環太平洋パートナーシップ)交渉に参加する米国など十一か国は去る四月二十日、インドネシアで閣僚級会合を開き日本の交渉参加を正式に承認した。しかし、政府は十一か国と具体的にどのようなやり取りがあったのか、日本側が何を表明したのか、何らかの形で実質的な譲歩を迫られていないのか等、事前協議の詳細を国民に公表しておらず、また、政府発表と他国の発表との食い違いも目立つ。
 七月に参加するというTPPの本交渉において、安倍首相が唱える「聖域」をどう確保し、「国益」をどう擁護する意図なのか。国民はこれをチェックするため、各国との事前協議の経過と結果を知ることが必須であり、そのためには十分な情報公開がなされるべきと考えるので、以下質問する。

一 十一か国との事前協議の全体像について

 TPP交渉参加十一か国との事前協議で日本は各国からどのような内容を求められ、日本側は何を主張したのか。その結果、決定された事柄は何か。事前協議の全体像を示されたい。

二 四月十二日の日米合意の発表の相違点について

 四月十二日に日本の交渉参加で日米両政府が合意した際、両国がそれぞれ独自に発表した文書には大きな食い違いがある。
1 日本側が発表した「日米協議の合意の概要」では、保険などの非関税措置について「TPP交渉と並行して取り組む」とされているだけだが、USTR(米国通商代表部)文書「日本との協議事項報告」では、「日本郵便の保険事業」と、かんぽ生命保険を名指ししている。両者の違いはなぜか。政府は米国側の右の名指しを、事前または事後に是認したのか。
2 日本側文書に盛り込まれた「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にある」の部分は、USTR文書からは抜け落ち、農業にも言及していない。この違いはなぜか。また、政府は前記部分を米国側に、事後的にせよ認めさせ、合意文書化する努力をしたか。
3 米国側文書には「日米共同声明に記載されている通り、日本政府は全ての産品を交渉のテーブルに載せる」と明記されている。この部分は合意したのか、また政府はなぜこの部分を公表しなかったのか、政府の見解を示されたい。
4 以上のように両国の文書には多くの個所で齟齬がある。各相違点は国民にとって生活や営業に直結した死活問題である。一方が公式に発表した点については、他方の発表に無くても、合意したらしいと国民は受け止めざるをえない。この解釈でよいか。
5 USTRのマランティス代表代行が四月二十四日に米議会に送った書簡の記載に「日本はまた、全ての物品(農産品と工業製品の双方)を交渉の対象とすること、及び他の交渉参加国とともに高い水準で包括的な協定を本年達成していくことを確認した」とあるが、「日本は(中略)確認した」ことは事実か。
6 日米事前協議で、前記二の1から5のほかにどのようなやり取りがなされ、何が合意されたのか、分野ないし品目ごとに明らかにされたい。

三 非関税障壁をめぐる日米並行協議項目について

 USTR文書には、今後の日米並行協議の対象となる九分野の非関税措置の詳細が記されているが、これは合意されたものか。
 また、日本側からはこうした文書は発表されていないが、どのような理由からか。さらに、非関税措置の協議開始をめぐり日米間でどのような合意がなされたのか、右の九分野ごとの「詳細」に沿って具体的に、今後の協議の日程とともに示されたい。

四 米国以外の十か国との事前協議内容の非公表について

 TPPは多国間貿易交渉であるにもかかわらず、政府は米国以外の国々との事前協議内容を明らかにせず、ただ「承認された」と報じられるのみである。成立すれば多国間協定として将来にわたり日本国民の行動を多角的に縛るものである以上、これら十か国との事前協議の内容は、協議に参加する前提として国民が当然、知るべき重要な情報であるので、これを明らかにされたい。

五 オーストラリア、ニュージーランド、カナダのいう例外なき関税撤廃について

 オーストラリア、ニュージーランド、カナダの三か国は米国同様、関税撤廃の例外を設けないよう主張しており、日本の主張との関係で懸念を感じている。これら三か国との関税問題をめぐる事前協議内容について、具体的に示されたい。

六 カナダとの自動車関税交渉について

 カナダとは自動車の関税をめぐる問題で、最後まで交渉が難航したと報道されている。カナダ政府と自動車関税問題をめぐってどのような合意がなされたのか、示されたい。

  右質問する。