質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第八二号

一般用医薬品販売の実態と改善に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年四月二十三日

又市 征治   


       参議院議長 平田 健二 殿



   一般用医薬品販売の実態と改善に関する質問主意書

 一般用医薬品のネット販売については、本年一月十一日の最高裁判決(以下「判決」という。)で国が敗訴し、現在明確なルールが無いままであるところ、厚生労働省は、二月十四日に「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」(以下「検討会」という。)を立ち上げ、第一回会合を開いた。ところが、政府・与党では検討会の審議開始に先回りして、一般用医薬品のネット販売に関する薬事法改正案を取りまとめたと報道されている(二月四日)。その概要は、「第二類医薬品」のネット販売を条件付きで解禁、特にリスクが高い「第一類医薬品」のネット販売は禁止を明記するとのことであり、「今国会での同法改正を目指す」とも報道されている。さらに、三月八日の政府の規制改革会議の見解はそれを超えて、「インターネット等で全ての一般用医薬品の販売を可能とする」とまで踏み込んでいる。
 これに比べて厚生労働省の判決への対応は遅い。第一回検討会以降、四月五日の論点整理になっても議論に進展なく、検討会の外では、早くも大手小売事業者による一般用医薬品のネット販売が始まっている。
 私は二〇〇九年十一月三十日に、「薬事法施行の問題点に関する質問主意書」(第百七十三回国会質問第七八号)を提出し、「疑念・争点となっているIT販売、伝統薬等の医薬品通信販売、事業所を対象にした配置販売、医薬品の代理人による購入等々については、新法の原点に沿って、専門家による医薬品の対面販売の原則の定義を明確化し、その条件に適合するか否かで、対応をすべきではないか。」と質した。政府は答弁書(内閣参質一七三第七八号)で「薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第三十六条の五、第三十六条の六等の規定から明らかである」と答弁していたが、明確な行動を採らないまま、今回の裁判、判決を迎えた。
 私は判決後の二月十三日に、「一般用医薬品のネット販売に関する質問主意書」(第百八十三回国会質問第二六号)を提出し、一般用医薬品販売制度の定着状況を質すとともに、「一般用医薬品のネット販売の混乱は、現行薬事法の曖昧さに一因があり、ネット、店舗、配置、それぞれの販売形態の共通のルールとして「対面販売の原則」を薬事法に明文化することで安全性を担保し、安全性と利便性を両立すべきである」との立場から質問をした。
 政府の答弁書(内閣参質一八三第二六号。以下「答弁書」という。)では、問二の「検討会の人選に関する厚生労働大臣の方針」に対して、「構成員以外の有識者からの意見聴取等も行われるものと考えている。」との答弁であった。しかし実際には、三月二十二日の第四回検討会で配置販売業など検討会の委員以外の利害関係者から意見聴取をしたものの、質疑応答も十分なされず、僅かな時間での機械的な聴取で終わった。また、問六の「消費者庁との連携」に対しては、「インターネット販売等に関する制度の見直しについては(中略)同庁と連携して取り組んでまいりたい。」との答弁であったが、同庁との連携は垣間見えない。答弁書では概して、「検討会で議論されているところであり、その結果を踏まえて適切に対応してまいりたい。」といった閉鎖的な答弁が主であった。
 このように私は一般用医薬品の販売についてこれまで幾度となく質問し、厚生労働省はそれを一部受けて通知等を出すこともあったが、制度の定着状況は芳しくない。
 判決にもあるように、法に裏付けされない省令、通知、通達による裁量行政で被害を被るのは国民、振り回されるのは地方行政・業界であり、自治体担当者からは、「薬事法に則る、明確な文言による通知や指導マニュアルがない限り、本気で指導するつもりはない」等の声が聞こえてくる。
 このままでは、セルフ・メディケーションも登録販売者制度も無用となり、一般用医薬品から処方箋薬まで、自己責任と製造物責任の下でのインターネット等による医薬品販売の方がよいと言われかねない。ネット販売等の新たなルールを作り、法に裏付けされた行政を行うためにも、省令等の不合理な点や足らざる部分を徹底して洗い出し、薬事法に明記する必要がある。
 一般用医薬品の販売に関しては現在、ネット販売の是非とは別に、新制度である登録販売者の資格試験における実務経験を詐称した不正受験や、店舗・配置の現場における専門家の対面による情報提供・相談応需のルールが守られていない現状が報告されており、制度の実効性が危機に瀕している。
 これら不正行為を放置したまま、ネット販売等を拡大する新ルールを追加すれば、事態の混乱を助長し、国民・消費者の被害が増すばかりか、改正薬事法の目玉であった登録販売者制度の崩壊は確実である。
 よって、政府の速やかな対処を求める立場から、以下質問する。

