質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第三一号

東海再処理工場、六ヶ所再処理工場の安全規制等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年二月十八日

川田 龍平   


       参議院議長 平田 健二 殿



   東海再処理工場、六ヶ所再処理工場の安全規制等に関する質問主意書

 日本原子力研究開発機構東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所(以下「東海再処理工場」という。)、日本原燃株式会社六ヶ所再処理施設(以下「六ヶ所再処理工場」という。)は、高レベル放射性物質を扱う世界的にも特殊な化学工場である。そこには高密度に放射性物質が濃縮された高レベル放射性廃液、そしてそのガラス固化体、使用済み核燃料、製造されたプルトニウム、ウラン等が大量に貯蔵されている。高レベル放射性物質が外部へ漏出する事故が起こると我が国の基盤を揺るがす大惨事になる可能性が大きい。
 再処理工場の事故による高レベル放射性廃液の環境漏洩に関して、一九七六年八月のドイツ政府の評価では、最悪の場合「国民の半数死亡も」という国の根底を揺るがす程とされている。液状では危険なため、ガラス固化し数十万年もの間地下深く人間環境から隔離しなければならない危険な物質が、不安定な液状のまま東海村と六ヶ所村の二か所の再処理工場に貯蔵されている事実はあまりに深刻な問題だ。現在本格操業へ向け、アクティブ試験中の六ヶ所再処理工場は今年十月の竣工を目指している。
 福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」という。)の教訓により、規制機関と推進機関が厳密に分離され、昨年九月原子力規制委員会(原子力規制庁)が発足した。国民の生命、財産及び環境を守るため原発の規制、防災等の新安全基準を策定中である。また、環境関連法の改正も並行し進められていると聞いている。一方、再処理工場は化学工場のため原子力発電所以上の危険性をはらんでおり、一層厳しい規制、防災等の指針作りが求められている。
 右の点を踏まえ、以下質問する。

一 再処理工場の新安全基準について

1 再処理工場に関わる「新安全基準指針」、「災害対策指針」について、骨子案の提示からパブコメ実施、最終案の提示、指針に基づく合否確認、稼働までの具体的な段取りとその日程を示されたい。
2 原子力規制委員会において再処理工場関連の諸審査を行う機関名とその委員を示されたい。二〇一一年三月十一日に発生した福島第一原発事故以前の国(経産省)の再処理工場に関わる安全審査会の委員の多くが日本原子力研究開発機構や日本原燃などの原子力推進機関関係者であった。このような利益相反する機関から委員を選任することは止め、国民が推薦する委員や中立公正な立場の委員を選任するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
3 原子力安全・保安院(当時)は福島第一原発事故に対する反省に基づき、二〇一二年三月二十八日に報告書「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について」を公表した。「Ⅶ今後の規制に反映すべき視点について」の2.(1)深層防護の考え方の徹底においてシビアアクシデント対策を効果的かつ包括的に整備するには、深層防護の考え方に基づく、厳格な「前段否定」の考え方を適用する必要があるとして、深層防護について第一段(想定に基づく安全設計)、第二段(想定を超える場合でも機能を維持)、第三段(機能喪失があってもシビアアクシデントの発生防止)、第四段(大量の放射性物質の放出防止)に区分している。
 原発と再処理工場の違いがあるが、東海再処理工場及び六ヶ所再処理工場の防災対策を深層防護の観点から見るとき現状は第三段止まりであり、第四段(高レベル放射性廃液容器の冷却が出来なくなった場合においても、温度上昇を止めるなど大量の放射性物質の放出を防止しなければならない)が欠落している。第四段を新安全基準指針として厳重に求めるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
4 再処理工場に関わるシビアアクシデントの要因に、他国からのミサイル攻撃や航空機の突入は想定しないのか。想定しないのならばその理由を示されたい。

