質問主意書

第181回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三一号

内閣参質一八一第三一号
  平成二十四年十一月十六日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員佐藤正久君提出刑事裁判手続に係る日米地位協定及び日米合同委員会等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員佐藤正久君提出刑事裁判手続に係る日米地位協定及び日米合同委員会等に関する質問に対する答弁書

一について

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)については、今後とも、日米同盟を更に深化させるよう努めていく中で、普天間飛行場の移設問題や在沖縄海兵隊の移転など他の喫緊の課題の進展を踏まえつつ、その対応について検討する考えである。政府としては、まずは、米軍関係者による事件・事故の防止、米軍機による騒音の軽減、在日米軍施設及び区域における環境問題等の具体的な問題について、地元の方々の御要望を踏まえつつ、最大限の努力を行っていく考えである。

二について

 日米地位協定第十七条5(c)は、「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。」と規定している。日米地位協定第二十五条1に基づき設置された合同委員会(以下「日米合同委員会」という。)における平成七年十月二十五日の刑事裁判手続に関する合意(以下「平成七年合意」という。)においては、起訴前の拘禁の移転について、「日本国は、同国が一にいう特定の場合に重大な関心を有するときは、拘禁の移転についての要請を合同委員会において提起する。」とされている。ここにいう「特定の場合」については、特定の類型の犯罪が排除されていないことを、平成十六年四月の日米合同委員会において日米間で確認しているところである。その上で、平成七年合意においては、米国は、「殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合」以外の「日本国が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合」の起訴前の拘禁の移転について、我が国が日米合同委員会において提示することがある「特別の見解を十分に考慮する」とされている。
 日米地位協定第十七条5(a)は、「合衆国の軍当局は、日本国の領域内における合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕」及び「裁判権を行使すべき当局へのそれらの者の引渡しについて」援助しなければならないと規定しており、お尋ねの場合には、これらに従った対応がとられると考えている。
 また、平成七年合意に基づき実際に被疑者の起訴前の拘禁の移転が行われた事例があり、こうした事例は、米国と他国との間にはないものと承知しており、御指摘のような批判は当たらないと考えている。

三及び六について

 政府としては、出張中か否かを問わず、米軍関係者による事件・事故について、実効性を伴った再発防止策が米軍によって採られることが重要であると考えており、米側に対し、具体的な申入れを行っているところであるが、申入れの詳細な内容を明らかにすることについては、米国政府との関係もあり差し控えたい。また、垂直離着陸機MV二二オスプレイの運用については、政府として、本年九月十九日の「日本国における新たな航空機(MV―22)に関する日米合同委員会合意」を遵守し、安全性を最大限確保するよう米側に申し入れており、米側においても、今後も同合意を遵守し、安全性を最大限確保する旨述べているところであり、運用に係る個別具体的な事例についても、必要に応じて米側に申し入れていくこととしている。

四について

 日米地位協定第一条(a)は、「合衆国軍隊の構成員」を、日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいうと規定している。また、日米地位協定第十七条3(a)(ⅱ)に規定する「公務」については、昭和二十八年十月の刑事裁判管轄権に関する事項についての日米合同委員会合意により、法令、規則、上官の命令又は軍慣習によって、要求され又は権限付けられる全ての任務又は役務を指すとされている。さらに、昭和三十一年三月に合意され、平成二十三年十二月に改正された「公務」の範囲に関する日米合同委員会合意において、原則として、合衆国軍隊の構成員又は軍属が、その認められた宿舎又は住居から、直接、勤務の場所に至り、また、勤務の場所から、直接、その認められた宿舎又は住居に至る往復の行為を含むものとされている。お尋ねのような米軍人の行為が「公務」に当たるか否かについては、これらに照らして判断されることになる。

五について

 お尋ねの「夜間外出禁止令」については、我が国に駐留し、又は、出張等で一時的に滞在している全ての米軍人を対象とし、米軍施設外への外出が制限される午後十一時から午前五時までの間、米軍施設内又は米軍施設外であれば個人の住宅内若しくは出張等で一時的に滞在している場合には滞在先の部屋を含む宿舎内に所在することを義務付けられており、米軍人の家族については、適用されていないと承知している。「夜間外出禁止令」に違反した者は、米国の統一軍法によって刑罰を受けることになるとされていると承知している。