一 登録販売者試験の不正受験について

1 不正受験への厚生労働省等の対処
 私は、二〇一〇年十二月三日に提出した「医薬品販売に関する質問主意書」(第百七十六回国会質問第一九四号)で、「新配置販売業の一般従事者の現状について、富山県厚生部くすり政策課から同年七月二十六日付けで公表された『平成二十一年度医薬品配置販売業及び従事者総数全国集計(平成二十一年十二月三十一日現在)』によれば有資格者率が全国平均で二十一・六パーセント、最低では四・八パーセントと低い実状がある。一人の登録販売者に二十人の一般従事者の身分証を発行した和歌山県を筆頭に、複数の地方自治体で専門家より一般従事者の身分証明書申請が多くある。一般従事者が単独で配置に従事する状況があり、情報提供する意思が感じられない。」と指摘し、「専門家による指導監督が十分にできるのか、一般従事者は十分な実務経験が得られるのか、また、消費者に対し十分な情報提供や相談応需ができるのか甚だ疑問である」との立場から質問した。
 配置販売業では、専門家は管理者(区域管理者)として都道府県に一人でもよいとされているため、配置員については、専門家に比して一般従事者の数が多い。このことが実務経験期間や研修を回避して安易に資格を得ようと不正受験に走る(または従業員にそれを教唆する)誘因となり、左記の事例が報道された。
(1) 二〇一一年三月九日、「配置販売業者の日本配薬は、全国柔整鍼灸共同組合員二百八十五人に計六百五十通の証明書を発行し、不正を確認」と報道された。これに対し奈良県薬務課は、「日本配薬は従業員六人の規模にもかかわらず、従事者としての使用契約を三百三十四人と交わしていた」とし、実務経験証明の管理監督は実際上、不可能な状況にあったと認定し、二〇一〇年十一月十七日警告書(管理不備と偽造証明)を出した。
(2) 二〇〇八年四月から二〇一二年十月末にかけ、自治体から厚生労働省に報告した不正受験者数が延べ二百一人に上っている。加えて、二〇一二年十一月六日に大手スーパー西友が、不正な証明書を発行した従業員は三百五十二人。そのうち二百八十二人が発行要件を満たしておらず二百人が登録販売者試験に合格。百一人が医薬品販売に従事している。
(3) ドラッグストアのカメガヤは、試験の合格者四百六十二人のうち、約百九十人が受験要件の勤務時間や期間を満たしていなかった。発覚した不正では、同じ店内の化粧品や食品売り場担当時間も加算し、実務経験時間の水増しが行われた。
 これら三件の不正受験の事例につき、厚生労働省または自治体はどのように把握し、どのように対処したか、明らかにされたい。
2 「不正な実務経験証明書発行の報告」を求めた厚生労働省通知の結果
 厚生労働省は二〇一二年十一月三十日付け医薬食品局総務課長通知「登録販売者試験に係る実務経験に関する不正の防止について(依頼)」により、薬局等が過去に発行した登録販売者試験に係る実務経験の証明について、過去の勤務記録等により薬局等が自主的に確認し判明した不正について本年一月十八日までに報告するよう求めていた。その結果につき、明らかにされたい。
 また、店舗販売業等の許可を持つ製薬会社等に属して、直接、消費者に対する一般用医薬品の販売に従事した経験の無い営業担当の者で、実務経験の証明を受けて、登録販売者試験を受験し合格している者が多数存在していると聞いている。こうした場合、製薬会社等では勤務記録が正確に記録されていると考えるが、過去の勤務記録等により自主的に確認し判明した不正について、報告があったか、明らかにされたい。
3 不正受験の横行と今年度試験前の見直し
 不正な手段で登録販売者になった者による一般用医薬品の販売が横行すれば、消費者の安全を旨とする新制度そのものが維持できなくなると考える。このような現状に対する方策について、明らかにされたい。
 また、現行の施行通知の、一人の専門家の下に多数の一般従事者の存在を許すように解釈できる文言を見直すべきではないか。そして、この見直しを、本年度の登録販売者試験も間近なので、早期に通知やQ&A等で発出し受験者及び関係者に周知することが必要ではないか。
4 罰則の整備
(1) 不正受験が多発した背景は、①厚生労働省の現行の施行通知等が、一人の専門家の下に管理できないほど多数の一般従事者の存在を許す曖昧な文言にて綴られていること、②当該事業者が、薬事法の趣旨である専門家の養成をせず、消費者の安全より、無資格の一般従事者を雇用して低コストの販売で利益を上げようとしたこと、③不正受験者本人が、雇用不安の中、安直に資格を得ようとしたこと等と聞いている。そこで、①、②、③の三者それぞれの責任について、厚生労働省の見解を明らかにされたい。
(2) 虚偽の実務経験証明書で受験した登録販売者試験の合格者は資格取消しとなるが、一方で事業者は大量の虚偽の実務経験証明書を発行しても罰則規定がないため、都道府県薬務主管課等から「業務改善の指示を出すのが関の山」と指摘されている。しかし、薬害オンブズパースン会議からは、二〇一二年十月二十五日に、「内容虚偽の「実務経験(見込)証明書」を作成した薬局開設者等に対する制裁規定を設けること」を趣旨に含む要望書が厚生労働省に提出され、また日本置き薬協会からも同年十二月に同じ趣旨の要望書が同省に提出されたと聞いている。店舗販売業等において虚偽の実務経験証明書を発行した実務経験を監督する管理者に対する制裁規定を薬事法に明記することで、開設者や事業者の責任まで問うことができると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
(3) 虚偽の実務経験証明書で受験した登録販売者試験の合格者は資格取消しとなることを周知させ、それでも熟知した上で不正受験する者には、制裁として、一定期間、受験資格を停止するとの規定を設けるべきではないか。前述の二団体からは「五年以内の受験資格停止」が提案されていると聞いているが、これを検討しているか。

