質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇号

脳死下臓器摘出に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年二月七日

川田 龍平   


       参議院議長 平田 健二 殿



   脳死下臓器摘出に関する質問主意書

 平成二十四年六月七日に私が提出した「脳死下臓器摘出に関する質問主意書」(第百八十回国会質問第一三六号)に対する答弁書(内閣参質一八〇第一三六号。平成二十四年六月十五日付け。以下「答弁書」という。)を踏まえ、以下質問する。

一 自殺ドナー数について

 答弁書では、「検証会議は、『脳死下での臓器提供事例に係る検証会議 一〇二例の検証のまとめ』の対象とした各事例の検証に当たって、臓器の提供者が自殺者であるかどうかについては調査しておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。」とされていた。
 しかし、法的脳死判定六十一例目(臓器提供施設:兵庫医科大学病院)、六十七例目(関東甲信越)、八十三例目(北海道)、九十五例目(関東甲信越)等は、「ドナーは縊頸」と文献で報告されており、三十例目(日本医科大学付属第二病院)は「頸部・手首切創」と報告されている。五例目と百二十九例目は一部の報道で自殺と報じられた。
 また、厚生労働科学研究のデータベース公開文書(文献番号201023021A)では、論文中のドナー因子の表で「一九九九年二月~二〇一一年一月までに行われた百例の脳死肝移植のうち十三例が自殺」と公開している。さらに二〇一二年七月十四日付け朝日新聞は、日本臓器移植ネットワーク提供のデータとして脳死になった原因につき「提供百五十九人のうち自殺や溺死などで二十六人」と報じている。
 これらのことは検証会議にも報告されているはずである。そもそも脳死判定を開始する前提条件は、原疾患が明確であることである。また自殺を含む外因死では、犯罪捜査に関わる可能性がある場合、そして臓器提供意思表示の任意性や同意する親族の責任に関わる場合などは、臓器ドナーとはできないと見込まれるため、ドナー候補者の死因は正確に把握するはずである。検証会議報告書は、検視の有無も記載しており、これは外因死またはその疑いありということを、検証会議が把握していることを示している。
 従って、答弁書で「臓器の提供者が自殺者であるかどうかについては調査しておらず」とされているのは、虚偽の回答か、あるいは検証会議が脳死判定・臓器提供が適正手続で行われたのか否かをそもそも検証していない、このいずれかを示すことになる。
 再度質問する。百二例のうち、自殺ドナーは何例か。

二 公表の仕方について

 答弁書では、「臓器の提供者や遺族のプライバシーの保護や心情への配慮から、遺族の同意の有無にかかわらず一律に公表することは、適切ではないと考えている。」とされている。
 しかし、個別の臓器提供例において、日本臓器移植ネットワークの現在の公表の仕方では、法的脳死判定八十八例目のように事実と異なる記者発表となっていて、国民の不信を招きかねないので、「原疾患を交通外傷とした公表のあり方は考える」旨の国会答弁(二〇一一年六月一日衆議院厚生労働委員会)、あるいは「自殺の公表のあり方についてはどんな工夫があるか検討したい」旨の国会答弁(二〇一二年八月一日同委員会)もあった。
 個別の症例については、発生の都度、公表できなくとも、統計として、自殺を含む「ドナーが生じた理由」、「原疾患」、「死因」の三項目を公表することを検討するべきである。米国UNOS(全米臓器配分機関)は、自殺、殺人などの「ドナーが生じた理由」をドナー情報の統計として毎月更新している。統計ならば、プライバシー保護や心情配慮に抵触せずに公表できるはずである。
 個別の臓器提供者や遺族の特定につながらない形式での統計を公表すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。