二 事故・環境汚染防止について

1 二〇一一年十一月二十五日付の「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた核燃料サイクル施設の安全性に関する総合的評価の実施について(指示)」(原子力安全・保安院)に基づき、東海再処理工場及び六ヶ所再処理工場から二〇一二年四月に、国へ評価結果の報告(ストレステスト評価報告書)が提出されている。これについて、今まで国のどの審議会でどのように審査され、その結果が当該再処理工場へ報告されたのか。またその評価書は公開されているのか、示されたい。
2 国は、昨年十月二十四日に国内十六か所の原発について福島第一原発事故のような過酷事故が起きた場合について放射性物質の拡散予測を公表した。今まで東海再処理工場及び六ヶ所再処理工場とも重大事故は起こらない、外部へ放射性物質が放出されることはないとして、過酷事故を想定した周辺への拡散予測は行っていない。そこで、国は東海再処理工場及び六ヶ所再処理工場について、高レベル放射性廃液が重大事故による沸騰、爆発等により外部に放出した場合について、周辺への放射性物質の拡散予測を調査及び公表する予定はあるのか。ある場合は公表の時期、その事故の条件や仮定について示されたい。ない場合はその理由を示されたい。
3 六ヶ所再処理工場が本格操業の定常運転に入った場合、常時どれほどの高レベル放射性廃液が工場内に保管、貯蔵されることになるのか。
 大地震や事故などが起こった場合、被害を最小限に食い止めるためにも、大変危険な高レベル放射性廃液の量を最小限にとどめるべきと考えるが、見解を示されたい。
4 二〇一三年二月現在、東海再処理工場及び六ヶ所再処理工場に、どれほどの高レベル放射性廃液が貯蔵されているのか。また、廃液に含まれる各放射性核種の濃度を示されたい。貯蔵廃液に含まれるセシウム137の含有総量はいかほどか。それは福島第一原発事故で大気へと放出されたセシウム137の何倍に相当するのか示されたい。
5 再処理工場から海洋へ放出される排水中の放射性核種の濃度や核種毎総量規制はなく、事業者からの管理目標値を容認しているだけであり海洋環境の保全上問題である。このままの規制では本格操業になると海洋汚染が必至であり、特に三陸地方の海産物の汚染が憂慮される。水産資源や海洋環境を守るためにも、原子力発電所並の放出濃度規制を行うべきではないか。また周辺の環境基準を定めるべきではないか。以上二点について、政府の見解を明らかにされたい。
6 再処理工場には放射性物質に加えて、引火性物質などの化学物質がパイプラインを流れている。大地震や津波等による配管やプールなどからの漏洩、火災、建物の破壊やゆがみ、電源喪失などが同時多発的に短時間の間に工場内各地点で発生することが想定される。また、同時に中央制御室での制御不能、道路変形による通行不能、断線による通信不通なども考えられる。さらに、遠隔操作不能による高レベル放射線下での作業も出てくるものと想定されるが、これらの事象について厳重に想定し対策をとるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 その他

1 仮に二〇一一年三月十一日に東海再処理工場に福島第一原発に到達したものと同程度の津波(約十五メートル)が襲来していたならば、高レベル放射性廃液はどうなっていたのか。沸騰、水素爆発、硝酸塩爆発等はどうか、外部への放射性物質の放出はどうだったのか、工場や周辺環境への放射性物質の拡散はどうなっていたか、その根拠とともに示されたい。
2 第百八十回国会において成立した「原子力規制委員会設置法」の附則により、環境基本法第十三条の規定「放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置については、原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)その他の関係法律の定めるところによる。」が削除された。今後の関連各法律の改正のスケジュールについて、示されたい。
 また「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」(略称「公害犯罪処罰法」若しくは「公害罪法」)は当然放射性物質も対象になると思われるが、見解を示されたい。
3 二〇一〇年秋、我が国から原発二基をベトナムへ輸出する契約が取り交わされ、その際両国の合意として「使用済み核燃料及び廃棄物の管理」を我が国が請け負うと聞いたが、これは事実か。事実とするといつ、どこで、誰が契約したのか、またその契約書の在り処を示されたい。また、使用済み核燃料の管理・再処理は国内のどこで行う想定をしているのか示されたい。

  右質問する。