二 受験資格としての実務経験の認定について

1 実務経験時間の認定
 登録販売者試験において、店舗販売業では、一般従事者が単独で「消費者が、一般用医薬品を商品棚から選んでレジへ持ってきた物を精算する時間」や「同じ店内の一般用医薬品以外の業務を担当した時間」を一般用医薬品販売の実務経験時間として加算する等して実務経験時間の水増しが行われ、問題となった。
 一方、配置販売業では、一般従事者単独での「情報提供しない配置業務は可能」と称し「専門家が直接介在しない、一般従事者単独で一般用医薬品を配置販売した時間」を実務経験時間としている。
 しかし、二〇〇九年五月八日付け厚生労働省医薬食品局長通知「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(薬食発第〇五〇八〇〇三号)では、「情報提供以外の業務については一般従事者に行わせることができる」とあるものの、続けて「顧客から情報提供の求めがあった場合又は相談があった場合に、速やかに、医薬品を配置する場所において有資格者に対面で情報提供を行わせることができるよう、一般従事者と直ちに連絡を取ることができ、かつ、当該有資格者を医薬品を配置する場所の近隣に従事させる等の適切な体制を確保する」旨を求めている。つまり、より厳格に有資格者の関与を求めているのであって、消費者の安全を脅かす「専門家(有資格者)抜きの業務行為」が実務経験として受験資格に認定されることを許容していない。
 よって、前述の不正な実務経験認定・受験を防ぐため、実務経験時間の規定を以下のように厳格化すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
(1) 店舗販売業では、「一般従事者が登録販売者試験受験の為に実務経験を取得するには、専門家が医薬品陳列場所(店頭)に常駐し、その専門家の直接の管理下で、情報提供以外の業務が行われなければならない」、「専門家の間接の管理下での、一般従事者単独での、情報提供以外の業務時間は、実務経験時間に入れてはならない」とすべきではないか。
(2) 配置販売業でも同様に、「一般従事者が登録販売者試験受験の為に実務経験を取得するには、専門家が医薬品陳列場所(家庭のクスリ箱)に一般従事者を同伴し、その専門家の直接の管理下で、情報提供以外の業務が行われなければならない」、「専門家の間接の管理下での、一般従事者単独での、情報提供以外の配置業務時間は、実務経験時間に入れてはならない」とすべきではないか。
2 配置販売業における一般従事者の実務経験時間の認定
 配置販売業者の一部では、初回のみ薬剤師が情報提供をすれば、二回目以降に情報提供を行わなければ一般従事者単独でも、初回と同一の第一類医薬品を配置販売できると解釈していると聞いている。
 ところが配置販売業では、区域管理者としての専門家は都道府県に一人でもよいと解されているため、現状は配置員のうち、専門家は一般従事者より少なく、同伴は守られていない。
 薬事法第三十六条の五により、一般用医薬品の販売に従事する者は薬剤師、登録販売者と規定されている。したがって、一般従事者が単独で二回目以降に情報提供以外の業務と称して行う行為は、右の意味での販売従事(実務経験)時間とはみなせず、受験の為の実務経験に加算するのは誤った解釈であると考える。
 専門家が一般従事者を同伴し、その専門家の直接の管理下での情報提供以外の配置業務時間でない限り、登録販売者試験受験の為の実務経験時間とすべきでないと考えるがいかがか。
3 実務経験証明書作成に関するQ&Aの作成
 本年度の登録販売者試験は間近であり、不正受験防止のため、至急右質問、答弁等の内容を含め、実務経験(見込)証明書作成に関する通知、Q&A等を作成し啓発、周知徹底することが必要だと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 「一般用医薬品販売制度定着状況調査」等について

