質問主意書

第181回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二六号

内閣参質一八一第二六号
  平成二十四年十一月十六日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員福島みずほ君提出死刑制度廃止についての議論に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出死刑制度廃止についての議論に関する質問に対する答弁書

一から三まで、五、八及び九について

 死刑制度の存廃については、諸外国における動向等も参考にする必要があるが、基本的には、各国において、当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討し、独自に決定すべきものであると考えている。
 死刑制度の存廃に関する議論については、国民の皆様に自らその必要性を感じ主体的に議論をしていただくことが適切であると考えているところ、平成二十三年十二月までに「死刑の在り方についての勉強会」において行った議論により、死刑の在り方についての中心的な問題である死刑制度の存廃について、廃止論及び存置論双方の主張がおおむね明らかになり、早期にこの議論の内容を取りまとめた報告書を公表することが国民の皆様による議論のために望ましいと判断したことから、当該勉強会を終了し、当該報告書を公表したものである。当該報告書の公表により、国民の皆様に議論の材料を提供することができたものと考えている。
 一方、法治国家としては、死刑制度が存置されている以上は、それに基づいて対応していくべきものと考えている。

四について

 御指摘の決議案に対する投票態度についてあらかじめ答弁することは差し控えたい。

六について

 検察官による証拠開示については、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)において、検察官が取調べを請求した証拠について被告人又は弁護人に開示することはもとより、その証明力を判断するために重要であると認められる一定の類型の証拠や、被告人又は弁護人が明らかにした主張に関連すると認められる証拠についても、被告人又は弁護人から開示の請求があった場合には、開示の必要性の程度と開示によって生ずるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、開示をしなければならないこととされており、検察当局においては、これに従って適切に対応しているものと承知している。一方、御指摘の「証拠の全面開示」については、関係者の名誉・プライバシーの侵害、罪証隠滅、証人威迫等の弊害が生じる場合があることや、国民一般から捜査への協力を得ることが困難になるおそれがあるなどの問題があり、慎重に検討する必要があると考えている。
 また、死刑の執行に際して、法務大臣は、裁判所の判断を尊重しつつ、法務省の関係部局に関係記録の内容を十分に精査させた上で、再審の事由の有無等につき慎重に検討しており、お尋ねの「全証拠を見直す機会」を死刑確定者等に与えることは必要ないものと考えている。

七について

 滝法務大臣は、平成十六年十二月二十四日に大阪拘置所の刑場を、平成二十三年九月二十九日に東京拘置所の刑場を、それぞれ視察しており、刑場は死刑という最も重い刑を執行する厳粛な場であると認識しているところである。

十及び十一について

 矯正緊急報告規程(平成八年法務省矯総訓第五百十六号大臣訓令)により、刑事施設の長は、死刑を執行した場合には、その状況を死刑執行速報により法務省矯正局長及び当該刑事施設を所管する矯正管区の長に対して報告することとされている。同局長に対する報告に係る死刑執行速報の保存期間については、公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)第五条、公文書等の管理に関する法律施行令(平成二十二年政令第二百五十号)第八条及び法務省行政文書管理規則(平成二十三年法務省秘文訓第三百八号大臣訓令)第十六条第一項に基づき法務省矯正局成人矯正課長が定めた標準文書保存期間基準により三年とされ、矯正管区の長に対する報告に係る死刑執行速報については、同様に各矯正管区において定められた標準文書保存期間基準により定められているが、これについては網羅的には把握していない。
 また、刑事訴訟法第四百七十八条により、死刑の執行に立ち会った検察事務官は、執行始末書を作成することとされ、執行事務規程(平成六年法務省刑総訓第二百二十八号大臣訓令)第十四条により、死刑の執行指揮検察官は、死刑の執行をしたときは、その旨を執行始末書の謄本を添付して法務大臣に対して報告することとされている。当該報告に係る報告書(以下「死刑執行報告書」という。)の保存期間については、公文書等の管理に関する法律第五条、公文書等の管理に関する法律施行令第八条及び法務省行政文書管理規則第十六条第一項に基づき法務省刑事局総務課長が定めた標準文書保存期間基準により、十年とされている。執行始末書の原本の保存期間については、同法第五条及び同令第八条に基づき各検察庁において定められた行政文書管理規則及び標準文書保存期間基準により定められているが、これについては網羅的には把握していない。
 先の答弁書(平成二十三年十一月二十二日内閣参質一七九第二二号)四についてにおいて、「お尋ねのような事例は承知していない」とお答えしたのは、その時点で保存されていた平成二十年以降の法務省矯正局長に対する報告に係る死刑執行速報及び平成十四年以降の死刑執行報告書にそのような事例が発生したと認めることができるものがなく、また、調査した限りにおいて、そのような事例を承知している職員が見当たらなかったからである。

十二について

 市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)の第一選択議定書等人権に関する様々な条約に設けられている個人通報制度については、条約実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えている。個人通報制度の受入れに当たっては、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題の有無や個人通報制度を受け入れる場合の実施体制等の検討課題があると認識している。個人通報制度の受入れの是非については、日本弁護士連合会、有識者等を含む各方面から寄せられている意見も踏まえつつ、引き続き政府として真剣に検討を進めているところである。

十三について

 御指摘の「歩行困難」の意味するところが必ずしも明らかではないが、死刑の執行に当たり、被執行者の歩行機能の低下により、通常と異なる対応を要した事例は承知していない。

十四及び十五について

 個々具体的な死刑執行の判断に関わるお尋ねについては、答弁を差し控えたい。