質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第九二号

インターネットによる選挙運動解禁を受けた対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年五月七日

藤末 健三   


       参議院議長 平田 健二 殿



   インターネットによる選挙運動解禁を受けた対応に関する質問主意書

 本年四月十九日に公職選挙法の一部を改正する法律(以下「改正公職選挙法」という。)が成立したことにより、次回の参議院議員通常選挙からインターネットによる選挙運動が解禁されることとなった。そこで、インターネットによる選挙運動の実施に当たり想定される課題とその対策等に関し、以下質問する。

一 誹謗中傷・なりすまし対策等

1 ウェブサイト等に、特定候補者・政党等に係る虚偽の情報が掲載された場合、当該候補者・政党等の選挙運動に深刻な影響が及ぶおそれがある。こうした事態への対策の一つとして、改正公職選挙法では、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)の特例が設けられ、候補者・政党等からプロバイダ等に情報削除の申出があった場合の削除同意照会期間について、通常の「七日」から「二日」に短縮された。この特例の実効性を高めるには、プロバイダ責任制限法の運用改善も必要と考えられる。改正公職選挙法の成立を受けて、電気通信事業者等により構成され、関係省庁もオブザーバーとして参加する「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」では、インターネットによる選挙運動に伴う対応に係る検討が進められていると承知しているが、これに関連して、次の二点について政府の見解を示されたい。
(1) 各プロバイダに対し、候補者・政党等からの情報削除の申出を受け付ける専用の連絡窓口の設置を義務付け、その連絡先を候補者・政党等が把握できるような仕組みを設けるべきではないか。
(2) 現行のガイドラインでは、プロバイダ責任制限法による削除申請手続を郵送により受け付けることとされているが、手続の簡素化が必要ではないか。
2 改正公職選挙法では、選挙運動用電子メールの解禁主体や送信先の限定に係る規定の違反等について、新たな罰則規定が設けられている。これらの罰則規定について、構成要件該当性の判断基準を明確かつ具体的に示していく必要があると考えられるが、どのような方法により周知していく予定かも含め、政府の見解を示されたい。
3 参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会における改正公職選挙法に対する附帯決議では、「政府は、海外からのインターネットを利用した選挙の公正を阻害するような行為につき、必要な対策を講ずること」とされている。そこで、具体的にいかなる対策が考え得るのか示されたい。

二 選挙管理委員会への支援等

1 インターネットによる選挙運動の解禁に際しては、選挙管理委員会の対応能力を高めるため、政府による各種研修の開催等が必要になると考えられるが、その実施に係る政府の方針を示されたい。
2 韓国では、インターネットによる選挙運動に係る不正行為を監視するため、選挙管理委員会に専門の部署が置かれている。我が国においても同様の対応を取るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 インターネットによる選挙運動の解禁と選挙運動費用

1 一般に、インターネットによる選挙運動を解禁することによる効果の一つとして、選挙運動費用の削減が可能となることが挙げられる。そこで、今回の改正公職選挙法が選挙運動費用にどのような影響を及ぼすと見込まれるか。政府の見解を示されたい。
2 改正公職選挙法により政党等による有料バナー広告の使用が認められることを受けて、選挙に係る経費の増大や政党の資金力による格差が生じることが懸念されている。そこで、政党等による有料バナー広告に係る経費については上限を設けるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
3 インターネットによる選挙運動については、従来の方法による選挙運動以上に、選挙運動と政治活動の線引きが難しくなると考えられる。そこで、選挙運動期間前に多額の経費をかけて作成した政治活動用コンテンツを、選挙運動に流用することは可能か、政府の見解を示されたい。また、選挙運動への流用が可能である場合、当該コンテンツ作成に要した経費は、選挙運動費用に算入され、選挙運動費用収支報告の対象となるのか、併せて見解を示されたい。

四 将来的な技術革新への対応等

1 改正公職選挙法では、電子メールについて、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(以下「特定電子メール法」という。)の定義を用いている。特定電子メール法は、電子メールの定義規定(特定電子メール法第二条第一号)において、具体的な通信方式については総務省令に委任しており、これを受けた特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令が、該当する通信方式を「その全部又は一部においてシンプルメールトランスファープロトコルが用いられる通信方式」(以下「SMTP」という。)及び「携帯して使用する通信端末機器に、電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式」(以下「SMS」という。)と規定している。これに関連し、次の二点について政府の見解を示されたい。
(1) 今後、SMTPやSMSを用いない電子メールサービスが提供されるようになり、前述の総務省令に規定された通信方式が改正されることとなれば、公職選挙法の運用にも影響が及ぶ。そこで、総務省令に規定された通信方式を改正する際には、その施行前に、議員を含め、幅広い周知を行うことが重要となるが、どのように取り組む方針か。
(2) 改正公職選挙法の審議において、SNSのメッセージ機能等は電子メールに当たらないとの説明がなされたが、その一方で、SNSが内部で用いている技術については非公開の部分もあるとされる。今後、特定のSNSのメッセージ機能においてSMTPが用いられていることが判明した場合は、当該SNSのメッセージ機能についても電子メールとして扱われることになるのか。
2 インターネット検索サイトにおける検索結果の表示順は、ウェブサイト閲覧者数の増減に大きな影響を及ぼすと言われている。選挙に関する検索サイトの利用に関連し、検索結果の表示順が不正に操作されるようなことがあれば、選挙の公正が阻害されることになりかねない。そこで、これに関連し、次の二点について政府の見解を示されたい。
(1) 検索サイトにおける検索結果の表示順が不正に操作されていると考え得る事態が生じた場合、政府としていかなる措置を講ずることが可能と考えられるか。
(2) 検索サイトを運営する企業の中には、その主要な機能を海外に置くものも存在するが、こうした企業に対し、政府としていかなる対応を求めることが可能と考えられるか。

  右質問する。