1 「情報提供・説明」の明確化のための省令整備
 厚生労働省が実施する「一般用医薬品販売制度定着状況調査」(以下「調査」という。)の結果において、購入等の際に説明を受けたとする消費者の割合は毎年、低率である。その大きな要因は、情報提供として薬事法上要求されているのが、文書を掲示しながらの説明書(薬のパッケージの中にある説明書)の事項の読み上げに過ぎず、薬事法第三十六条の六第四項には、「第一項の規定は、医薬品を購入し、又は譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があつた場合には、適用しない。」との免責条項があるゆえ、実務に就く専門家(薬剤師・登録販売者)も情報提供の内容については注意が疎かになるからと言われている。
 そういった状況では、情報提供にあたる専門家(薬剤師・登録販売者)も情報提供業務を軽視し、消費者側も情報提供されることを忌避する姿勢になる。結果、専門家も実務で必要もない知識習得のための教育受講を軽視することになり、事業者も従業員教育に経費をかけることを惜しむようになっている。しかしこのままでは薬事法が空文化する。
 そこで、この点については、個々の消費者に対面して説明する以上、薬の専門家でなければ提供できないような、個人個人の状態に合わせた説明を「情報提供」における必須条件として要求するように明確に省令で定めてはいかがか。そうしてこそ、「対面販売」という規定の価値が生じ、ネット販売等とは明らかに差別化をして安全性を図ることができる。厚生労働省にこの意思があるか、示されたい。
2 調査件数を増やす工夫
 二〇一一年度の調査の対象は、薬局・薬店が六千百五十三件である一方、配置販売は五十一件(前年五十二件)であり、既存配置販売業と新配置販売業の区別もなく調査しており、店舗販売と比較した配置販売の調査件数は格段に少ない。厚生労働省は、委託した民間の調査員宅へ、たまたま配置員の訪問がなければ調査できないことから、配置販売の調査件数が少ないと言っているようである。
 しかし、例えば委託した民間の調査員宅が、調査のためと言わずに顧客として配置薬箱の新規預りをしておいて、配置員の訪問の際に配置状況を調査する等の手法によれば、調査件数を増やす手立てもあると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
3 既存配置販売業と新配置販売業の区別
 調査では、対象となった配置販売業者について、既存配置販売業と新配置販売業の別は確認しておらず、曖昧になっているが、両者は販売する医薬品の種類、今後の経営方針及び研修受講の意思などに差があり、配置販売業の将来を展望する上でこれらを区別して調査することが重要である。
 調査を継続するのであれば、既存配置販売業と新配置販売業の別に調査すべきではないか。
4 薬事監視率
 厚生労働省による薬事監視率は、店舗販売業と比較して配置販売業が格段に低いと聞いている。直近の、店舗販売業と配置販売業の監視率を示されたい。

