質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第八号

東京電力福島第一原子力発電所事故警戒区域内の牛をはじめとする家畜の活用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年一月三十日

中西 健治   


       参議院議長 平田 健二 殿



   東京電力福島第一原子力発電所事故警戒区域内の牛をはじめとする家畜の活用に関する質問主意書

 東京電力福島第一原子力発電所の事故により設定された警戒区域内で、政府の殺処分に同意しない農家が飼育している牛が今なお約七百頭生存している。これらの被ばくした牛の有効活用法について、先に「東京電力福島第一原子力発電所事故警戒区域内の牛をはじめとする家畜の活用に関する質問主意書」(第百八十一回国会質問第三九号)を提出し、答弁書(内閣参質一八一第三九号)を受領したが、今般、政権が変わったことから、再度、先の質問に追加して、以下質問する。

一 殺処分する牛のデータに基づく研究ではなく、牛を生かし続けることにより可能となる、被ばくした牛への放射線の影響等の研究を行う必要性について、先に政府の見解を質したところ、「御指摘のように対象家畜の飼養を継続しながら当該対象家畜に対する放射線の影響を研究した場合であっても、当該対象家畜が当該研究の対象とされる以前に被ばくした放射線量の程度が不明であるため、有効なデータを得ることは困難であると考えている。」との答弁がなされたが、改めて政府の見解を明らかにされたい。

二 今後警戒区域内の除染を行っていく過程において、現在放置され手入れのなされていない田畑の草をまずは刈り取る必要がある。そうした工程において被ばくした牛の「食べる能力」を活用して草を食べさせることについて、先に政府の見解を質したところ、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質による警戒区域内の草の汚染の状況が明らかとなっていない中で、対象家畜に警戒区域内の草を摂取させることは、その結果、当該対象家畜の排泄物に放射性物質が含まれ、そのために放射性物質を拡散させるおそれがあることなどから、困難であると考えている。したがって、このように対象家畜に警戒区域内の草を摂取させる予定はないことなどから、御指摘のような方法により除染を行うことは考えていない。」との答弁がなされたが、改めて政府の見解を明らかにされたい。

三 国として、原発事故の被害者である農家が殺処分に同意できず、生かし続けている牛を、何らかの形で活用することを検討すべきであると考えるが、改めて政府の見解を示されたい。

四 昭和六十二年十月九日総理府告示の「産業動物の飼養及び保管に関する基準」で「管理者は、地震、火災等の非常災害が発生したときは、速やかに産業動物を保護し、及び産業動物による事故の防止に努めること」と定められているが、国による立入禁止措置により管理者が責務を果たせない場合、立入禁止措置を行った政府が責務を負う必要があると考える。この点につき、政府の見解を明らかにされたい。

五 殺処分に同意せず、現在も飼育管理を行っている農家は、隔離飼育を行うことにより、結果として放れ牛の数を減らし、産業動物による事故の防止に貢献しているが、本来国が行うべきことを代わりに行っていると考えれば、対象家畜に係る営業損害に対する東京電力株式会社による賠償金の支払いとは別に、政府としてそれに対する対価を支払うべきではないのか。

六 平成二十三年十一月九日の衆議院予算委員会において、石破茂議員が被ばく牛について政府に対して、「一頭でも多く助けてやってくださいよ。一日も早くやってくださいよ。そして、飼い主をこれ以上泣かせないでくださいよ。それは国の責任として絶対にやるべき」と自民党を代表して対応を求めているが、それに対する政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。