質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第七二号

食用油の表示に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年四月三日

福島 みずほ   


       参議院議長 平田 健二 殿



   食用油の表示に関する質問主意書

 食料輸入の増大に対応し、JAS法において生鮮食品の原産地表示、また加工食品の原料原産地表示が順次取り組まれてきた。しかし、輸入農産物の中で最も大量に輸入している油糧作物を原料とする食用植物油脂については、原料原産地表示や遺伝子組み換え表示の検討は行われないまま放置されている。過去に、中国において、下水油を精製し、有害物質を含んだ食用油が出回った事件が起きたが、このような有害な油がいくつかの国を経由して日本に輸入される事態も起き得る。過去に、我が国でもカネミ油症事件など、摂取した油による健康被害が起きている。油は有害物質が溶け込みやすいため、特に、その安全確保のためにはトレーサビリティが必須である。食品原料の調達におけるグローバル化が一層拡大する中で、国民の健康と安全を守るためには、その安全性への高い信頼性を構築することが求められる。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 食用植物油の原料原産地表示について

1 社団法人日本植物油協会資料(平成二十年十一月四日)によると、なたね油(カノーラ油)は、輸入ナタネ種子による国内搾油割合九十八パーセント、輸入油二パーセントであった。大豆油は国内搾油九十四パーセント、コーン油は国内搾油百パーセント、一方オリーブ油やパーム油は輸入油が百パーセントとなっている。しかし、現在の日本の表示方法では、そのことは消費者には伝わらない。現在の表示欄は、
 品名:食用〇〇油
 原材料名:食用〇〇油
となっており、品名と原材料名が同じであるため、消費者が原材料の実態を知ることはできない。油糧作物を輸入して国内搾油する場合は、その原料油糧作物名を表示すべきであると考えるが、いかがか。表示が必要ないというのであれば、その理由を示されたい。
2 輸入した粗油を国内で精製利用する場合は、その旨の表示が必要と考えるが、いかがか。表示が必要ないというのであれば、その理由を示されたい。
3 前記2の場合については、例えば、
 原材料名:大豆(米国)
 原材料名:大豆粗油(米国)
というように、原料作物や粗油の輸入国を明記すべきと考えるが、いかがか。JAS法に基づく原料原産地表示の対象として優先して取り組む必要があると考えるが、いかがか。表示が必要ないというのであれば、その理由を示されたい。
4 原料原産地を明記する際には、輸入先が入れ替わることがあるため表記できないという主張があるが、その場合には、主な輸入先を列記し、それ以外は「その他の国」とすればよいと考える。製造番号で輸入国を問い合わせる、またはホームページで照会できるようにすればよいと考えるが、いかがか。

二 調合油について

1 JAS規格の品名には、調合油、精製調合油、調合サラダ油がある。これらの原料は二種類以上の食用植物油脂で、大豆油と菜種油を混ぜたものがほとんどであるが、現行では表示されていない。原料それぞれの明記とその混合割合を表示すべきと考えるが、いかがか。表示が必要ないというのであれば、その理由を示されたい。
2 菜種油において産地が異なるものを混合した場合は、それぞれの産地を表示すべきと考えるが、いかがか。表示が必要ないというのであれば、その理由を示されたい。
3 現在は、種類表示される油が全体の六十パーセント以上であればよいとされている。例えば「食用ごま油」と記載されている商品については、ごま油が六十パーセント入っていて、異なる油が四十パーセント入っていても「食用ごま油」と記載することができる。しかし、消費者の立場に立てば、このような表示は、当該油の実態を示していない。商品名に油の種類を表示する場合は、当該油が百パーセント含まれている場合に限定すべきと考えるが、いかがか。限定する必要がないという場合は、その理由も示されたい。
4 国産原料使用の表示は百パーセント国産の場合に限定すべきと考えるが、いかがか。限定する必要がないという場合は、その理由も示されたい。

三 遺伝子組み換え原料の表示について

1 現在、日本における遺伝子組み換え表示については、最終商品のDNA分析によって検知できる場合に表示するということになっている。油脂の場合、遺伝子組み換え由来のタンパク成分がごく微量であるため検出できないという理由から、表示対象から外されている。しかし、アレルギー患者は、この微量成分に反応する。現在、日本が大豆、カノーラ、コーン、綿実をほぼ全量輸入している生産国では、これら原材料の九割近くを遺伝子組み換え品種が占めている。よって、原料のほとんどが遺伝子組み換え品種であることからも、遺伝子組み換えに関する情報は消費者に開示されるべきと考えるが、いかがか。開示の必要はないという場合には、その理由を示されたい。
2 EUの遺伝子組み換え表示は、原料作物が遺伝子組み換え不分別の場合、また〇・九パーセント以上の遺伝子組み換え成分が検出されるものは、飼料も含め、食品全てに遺伝子組み換え食品表示が義務付けられている。日本では表示されない油や醤油、種子、レストランメニューも表示対象となっている。日本においても、遺伝子組み換えの表示にあたっては、EUのように、原料作物での検知を基準に切り替えるべきと考えるが、いかがか。必要がないというのであれば、その理由を示されたい。
3 遺伝子組み換え不分別の原料を利用した油は、その旨を表示すべきと考えるが、いかがか。表示の必要がないというのであれば、その理由を示されたい。

四 製造所固有記号について

 現在、製造所所在地、製造者の氏名表示については、あらかじめ消費者庁長官に届け出た製造所固有記号の記載による例外的表示方法が認められている。製造所情報は、事故が起きた際に、いち早く事故製品を回収するために必須の情報である。しかし、現行表示方法では、消費者が製造所をいち早く知ることは困難である。よって、現行の製造所固有記号ではなく、製造所所在地及び製造者氏名を表示すべきと考えるが、いかがか。表示する必要がないというなら、その理由を示されたい。

  右質問する。