四 配置販売業の現状について

1 テレビ放映された配置販売における不特定多数への販売等
 製薬会社の系列で配置販売を代表するA配置販売会社が、若者を雇って新規販売開拓をしている実状が放映された。NHKのEテレ「あしたをつかめ~平成若者仕事図鑑」シリーズの「置き薬の販売員 企業に薬箱を売り込め」と題した回(二〇一二年二月九日午後七時二十五分から)であり、A社は、富山県にある(個人宅ではなく)専門学校に通学する多数の学生に使用(服用)させること(イ)を想定して営業させていた。また、「配置薬販売会社に就職する場合、特に資格は必要ではありません」というナレーションもあった(ロ)。
 (イ)については、同年二月二十二日の日本薬業連絡協議会において、同席の厚生労働省係官が、配置販売のルールに反する「不特定多数への販売」にあたることを確認し、録画を保管していると聞くが、この事案は、その後どのように処理されたか。
 また(ロ)は、視聴者に「配置薬販売は無資格でよい」との誤解を与えかねないと考えるが、厚生労働省としてどう対処するのか。
2 第四回検討会提出の「配置業界の自主ルール」の真偽
 本年三月二十二日の第四回検討会で、全国配置薬協会と配置販売業協会から「配置販売業は、第二類及び第三類医薬品のみを扱っている。法令上、薬剤師が存していれば、一類を扱えることになっているが、配置業界の申し合わせ(自主ルール)として、一類は取り扱わないこととしている。」と発表された(以下「両団体発表」という。)。
 ところが後日、全配協医薬品配置団体連合会から「配置四団体で協議された事実はまったくありませんし、当然、合意された事実もありません。」という文書が四月四日付けで業界紙、配置販売業各団体に出された(第四回一般用医薬品のインターネット販売・検討会提出の意見書の確認について)。また、日本置き薬協会は、第四回検討会提出意見書で、「平成十七年の設立当初から、明快、かつ合理的な規制の下で消費者の安全性を確保できる事を前提にした上で、消費者の利便を両立させる必要がある。その為の薬事法等の整備ができるのであれば、インターネット販売等を含む医薬品流通販売の全面自由化には賛成する」と言っている。また、前記三の1の薬事法の免責条項の影響で、調査の結果が「毎年芳しくない」と述べて、「平成二十三年度報告も『文書を用いた詳細な説明があった』は、五十五・二パーセントであった」と引用し、厚生労働省が制度を定着させるには、「薬事法第三十六条の六第四項は削除すべきと考える。」という。
 さらに、日本置き薬協会は、両団体発表の「配置販売業は、第二類及び第三類医薬品のみを扱っている」とは虚偽であり、「配置業界の申し合わせ(自主ルール)として、一類は取り扱わないこととしている」とは、申し合わせた事実がなく、誤解を招くとしている。
 一類医薬品取扱いの如何は、ネット販売問題とも連動して医薬品販売問題の当面の争点であり、ルールなき現状は消費者の困惑を招き安全な利用を脅かしている。厚生労働省は、検討会に提出されたという両団体発表の内容の真偽を確認すべきと考えるが、見解を明らかにされたい。
3 既存配置販売業における教育研修の欠如
 薬事法の一部を改正する法律の附則第十条において既存配置販売業の存続が認められたが、これに関連して、同法案に対する参議院厚生労働委員会の附帯決議では、「三、制度の実効性を確保するよう薬事監視の徹底を図ること。四、一般用医薬品の販売に従事する者については、都道府県等と連携し、その資質の向上に努めること。九、配置販売業については、既存の配置販売業者に対して、その配置員の資質の向上に向けた取組を行うよう指導するとともに、新制度への移行を促すこと。十、消費者を保護する観点から、薬事監視員による取締りの一層の強化を図ること。」などが議決されている。
 そこで日本薬業連絡協議会から二〇一〇年五月二十七日付けで厚生労働省に提出された「既存配置販売業の資質向上のための継続研修(Ⅰ.既存配置販売業の一定水準の研修 Ⅱ.業務期間が短い配置員を対象とした講習、研修 Ⅲ.一定水準の講習などの実施状況の評価・確認事項)」は、右の附帯決議を敷衍し、実施をめざしたものといえよう。
 ところが実態としては既存配置販売業の研修・講習は進まなかった。翌二〇一一年の厚生労働省調査結果を見ると、既存配置販売業者の新規従事者(新規配置従事者身分証明書取得前に行われる筈)の配置就業前教育もほとんど行われず、配置販売業者に課せられた従事者研修も、医薬品を販売するとは到底言えない実態となっている(「既存配置販売業者の配置員の資質の向上に係る講習等の実施状況に関する調査の結果」同年六月三十日発表)。
 これに業を煮やして、全国薬害被害者団体連絡協議会から二〇一二年八月十二日付けで、「一般用医薬品の販売方法に関しては、改正薬事法の趣旨を踏まえ、リスク分類に応じた専門家の介在を徹底して下さい。また、経過措置によって継続されている配置販売業については経過措置を見直して、確実に専門家が配置に関与できる体制整備をおこなってください」との要望が出された。
 さらに、薬害オンブズパースン会議からも同年十月二十五日付けで、「登録販売者試験の受験要件である実務経験に関する経過措置を定めた薬事法施行規則等の一部を改正する省令附則第二条二項から、既存配置販売業に関する記載を削除すること」との要望書が出されている。
 このように既存配置販売業の従事者の資質に関して懸念や不信感があるにもかかわらず、経過措置に安住した既存配置販売業者の多くが、研修にかかる時間やコストを嫌い、配置員に課せられた資質向上の研修を厳格に行っていないと聞く。
 改めて、既存配置販売業者の多くが、全国薬害被害者団体連絡協議会や薬害オンブズパースン会議の要望書の内容を重く受け止め、従事者の資質向上に格段の努力をしなければならないこと、また、厚生労働省は附帯決議の趣旨からも、研修の実施内容まで踏み込んで実施状況、実施の実態を把握し、厳格に実施するよう指導を徹底すべきことが必要ではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
4 配置販売の登録販売者の研修
 私が二〇〇一年の参議院行政監視委員会で、少子高齢化の進む日本において、教育された配置販売の従事者は、究極の一般用医薬品販売における対面販売の実践者、セルフ・メディケーションの推進者であり、配置販売の制度は重要であると述べ、配置員の受講制度について質した際、片山虎之助総務大臣(当時)は「同感」と述べている。また、前述のような附帯決議もなされている。
 ところが、厚生労働省令、通知等の文言が曖昧な上、罰則がないことから、自治体の薬務担当部局が附帯決議の四及び九について明確な指導ができず、配置業界は四団体以上に分裂、混乱状態にあると聞く。
(1) 現在の配置販売業の従事者数、うち有資格者数はどうなっているか、新配置販売業・既存配置販売業別に明らかにされたい。
(2) 既存配置販売に従事する登録販売者の配置員は、「薬事法の一部を改正する法律附則第十二条に規定する既存配置販売業者の配置員の資質の向上について」(二〇〇九年三月三十一日付け薬食総発第〇三三一〇〇一号厚生労働省医薬食品局総務課長通知)にて課せられた研修を受講している。しかし、既存配置販売に従事する登録販売者である配置員は、いつまでも既存配置販売に課せられた研修のみを受講するのではなく、同時に「登録販売者に対する研修の実施について」(二〇一二年三月二十六日付け薬食総発第〇三二六第一号厚生労働省医薬食品局総務課長通知。以下「二〇一二年三月二十六日通知」という。)に基づく登録販売者の研修も義務として受講すべきではないかと、厚生労働省に確認すると、既存配置販売に従事している登録販売者は、既存配置販売に課せられた研修だけでよいとの回答であったと聞く。しかし、セルフ・メディケーションは厚生労働省自らが推進しているところであり、これには専門家による消費者国民への正しい健康・薬学知識の普及が大切である。この点から、既存配置販売に従事している登録販売者にも、二〇一二年三月二十六日通知に準じた登録販売者研修受講の義務化を薬事法に明記すべきではないか。
(3) 新配置販売に従事している登録販売者について、二〇一二年三月二十六日通知に基づく研修受講者は少ないと聞いている。登録販売者研修受講の義務化を薬事法に明記すべきではないか。

五 消費税の軽減税率、所得控除の適用について

 厚生労働省は、セルフ・メディケーションを推進しており、消費者が一般用医薬品の正確で安全な利用に習熟することも含めて、自らの力で日常レベルの健康を保持することは好ましいとされている。しかし、一般用医薬品に対する消費税の増税は、消費者心理に影響を与え、セルフ・メディケーションにブレーキをかけかねない。イギリス、スウェーデン等においては、医薬品の税率は零パーセントである。
 よって、厚生労働省は、一般用医薬品について軽減税率の導入、並びに所得控除を主張すべきと考えるが、見解を明らかにされたい。

  右質問する。